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王宮に呼ばれました
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「…あの、陛下」
「なんだ」
アネットさんが淹れてくれた紅茶を美味しそうに飲む陛下。…なんだ、って、
「この誓約書、内容おかしくないですか!?狂犬みたいなんだけど!こんな簡単に王太子処刑とか記述しちゃっていいんですか!?」
「なんだよ。仮初めとは言え、夫に愛情が沸いてきたのか?」
そんなわけない。断じてない。
「私はこの世界に来てから、名ばかり夫を直接見たことも会ったこともないんですよ。どうやって愛情を持つんですか。ソフィアの頭に残っていた映像で見ましたけど、好みのタイプではないです。自分に酔っ払ってるナルシスト坊っちゃんなんてだいっきらいですよ!そうじゃなくて、」
「じゃあおまえの好みのタイプはどんな男だ」
ニヤニヤしやがって…ムカつくな…。
「…私は中身が40歳なので」
「40歳で殺されたのか。俺は今40歳だ。同じ歳だな」
そういう情報求めてない。
「なので、大人の包容力がある、誠意のある人がいいです。私に嘘をついたり、ごまかしたりしない人。たとえば、結婚していて、他に好きな人が出来たらそれを正直に告げて、その上で自分は今後どうしたいのか話してくれる人がいいです。誠意を持って。王太子の行為は同じようでも、誠意がないからダメです」
クビを傾げる陛下は、「それでおまえと離縁したい、って言われたらどうすんだよ?」とじっとこちらを見る。
「それは致し方ないです。だって、目に見えない人の気持ちを変えることなんて出来ないでしょ。もしそれまでの仲が良好だったら、たぶん突然すぎてすぐには受け入れられないでしょうし、ツラいと思いますけど」
ふーん、と呟くと、「じゃあ、おまえの好みは俺だな」と言った。
「いや、違います」
「なんだその即答は」
「痛い!陛下、やめてくださいよ!痛い!」
またグリグリやられる。自分の握力考えてよ!それでなくてもソフィアはバカなのに、これ以上知識がなくなったらどうすんだ!
頭を擦っていると、ひっくい声が聞こえてきた。後ろから。
「妃殿下、わたくしは妃殿下に嘘はついていません。ごまかしてもいません。もしそうだとしてもそれは不可抗力で、わたくしの意志ではありません。おわかりいただけますか」
振り向くと無表情で立っているギデオンさんと目が合った。…どういう意味?
「ギデオンさん、」
「おわかりいただけますか」
また始まった…。
「おわかりいただけません。だって言ってる意味がわからない」
「わからないのは妃殿下がバカだからです」
…なんでここに来る人って、揃いも揃って人をバカ呼ばわりするんだろ。確かにソフィアはバカだけど…!
「そうですね、バカだからわかりません!」
するとギデオンさんがいきなり近づいてきて、私の頬をギュウッと挟んだ。
「痛い!ギデオンさん、痛い!」
ちょっとぉ!それでなくても顔真ん丸なのに!こんなことされたらヒョットコみたいじゃん!なんの辱しめだよ!
そして!いくら私に女性らしさを感じないからと言って、いきなり触れるのはおかしくないのか!?この人、距離感なさすぎる、馴れ馴れしすぎじゃない?ソフィアの記憶の中にもギデオンさんはいない、つまり、関係のない人だったはず。ソフィアの人付き合いはほぼなかったんだし。親しくないのに!なんで頬を挟むの!?貴方は若い男でしょ!ついボディタッチしてしまうオバチャンじゃないでしょ!
「痛くありません。妃殿下が、わかったと言わないから悪いんです」
…なんなの、その理論。
「わたくしが、自分の意志で妃殿下に嘘をついていたりごまかしていたりはしていない、不可抗力だということを理解してください」
「無理です…、痛い!」
ますますギリギリと挟みつけられ、肉が盛り上がっているために視界がどんどん狭まってくる。
「理解できるまでやります」
「脅迫!」
「脅迫?そんな、人聞きの悪い」
この人、ほんとに離さない気だ。何度も言う。私は、BLのドS攻めが好きであり、現実のドSは好きではない!
