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王宮に呼ばれました
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「ま、こんなこと書いてはいるが、要は牽制だ。おまえに手を出させないための、な。処刑とまで書かれてりゃ、いくらなんでも自重するだろうよ。それ以上に、おまえに手を出そうとするかどうかは疑問だがな。今までのことを考えたらどーでもいい存在なんだから。
おまえが望むのはこういう契約書ではなかったのか?万が一にも相手の気が変わって、存在を抹消されたりしないための確約が欲しいんだろ?あ?違うのか?」
さっきの優しい顔はどこへやら。この人の言動、ほんとに国王陛下なの?ただのチンピラにしか見えないんだけど。
「…違わないです」
「じゃ、文句ねぇな」
「あの、陛下」
「なんだよ。やっぱり文句あんのか?」
「いえ、文句じゃなくて。この内容、あまりにもソフィアに有利というか、ずいぶん贔屓が過ぎるようにしか思えないんですが」
「んなことねぇよ。なあ?」
…なぜ、私の後ろにいるドS近衛に同意を求めるのか?
「ええ。その内容に、なにも問題はないと考えます」
「…なんでギデオンさん、誓約書の内容知ってるの?」
振り向こうとした私の頭は、ギッと後ろから固定された。
「痛い!ギデオンさん、痛い!」
「わたくしを、盗み見した盗人のように仰るからです。反省してください」
なんで知ってるのか返答してないじゃない!盗み見したって言われたって文句言えないじゃない!そしてまた触ってる!
ギリギリと締め上げてくる手に早々にギブアップするしかなかった。この人、私の近衛なんだよね、一応?なんで痛め付けようとするんだろ?やっぱりお飾り王太子妃の近衛になんかされちゃったことを根にもってるんじゃないの!?いくら国王に言われたからって、嫌だったら断ればいいじゃん、自分で!
「…王太子と同じじゃん」
「わたくしを王太子と同じだと仰っているのですか?妃殿下、立ってください」
グイッと腕を引っ張られ、初めて自分の失言に気づく。まずい、無意識に声に出してた…!
私を自分の前に立たせたギデオンさんは、また昨日のように私の頬を挟み上げた。
「さあ、どうぞ」
どうぞ、って何?こんな顔にされて何をはなせと?そして!なんで触るの!ボディタッチが過ぎる!ギデオンさんの周辺から苦情は出ないのか?イケメンだからむしろ触られたいとか?私は求めていません、締め上げないで!
「なんでこんなことするんですか!普通にしゃべらせて!」
「ダメです。目を逸らさずにきちんと説明してください。わたくしと、あの王太子と、どこがどんな風に同じですか?是非お聞かせください」
言葉は丁寧だけど、手から加えられる圧力と上から見据える切れ長の冷たい瞳に恐怖しかない。
「だって…!いちいちこうやって、私のこと物理的に攻撃してきて…!」
「攻撃…?そんなことしていません。妃殿下を躾けているだけです。駄犬…いや、駄豚である妃殿下を」
なんですってぇ!?
ギッと睨み返してみたものの、冷酷な視線に凍りつかされ早々に降参せざるを得なかった。怖い!現実のドS怖い!
「で、どこが同じですか?早く説明してください」
「王太子は、陛下に表だって逆らいたくなくて、私のことが嫌いなのに婚約解消しなかったの!だけど、コソコソ裏で画策して、3年後離縁するなんて言ったんです!ギデオンさんも、私の近衛になんてなりたくなかったのに、陛下に命令されて逆らえなくて仕方なくいるけど、鬱憤晴らしのために私を攻撃してくるじゃないですか!言うべきことを言わないで、別の角度から攻めてくる汚さが同じだと言ったんです!」
「…妃殿下」
「ひい…っ」
地の底から響くような冷たい声に思わず悲鳴をあげてしまったが、私を挟み上げる手からはフッと力が抜けた。圧迫感から解放されたものの、凍てつく視線は変わっていない。
「…わたくしは昨日、わたくしでいいですか、と妃殿下に聞きました。妃殿下は、わたくしがいいと仰いました。まさかバカすぎて、昨日のことすらお忘れなのですか?」
忘れるわけないでしょ!無理矢理ギデオンさん「が」いいって言わされたのに!
