26 / 161
悪魔がペットを好きすぎる件
1
しおりを挟む
次の日目が覚めると、ギデオンさんはベッドにいなかった。朝から贅肉を揉まれたりしたらライフがゴリゴリ削られてしまう。ありがたい。
今日から王妃陛下とお勉強が始まるため、午前中は掃除をすることにした。離宮は2階建てで、タージ・マハルのような可愛らしい外観。あれはお墓だけど…ここも私のお墓になるってことなのかな…。そうならないように勉強頑張らないと。何で利益を上げるべきか見当もつかないからこそ、どんな小さなことも見逃さないように貪欲に取り組もう。
心の中で拳を突き上げ決意を新たにしていると、後ろからギュッと抱き付かれた。
「おはようございます、フィー。よく眠れました」
「良かったですね、ギデオンさん。お役に立てて何よりです」
モフモフのペットを可愛がる飼い主の気持ちなのだろう。私は残念ながらモフモフではなく、ギデオンさんの言うところの駄豚だが。変態ドS悪魔には可愛いペットに見えるのかもしれない。この贅肉だらけのカラダを抱き締めて「気持ちいい」発言をする変態だからね。
「フィーを抱っこして眠れたのもそうですが、昨夜フィーが約束してくれたのが嬉しくて」
私の贅肉で盛り上がった腹に手を回し、髪の毛にチュッ、チュッと口づけるギデオンさんがかなりウザイ。この人ほんとに距離感ゼロだな。ペットと全力で触れあいたい人種なのね、きっと。
「昨夜の約束ってなんですか?何かしましたっけ」
とたんに、グルッとすごい力で向きを変えられた。勢いが付きすぎて一回転半した後、ギデオンさんの正面でピタッと止められる。
「…フィー?」
「ひいっ」
地の底から響く悪魔の声が恐ろしく、意識せずに悲鳴がもれる。
私を正面から見据える悪魔の瞳は、怒りで爛々と光っていた。
「…まさか。また、忘れてしまったのですか?いくらバカでも、そんなことありませんよね?」
「ね?」という言葉と共にギデオンさんの指がギリギリと両肩に食い込む。痛い…!
「ギデオンさん、いつ!?昨日のいつ、何を約束したのかな、私!?覚えてないんだけど!」
「…覚えてない?」
小さく呟いたギデオンさんの指から力が抜け、ようやく解放される。
そのまま私をじっと見たギデオンさんはニコリとした。
「覚えてなくてもいいです。わたくしが覚えていますし、フィーは、いいと言ったんですから」
ニコニコする悪魔が怖い。私、何を約束しちゃったの?
「ギデオンさん、あの、約束した内容を、」
「ダメです。覚えていないフィーが悪いんですから。教えてあげません。でも、約束は守ってもらいますよ。フィーはいいと言いました」
いいと言いました、って言われても、
「内容わからなくちゃ、守りようがないじゃないですか!教えてください、お願いします!」
「ダメです」
「だって、そしたらギデオンさんの都合のいいように中身を変えられても、私には反抗しようがないじゃないですか…っ!」
そのとたん、悪魔の瞳が冷たく細められた。
「バカですぐになんでも忘れてしまうフィーのために、もう一度言ってあげますね。わたくしは、フィーに嘘をついたりごまかしたりしません。もし、そうなってしまったとしたら、それはわたくしの意志ではなく、外部からの圧力による不可抗力です。昨夜の約束の内容も、わたくしが勝手に変更したりしません。…フィーに、お願いして、せっかくいいと返事をもらったのに。中身を変えたりしませんよ」
最後の方はまたニコニコしながら呟く悪魔…ああ!時間を巻き戻して、誰かぁ!
現実に、悪魔と契約してしまうとは…愚かな自分にため息しか出なかった。
朝食の後、踏み台と共に庭に出て生え放題の雑草を抜く。範囲を決めてやらないとやりすぎて筋肉痛になり明日はできない、なんてことに成りかねない。少しずつ、コツコツやる。それが前回のダイエット&掃除に取り組んだ半年で身に付いたことだ。
気持ち、キレイになった庭に満足していると、アネットさんが「昼食です」と呼びに来てくれた。
ソルマーレ国は小麦が主食の国。米は存在していない。
「…おにぎりが食べたい」
思わずボソリと呟くと、対面に座るギデオンさんが、
「フィー、おにぎりとはジャポン皇国の食事のことですか?白い粒粒の…米、と言ったかと思いますが」
「え!?ギデオンさん、なんで知ってるの!?ジャポン皇国に米があるの!?」
「ええ、あ、の…王妃陛下に、献上されたジャポン皇国の書物の中に、確か載っていました」
…なんで王妃陛下の書物をギデオンさんが?ギデオンさんて、王妃陛下の近衛だったの?いや、違うよね。ソフィアと同じ年で、ミーハーに騒がれ過ぎて3日で騎士をやめるとこだった、って陛下が言ってたんだから。ギデオンさん、盗み見が趣味なのかな…。悪魔だから、何か特別な手段を持っているのだろうか。
何はともあれ、王妃陛下にお会いしたらさっそく書物について質問することにした。楽しみ…!私の想像通りのおにぎりでありますように…!
