決して褒められた子供では

 伝え聞く話。私が心を傾け、やがて耳を傾け、全てを捧げようとした聖人の道を通ったかつての人々はどうか。みなそれぞれ、生まれたときから、そう宿命づけられていたかのように類まれな才と同時に謙虚さ、慈悲をもあわせ持ち、不正と争いを嫌い、慎ましく、いかなる欲も悪しきものと払いながら、しかも人々の欲に向かうさまに微笑みと、過ぎるならば哀れみの視線をくれる、そんな「祝福された」子供だった。
 私はどうか。私は、とても褒められた子供ではなかった。才の無いのを妬みに変えて、周りの子供に大事にされたことなどは、その妬みを茶化しに変えるいたずらとずる賢さの才であり、都合に応じて優しさを変え、いじめるようなことはなくとも、興味のない人物にはあからさまなまでに冷淡に接してきた。不正も争いも中途半端に好きであれば嫌いでもあり、自分の美点はそれとなく明かして汚点は必死に隠した。欲に対して厳しく当たっているようで、その実、誘惑には弱かった。人々のあさましい様には眉をひそめながら、自分に訪れる甘美な経験は天からの褒美や見逃しだと考えていた。
 私は時には、生きていることが恥ずかしい。ただ日々は敬虔さを求めながら過ぎ行くなかで、それでも何かすれ違う人の中に、私への慰めの声に、細やかで優しい手に、私はまたしも誘われていく。私はそういう人なのか。それとも祈りの果てにこの日々をこえて、すべてを洗い流した美しい景色がこの眼の前に訪れるのか。
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