「確かにわたくしは、陛下のご命令でこちらに来ました。正直に言わせていただければ、いい噂がひとつもない妃殿下の近衛、しかもこんな遠く離れた場所に押し込められた未来のないお飾り妃の近衛なんて、なんの罰かと嘆きました。
しかし昨日こちらに来て、陛下と話す貴女の様子を見て気持ちが変わりました。貴女は、ソフィア様の見た目ではあるが、中身は違う女性。感触の話でしかありませんが、わたくしは貴女の近衛になるなら文句はありません。
先ほども言いましたが、攻撃ではありません。躾です。わたくしは、あの王太子とは違います。貴女の身勝手な妄想でわたくしはひどく傷つきました。汚い男などと辱しめを受けて」
汚い、とは言ったけど、汚い男とは言ってない…。
「と言うわけですから。貴女のせいで傷付いたわたくしを癒してください」
「…どうやって?」
「こうやって、です」
またもやグイッと腕を引っ張られ、今度はギデオンさんの胸に抱き込まれた。
「ちょっとぉ!?」
もはやボディタッチどころの話ではない!何すんの、この人ぉ!イケメンは何しても赦されると思ってんの!?
「あー、やはり気持ちいい感触です。駄豚ほど可愛いとは本当ですね」
「それを言うなら駄犬…ちょっと!触らないでくださいよ!」
気持ちいい感触ってなんだよ!
「いいじゃないですか。減るもんじゃあるまいし。いや、減らしたほうがいいですよ、さすがに。いくら気持ちよくても」
ギデオンさんのデカイ手が私の腹を容赦なく揉み始めた。なんの辱しめを受けてんの、私!?昨日からこんなんばっかり!
背中をグッと抑えられているため、逃げることもできず、ギデオンさんの気が済むまで腹の贅肉を揉み揉みされ続けた私のライフはゼロになった。
「もうお嫁に行けない…」
「いまお飾りでも人妻ですから、嫁には行けませんよ」
ギデオンさんはドSの上に変態なのだと私の中で確定した。陛下…。連れて帰って…。
おまえが望むのはこういう契約書ではなかったのか?万が一にも相手の気が変わって、存在を抹消されたりしないための確約が欲しいんだろ?あ?違うのか?」
さっきの優しい顔はどこへやら。この人の言動、ほんとに国王陛下なの?ただのチンピラにしか見えないんだけど。
「…違わないです」
「じゃ、文句ねぇな」
「あの、陛下」
「なんだよ。やっぱり文句あんのか?」
「いえ、文句じゃなくて。この内容、あまりにもソフィアに有利というか、ずいぶん贔屓が過ぎるようにしか思えないんですが」
「んなことねぇよ。なあ?」
…なぜ、私の後ろにいるドS近衛に同意を求めるのか?
「ええ。その内容に、なにも問題はないと考えます」
「…なんでギデオンさん、誓約書の内容知ってるの?」
振り向こうとした私の頭は、ギッと後ろから固定された。
「痛い!ギデオンさん、痛い!」
「わたくしを、盗み見した盗人のように仰るからです。反省してください」
なんで知ってるのか返答してないじゃない!盗み見したって言われたって文句言えないじゃない!そしてまた触ってる!
ギリギリと締め上げてくる手に早々にギブアップするしかなかった。この人、私の近衛なんだよね、一応?なんで痛め付けようとするんだろ?やっぱりお飾り王太子妃の近衛になんかされちゃったことを根にもってるんじゃないの!?いくら国王に言われたからって、嫌だったら断ればいいじゃん、自分で!
「…王太子と同じじゃん」
「わたくしを王太子と同じだと仰っているのですか?妃殿下、立ってください」
グイッと腕を引っ張られ、初めて自分の失言に気づく。まずい、無意識に声に出してた…!