今日から王妃陛下とお勉強が始まるため、午前中は掃除をすることにした。離宮は2階建てで、タージ・マハルのような可愛らしい外観。あれはお墓だけど…ここも私のお墓になるってことなのかな…。そうならないように勉強頑張らないと。何で利益を上げるべきか見当もつかないからこそ、どんな小さなことも見逃さないように貪欲に取り組もう。
心の中で拳を突き上げ決意を新たにしていると、後ろからギュッと抱き付かれた。
「おはようございます、フィー。よく眠れました」
「良かったですね、ギデオンさん。お役に立てて何よりです」
モフモフのペットを可愛がる飼い主の気持ちなのだろう。私は残念ながらモフモフではなく、ギデオンさんの言うところの駄豚だが。変態ドS悪魔には可愛いペットに見えるのかもしれない。この贅肉だらけのカラダを抱き締めて「気持ちいい」発言をする変態だからね。
「フィーを抱っこして眠れたのもそうですが、昨夜フィーが約束してくれたのが嬉しくて」
私の贅肉で盛り上がった腹に手を回し、髪の毛にチュッ、チュッと口づけるギデオンさんがかなりウザイ。この人ほんとに距離感ゼロだな。ペットと全力で触れあいたい人種なのね、きっと。
「昨夜の約束ってなんですか?何かしましたっけ」
とたんに、グルッとすごい力で向きを変えられた。勢いが付きすぎて一回転半した後、ギデオンさんの正面でピタッと止められる。
「…フィー?」
「ひいっ」
地の底から響く悪魔の声が恐ろしく、意識せずに悲鳴がもれる。
私を正面から見据える悪魔の瞳は、怒りで爛々と光っていた。
「…まさか。また、忘れてしまったのですか?いくらバカでも、そんなことありませんよね?」
「ね?」という言葉と共にギデオンさんの指がギリギリと両肩に食い込む。痛い…!
「ギデオンさん、いつ!?昨日のいつ、何を約束したのかな、私!?覚えてないんだけど!」
「…覚えてない?」
小さく呟いたギデオンさんの指から力が抜け、ようやく解放される。
そのまま私をじっと見たギデオンさんはニコリとした。
「覚えてなくてもいいです。わたくしが覚えていますし、フィーは、いいと言ったんですから」
ニコニコする悪魔が怖い。私、何を約束しちゃったの?
「ギデオンさん、あの、約束した内容を、」
「ダメです。覚えていないフィーが悪いんですから。教えてあげません。でも、約束は守ってもらいますよ。フィーはいいと言いました」
いいと言いました、って言われても、
「内容わからなくちゃ、守りようがないじゃないですか!教えてください、お願いします!」
「ダメです」
「だって、そしたらギデオンさんの都合のいいように中身を変えられても、私には反抗しようがないじゃないですか…っ!」
そのとたん、悪魔の瞳が冷たく細められた。
「バカですぐになんでも忘れてしまうフィーのために、もう一度言ってあげますね。わたくしは、フィーに嘘をついたりごまかしたりしません。もし、そうなってしまったとしたら、それはわたくしの意志ではなく、外部からの圧力による不可抗力です。昨夜の約束の内容も、わたくしが勝手に変更したりしません。…フィーに、お願いして、せっかくいいと返事をもらったのに。中身を変えたりしませんよ」
最後の方はまたニコニコしながら呟く悪魔…ああ!時間を巻き戻して、誰かぁ!
現実に、悪魔と契約してしまうとは…愚かな自分にため息しか出なかった。
朝食の後、踏み台と共に庭に出て生え放題の雑草を抜く。範囲を決めてやらないとやりすぎて筋肉痛になり明日はできない、なんてことに成りかねない。少しずつ、コツコツやる。それが前回のダイエット&掃除に取り組んだ半年で身に付いたことだ。
気持ち、キレイになった庭に満足していると、アネットさんが「昼食です」と呼びに来てくれた。
ソルマーレ国は小麦が主食の国。米は存在していない。
「…おにぎりが食べたい」
思わずボソリと呟くと、対面に座るギデオンさんが、
「フィー、おにぎりとはジャポン皇国の食事のことですか?白い粒粒の…米、と言ったかと思いますが」
「え!?ギデオンさん、なんで知ってるの!?ジャポン皇国に米があるの!?」
「ええ、あ、の…王妃陛下に、献上されたジャポン皇国の書物の中に、確か載っていました」
…なんで王妃陛下の書物をギデオンさんが?ギデオンさんて、王妃陛下の近衛だったの?いや、違うよね。ソフィアと同じ年で、ミーハーに騒がれ過ぎて3日で騎士をやめるとこだった、って陛下が言ってたんだから。ギデオンさん、盗み見が趣味なのかな…。悪魔だから、何か特別な手段を持っているのだろうか。
何はともあれ、王妃陛下にお会いしたらさっそく書物について質問することにした。楽しみ…!私の想像通りのおにぎりでありますように…!
