もちもち@ひめか♪

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~家出少女と言われて~

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私が中学2年生の時…
長らくお世話になっていた福岡から離れる事になった。




パパはIT企業で電子工学の設計やプランニングを主に扱う、エリートマン。
元は貧乏一家生まれだったんだけど、自力で学歴を積み重ねて誰よりも努力を惜しまなかった逸材。



ママは御曹司一族の元に生まれた生粋のお嬢様で、高学歴な上にあまりに美しい美貌で、
あの石油王ですら恋をしたとか、
VIP御用達の専用ホテルをポンポン予約取るような金の亡者。



ただこの2人、お金への価値観は全く違うが為に、時々衝突もするけど…

すぐに仲直りして、いっつも笑いあいながら話をしてて、とても楽しそうなの。

だから、私はいつも内心羨ましかった。
ちょっと嫉妬しちゃうけど、これはきっと憧れなんだろうなって…。




福岡にはたくさん友達もいたし、
小高い山の上にある私の家は、近所では有名なくらい豪邸だった。

よく空き巣が狙いに来ては、セ◯ムの警告音や通報ですぐ駆けつけた警察官にご用になったり。

「またきた(笑)」

くらいにしか思わなかったんだけどな。

中学校では市内の有名な私立に行ってて、同級生もまた著名人の子供が多かった。
自分の親の七光りで芸能活動してる子もいたし。

だけど私は、七光りはさすがに嫌だったし
自力で頑張る!って勉強頑張ってもやっぱり七光り扱いで。

成績に表れて当たり前、日常的な振る舞いも美しくて当たり前…



当たり前が当たり前。


当たり前。……当たり前ってなに?




みんなの羨ましさの目が、

妬みの目が、

尊敬の目が、

疎まれる目が、目が、……目が。




私を見る、その様々な目が。
あまりに取っ払いたくて仕方なかった。



親がすごいだけで、私はすごくない。
私が頑張っても、私はすごくない。

だって、すごいのは、私の成績や振る舞いじゃなく

私を通してみた後ろにある華やかな、大きくて偉大な世界───






気づいたら親に対しても、憧れから
[私にまとわりついてくる負荷]になっていた。




次第に私の様子が違うことを察した両親は、
何も言わずに見慣れぬ封筒を渡してきた。



「……なに、これ」


「………東京行きの飛行機のチケットと、わずかだけどお金が入っている、タクシー代にでもしなさい」



「…はっ??」


ポカーンとする私に、パパが続ける。

「お前の事は…俺がよく分かる。
ひとまず手続きは任せて、この地図の通りに…」

「なにが!!!」

思わずかちんときてしまって、大きな声で反論する。

「私の何が分かるったい?ねぇ!!」
「そっか、、、私は邪魔なんね!いい子でおれんと悪かったい!」

パパとママには分からない!
分かるわけない!




この、劣等感が。

私を見てもらえない。

この苦しみも。





むしりとるようにパパに手から封筒を奪い、こんな家出てってやる!と意気込んで、さっさと荷物をまとめ玄関に向かうと、ママが心配そうに見送りに来た。


「姫香…」

「…」

「あなたは、馬鹿だよ…なんでそんな捉え方しか出来ないの……」

悲しそうなママの顔。
初めて見た。



私が、ママを悲しませてる…?



「…っ!」


私は輝かしい過去から決別するために、
玄関のドアを思い切り閉めた。


─バン!!




ママはきっと辛かったはずだ。
大事な娘が悩む姿を見て、なにもしてやれない非力さに。
パパにも、ママにも、私の中にはこのときは怒りしか無かったから…。







そして家を出ていく私の姿を、お義兄ちゃんと義弟が窓から眺めていたのは、
そのときは知らなかったけど。



「………。」

「…行っちゃったね、お兄ちゃん」

「ほっとけ。清々する」

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