私を自分の前に立たせたギデオンさんは、また昨日のように私の頬を挟み上げた。
「さあ、どうぞ」
どうぞ、って何?こんな顔にされて何をはなせと?そして!なんで触るの!ボディタッチが過ぎる!ギデオンさんの周辺から苦情は出ないのか?イケメンだからむしろ触られたいとか?私は求めていません、締め上げないで!
「なんでこんなことするんですか!普通にしゃべらせて!」
「ダメです。目を逸らさずにきちんと説明してください。わたくしと、あの王太子と、どこがどんな風に同じですか?是非お聞かせください」
言葉は丁寧だけど、手から加えられる圧力と上から見据える切れ長の冷たい瞳に恐怖しかない。
「だって…!いちいちこうやって、私のこと物理的に攻撃してきて…!」
「攻撃…?そんなことしていません。妃殿下を躾けているだけです。駄犬…いや、駄豚である妃殿下を」
なんですってぇ!?
ギッと睨み返してみたものの、冷酷な視線に凍りつかされ早々に降参せざるを得なかった。怖い!現実のドS怖い!
「で、どこが同じですか?早く説明してください」
「王太子は、陛下に表だって逆らいたくなくて、私のことが嫌いなのに婚約解消しなかったの!だけど、コソコソ裏で画策して、3年後離縁するなんて言ったんです!ギデオンさんも、私の近衛になんてなりたくなかったのに、陛下に命令されて逆らえなくて仕方なくいるけど、鬱憤晴らしのために私を攻撃してくるじゃないですか!言うべきことを言わないで、別の角度から攻めてくる汚さが同じだと言ったんです!」
「…妃殿下」
「ひい…っ」
地の底から響くような冷たい声に思わず悲鳴をあげてしまったが、私を挟み上げる手からはフッと力が抜けた。圧迫感から解放されたものの、凍てつく視線は変わっていない。
「…わたくしは昨日、わたくしでいいですか、と妃殿下に聞きました。妃殿下は、わたくしがいいと仰いました。まさかバカすぎて、昨日のことすらお忘れなのですか?」
忘れるわけないでしょ!無理矢理ギデオンさん「が」いいって言わされたのに!
「確かにわたくしは、陛下のご命令でこちらに来ました。正直に言わせていただければ、いい噂がひとつもない妃殿下の近衛、しかもこんな遠く離れた場所に押し込められた未来のないお飾り妃の近衛なんて、なんの罰かと嘆きました。
しかし昨日こちらに来て、陛下と話す貴女の様子を見て気持ちが変わりました。貴女は、ソフィア様の見た目ではあるが、中身は違う女性。感触の話でしかありませんが、わたくしは貴女の近衛になるなら文句はありません。
先ほども言いましたが、攻撃ではありません。躾です。わたくしは、あの王太子とは違います。貴女の身勝手な妄想でわたくしはひどく傷つきました。汚い男などと辱しめを受けて」
汚い、とは言ったけど、汚い男とは言ってない…。
「と言うわけですから。貴女のせいで傷付いたわたくしを癒してください」
「…どうやって?」
「こうやって、です」
またもやグイッと腕を引っ張られ、今度はギデオンさんの胸に抱き込まれた。
「ちょっとぉ!?」
もはやボディタッチどころの話ではない!何すんの、この人ぉ!イケメンは何しても赦されると思ってんの!?
「あー、やはり気持ちいい感触です。駄豚ほど可愛いとは本当ですね」
「それを言うなら駄犬…ちょっと!触らないでくださいよ!」
気持ちいい感触ってなんだよ!
「いいじゃないですか。減るもんじゃあるまいし。いや、減らしたほうがいいですよ、さすがに。いくら気持ちよくても」
ギデオンさんのデカイ手が私の腹を容赦なく揉み始めた。なんの辱しめを受けてんの、私!?昨日からこんなんばっかり!
背中をグッと抑えられているため、逃げることもできず、ギデオンさんの気が済むまで腹の贅肉を揉み揉みされ続けた私のライフはゼロになった。
「もうお嫁に行けない…」
「いまお飾りでも人妻ですから、嫁には行けませんよ」
ギデオンさんはドSの上に変態なのだと私の中で確定した。陛下…。連れて帰って…。
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