「わかりました!たぶんわかりました!」
「一言余計ですよ、妃殿下」
「わかりました!」
ようやく手を離される。陛下といいギデオンさんといい、物理的手段に訴えるのやめて欲しいんだけど!
「良かったです、わかっていただけて」
また後ろに戻っていくギデオンさん。くそー。どうにかして仕返ししてやりたい…でもこのカラダではピンポンダッシュすらできない。逃げられなければ返り討ちに合うのは目に見えている。
今は我慢の時だ。まずは痩せる。
目の前ではまた陛下がクックッと笑っている。
「…なんの話でしたっけ」
「王太子殿下を処刑しすぎだという話ですよ、妃殿下」
陛下の後ろに立つアネットさんが教えてくれる。今まで通りアネットさんだけでいいから…ギデオンさんのこと、陛下、持って帰ってくれないかな…。
「そうだ。おまえ、なんか不満なのか?王太子が処刑されちゃ何か不味いのか?」
しれっと言うけどさ!
「だって王太子でしょ!次の国王なのに、」
「おまえは、俺の子どもが何人いるか知識があるか?」
…また話を逸らされた。
「…ありません」
ソフィアは王太子にしか興味がなかったし、何かを知ろうとか、ネットワークを広げようとかまったくしなかった。せっまい世界で、自分に都合のいい世界で生きていたから、離宮に押し込められて現実に押し潰されちゃったんだ。
「俺はな、あいつ…王太子以外に、息子が3人、娘がふたりいる。あいつ以外の5人は、王妃…イングリットが生んでくれた子どもだ」
途端に優しい顔になった陛下からは、王妃陛下に対する愛情が伝わってきたけれど…替えがきくから処刑してもいいってことなの?
「なんだ」
アネットさんが淹れてくれた紅茶を美味しそうに飲む陛下。…なんだ、って、
「この誓約書、内容おかしくないですか!?狂犬みたいなんだけど!こんな簡単に王太子処刑とか記述しちゃっていいんですか!?」
「なんだよ。仮初めとは言え、夫に愛情が沸いてきたのか?」
そんなわけない。断じてない。
「私はこの世界に来てから、名ばかり夫を直接見たことも会ったこともないんですよ。どうやって愛情を持つんですか。ソフィアの頭に残っていた映像で見ましたけど、好みのタイプではないです。自分に酔っ払ってるナルシスト坊っちゃんなんてだいっきらいですよ!そうじゃなくて、」
「じゃあおまえの好みのタイプはどんな男だ」
ニヤニヤしやがって…ムカつくな…。
「…私は中身が40歳なので」
「40歳で殺されたのか。俺は今40歳だ。同じ歳だな」
そういう情報求めてない。
「なので、大人の包容力がある、誠意のある人がいいです。私に嘘をついたり、ごまかしたりしない人。たとえば、結婚していて、他に好きな人が出来たらそれを正直に告げて、その上で自分は今後どうしたいのか話してくれる人がいいです。誠意を持って。王太子の行為は同じようでも、誠意がないからダメです」
クビを傾げる陛下は、「それでおまえと離縁したい、って言われたらどうすんだよ?」とじっとこちらを見る。
「それは致し方ないです。だって、目に見えない人の気持ちを変えることなんて出来ないでしょ。もしそれまでの仲が良好だったら、たぶん突然すぎてすぐには受け入れられないでしょうし、ツラいと思いますけど」
ふーん、と呟くと、「じゃあ、おまえの好みは俺だな」と言った。
「いや、違います」
「なんだその即答は」
「痛い!陛下、やめてくださいよ!痛い!」
またグリグリやられる。自分の握力考えてよ!それでなくてもソフィアはバカなのに、これ以上知識がなくなったらどうすんだ!