23
お気に入りに追加
5,689
あなたにおすすめの小説

【完結】白い結婚なのでさっさとこの家から出ていきます~私の人生本番は離婚から。しっかり稼ぎたいと思います~
Na20
恋愛
ヴァイオレットは十歳の時に両親を事故で亡くしたショックで前世を思い出した。次期マクスター伯爵であったヴァイオレットだが、まだ十歳ということで父の弟である叔父がヴァイオレットが十八歳になるまでの代理として爵位を継ぐことになる。しかし叔父はヴァイオレットが十七歳の時に縁談を取り付け家から追い出してしまう。その縁談の相手は平民の恋人がいる侯爵家の嫡男だった。
「俺はお前を愛することはない!」
初夜にそう宣言した旦那様にヴァイオレットは思った。
(この家も長くはもたないわね)
貴族同士の結婚は簡単には離婚することができない。だけど離婚できる方法はもちろんある。それが三年の白い結婚だ。
ヴァイオレットは結婚初日に白い結婚でさっさと離婚し、この家から出ていくと決めたのだった。
6話と7話の間が抜けてしまいました…
7*として投稿しましたのでよろしければご覧ください!
不遇な王妃は国王の愛を望まない
ゆきむらさり
恋愛
〔あらすじ〕📝ある時、クラウン王国の国王カルロスの元に、自ら命を絶った王妃アリーヤの訃報が届く。王妃アリーヤを冷遇しておきながら嘆く国王カルロスに皆は不思議がる。なにせ国王カルロスは幼馴染の側妃ベリンダを寵愛し、政略結婚の為に他国アメジスト王国から輿入れした不遇の王女アリーヤには見向きもしない。はたから見れば哀れな王妃アリーヤだが、実は他に愛する人がいる王妃アリーヤにもその方が都合が良いとも。彼女が真に望むのは愛する人と共に居られる些細な幸せ。ある時、自国に囚われの身である愛する人の訃報を受け取る王妃アリーヤは絶望に駆られるも……。主人公の舞台は途中から変わります。
※設定などは独自の世界観で、あくまでもご都合主義。断罪あり。ハピエン🩷
※稚拙ながらも投稿初日からHOTランキング(2024.11.21)に入れて頂き、ありがとうございます🙂 今回初めて最高ランキング5位(11/23)✨ まさに感無量です🥲
記憶を失くした彼女の手紙 消えてしまった完璧な令嬢と、王子の遅すぎた後悔の話
甘糖むい
恋愛
婚約者であるシェルニア公爵令嬢が記憶喪失となった。
王子はひっそりと喜んだ。これで愛するクロエ男爵令嬢と堂々と結婚できると。
その時、王子の元に一通の手紙が届いた。
そこに書かれていたのは3つの願いと1つの真実。
王子は絶望感に苛まれ後悔をする。

妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢
岡暁舟
恋愛
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢マリアは、それでも婚約者を憎むことはなかった。なぜか?
「すまない、マリア。ソフィアを正式な妻として迎え入れることにしたんだ」
「どうぞどうぞ。私は何も気にしませんから……」
マリアは妹のソフィアを祝福した。だが当然、不気味な未来の陰が少しずつ歩み寄っていた。
王太子妃は離婚したい
凛江
恋愛
アルゴン国の第二王女フレイアは、婚約者であり、幼い頃より想いを寄せていた隣国テルルの王太子セレンに嫁ぐ。
だが、期待を胸に臨んだ婚姻の日、待っていたのは夫セレンの冷たい瞳だった。
※この作品は、読んでいただいた皆さまのおかげで書籍化することができました。
綺麗なイラストまでつけていただき感無量です。
これまで応援いただき、本当にありがとうございました。
レジーナのサイトで番外編が読めますので、そちらものぞいていただけると嬉しいです。
https://www.regina-books.com/extra/login

結婚30年、契約満了したので離婚しませんか?
おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説 11位になりました!
皆様ありがとうございます。
「私、旦那様とお付き合いも甘いやり取りもしたことが無いから…ごめんなさい、ちょっと他人事なのかも。もちろん、貴方達の事は心から愛しているし、命より大事よ。」
眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。
「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」
ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。
ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視
上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。

もう一度あなたと?
キムラましゅろう
恋愛
アデリオール王国魔法省で魔法書士として
働くわたしに、ある日王命が下った。
かつて魅了に囚われ、婚約破棄を言い渡してきた相手、
ワルター=ブライスと再び婚約を結ぶようにと。
「え?もう一度あなたと?」
国王は王太子に巻き込まれる形で魅了に掛けられた者達への
救済措置のつもりだろうけど、はっきり言って迷惑だ。
だって魅了に掛けられなくても、
あの人はわたしになんて興味はなかったもの。
しかもわたしは聞いてしまった。
とりあえずは王命に従って、頃合いを見て再び婚約解消をすればいいと、彼が仲間と話している所を……。
OK、そう言う事ならこちらにも考えがある。
どうせ再びフラれるとわかっているなら、この状況、利用させてもらいましょう。
完全ご都合主義、ノーリアリティ展開で進行します。
生暖かい目で見ていただけると幸いです。
小説家になろうさんの方でも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる