お飾り王太子妃になりました~三年後に離縁だそうです

蜜柑マル

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ここはどこ、わたしはだれ

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国に利益をもたらすことをしろ?利益をもたらしたら、…離縁を認める?

「あの、陛下」

「なんだ」

「利益をもたらしたら、と仰いましたが…私から言わせれば、利益をもたらすことができるような能力を持っている人間をわざわざ王太子妃から外そうとするのはなぜですか?国に利益をもたらすことができるなら、そのままゆくゆくは王妃の座につけたほうが、」

「やるか、やらないか、どっちだ」

私が質問したことに、答える気持ちはない、ということか。

「やります。間違いなく、離縁させていただけるのですね」

「俺は嘘はつかない。約束は守る。…契約書、離縁誓約書を作りたいと言ったらしいな?なぜそんなことを思い付いたんだ?」

アネットさんに説明した通り、裕さんの心変わりについて話した。

なるほどなぁ、と呟いた陛下は、

「その誓約書の案は俺が作る」

…なんですと?

「いや、あの、」

「勝手に決めたりしねぇよ。おまえの考えもきちんと取り入れる。あのな。おまえ、金はいらねぇ、って言ったらしいな。アネットが呆れ返ってたぞ。どうやって生きていくつもりなんだ、って」

「慰謝料を払うつもりはないと断言されましたし、だいっきらいな相手にいつまでも恩着せがましく俺が金を払ってやった、そのお陰でおまえは生きていられるんだろうと偉そうに言われるのが我慢ならないだけです」

陛下はまた面白そうに笑うと、「さっぱりしてやがるなぁ」と言った。

「…10年結婚してあんな最期を迎えると、ひねくれてもくるんです」

その時ノックの音がして、アネットさんが「失礼します」と入ってきた。

「準備に手間取りまして、遅くなりました。陛下、どうぞ。妃殿下もどうぞ」

ふわり、といい香りがする。紅茶かな?キレイな色。

「ありがとうございます」

カップに口をつけると、こちらを見る陛下と目が合った。

「おまえは、ソフィアの知識しかないんだろ、この世界については。まったく勉強も努力もしないバカ女だったから大した知識もありゃしねぇ。そんな状態で利益を出せって言っても、俺にしか有利じゃねぇよなぁ」

…バカ女ってわかってるのに、なんで王太子妃にしてゆくゆくは王妃にしようとしてるのか理解できないんだけど。

「…というわけで。おまえに、家庭教師をつけてやる。ただし、この離宮には来させられないから、おまえが王宮に来い。王宮には蔵書も山のようにあるし、勉強するにはいいだろう。どうだ?」

どうだ、と言われても。私には選択肢はない。手を差し伸べようとしてくれている人を、無下に振り払うようは人でなしではない。

「ありがとうございます。ただ、」

「なんだ」

「王太子殿下に、離宮を出るなと言われています。視界に入るなと」

ギッと目付きを鋭くした陛下は、

「あいつにそんなことを言う権利はない。誓約書には、それも盛り込んでおく。いつから来る?あいつには、おまえを見掛けても声をかけることは罷りならんと通達を出す。俺が王宮に来るよう指示したということも明確にしておく。文句は言わせねぇ。…そうだ」

アネットさんをチラリと見ると、

「おまえにはアネットが付いてるが、この離宮にはたったふたりしかいねぇんだろう?離宮から王宮に来る間に、あいつがちょっかい掛けてこねぇ保証がねぇから、おまえに近衛をつける」

「近衛、ですか?」

「そうだ。近衛騎士をひとり寄越す」

「でも、食事とか、」

「食事は王宮でとらせるから心配すんな。おまえも王宮で飯食っていいんだぞ」

いや、遠慮します。

黙っている私を、また面白そうな顔で見た陛下は「なんか質問はあるか」と言った。

「…質問したいことがわかりません」

「ま、だよな。俺は今から王宮に戻って離縁誓約書の案を作る。明日までには持ってくるから、」

え、

「…また来るんですか?わざわざ?」

「わりいのかよ、来ちゃ」

不機嫌そうな顔になってるけど、…陛下って忙しいんでしょ。誰かに頼めばいいと思う…そもそも、なんで陛下直々に誓約書を作る気満々なのかな。

「来ちゃダメなのか」

この人、しつこいんだな。

「いえ、わざわざ時間をかけてまで、」

「そんなこと聞いてねぇ。来ていいか、悪いか、って聞いてんだ」

「…悪くないです」

「いいんだな?」

「…悪くないです」

「いいんだな?」

あー…ドSだぁー…。読む分には悶えちゃうけど自分がやられると、ゴリゴリ削られていくなぁ…。

「いいです。来てください、いつでも」

ニヤリとした陛下は、一気に紅茶を飲み干し、「また来る。明日な、ソフィア」と出て行った。

…倦怠感しかない。良く眠れそうだわ…。
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