頭を擦っていると、ひっくい声が聞こえてきた。後ろから。
「妃殿下、わたくしは妃殿下に嘘はついていません。ごまかしてもいません。もしそうだとしてもそれは不可抗力で、わたくしの意志ではありません。おわかりいただけますか」
振り向くと無表情で立っているギデオンさんと目が合った。…どういう意味?
「ギデオンさん、」
「おわかりいただけますか」
また始まった…。
「おわかりいただけません。だって言ってる意味がわからない」
「わからないのは妃殿下がバカだからです」
…なんでここに来る人って、揃いも揃って人をバカ呼ばわりするんだろ。確かにソフィアはバカだけど…!
「そうですね、バカだからわかりません!」
するとギデオンさんがいきなり近づいてきて、私の頬をギュウッと挟んだ。
「痛い!ギデオンさん、痛い!」
ちょっとぉ!それでなくても顔真ん丸なのに!こんなことされたらヒョットコみたいじゃん!なんの辱しめだよ!
そして!いくら私に女性らしさを感じないからと言って、いきなり触れるのはおかしくないのか!?この人、距離感なさすぎる、馴れ馴れしすぎじゃない?ソフィアの記憶の中にもギデオンさんはいない、つまり、関係のない人だったはず。ソフィアの人付き合いはほぼなかったんだし。親しくないのに!なんで頬を挟むの!?貴方は若い男でしょ!ついボディタッチしてしまうオバチャンじゃないでしょ!
「痛くありません。妃殿下が、わかったと言わないから悪いんです」
…なんなの、その理論。
「わたくしが、自分の意志で妃殿下に嘘をついていたりごまかしていたりはしていない、不可抗力だということを理解してください」
「無理です…、痛い!」
ますますギリギリと挟みつけられ、肉が盛り上がっているために視界がどんどん狭まってくる。
「理解できるまでやります」
「脅迫!」
「脅迫?そんな、人聞きの悪い」
この人、ほんとに離さない気だ。何度も言う。私は、BLのドS攻めが好きであり、現実のドSは好きではない!
「わかりました!たぶんわかりました!」
「一言余計ですよ、妃殿下」
「わかりました!」
ようやく手を離される。陛下といいギデオンさんといい、物理的手段に訴えるのやめて欲しいんだけど!
「良かったです、わかっていただけて」
また後ろに戻っていくギデオンさん。くそー。どうにかして仕返ししてやりたい…でもこのカラダではピンポンダッシュすらできない。逃げられなければ返り討ちに合うのは目に見えている。
今は我慢の時だ。まずは痩せる。
目の前ではまた陛下がクックッと笑っている。
「…なんの話でしたっけ」
「王太子殿下を処刑しすぎだという話ですよ、妃殿下」
陛下の後ろに立つアネットさんが教えてくれる。今まで通りアネットさんだけでいいから…ギデオンさんのこと、陛下、持って帰ってくれないかな…。
「そうだ。おまえ、なんか不満なのか?王太子が処刑されちゃ何か不味いのか?」
しれっと言うけどさ!
「だって王太子でしょ!次の国王なのに、」
「おまえは、俺の子どもが何人いるか知識があるか?」
…また話を逸らされた。
「…ありません」
ソフィアは王太子にしか興味がなかったし、何かを知ろうとか、ネットワークを広げようとかまったくしなかった。せっまい世界で、自分に都合のいい世界で生きていたから、離宮に押し込められて現実に押し潰されちゃったんだ。
「俺はな、あいつ…王太子以外に、息子が3人、娘がふたりいる。あいつ以外の5人は、王妃…イングリットが生んでくれた子どもだ」
途端に優しい顔になった陛下からは、王妃陛下に対する愛情が伝わってきたけれど…替えがきくから処刑してもいいってことなの?
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