この上ない一日

人生において一番幸せな日というのはどんな日だろうか。富を得て、地位を得て、日々はどんどんと揺るぎないものになっていく。昔より美味しいものを食べて、便利な生活と清潔で広い部屋に囲まれて、豪華な旅行にでも出てみるのが最高の一日だろうか。
 あるいは、大切な人と過ごす時間がそうだという人もいる。たいていは、何気ないという言葉で飾られる温かな時間のこと。特別な場所に出かける必要もなくて、特別なものを食べる必要もなくて、特別な言葉さえもいらないとか、そんな一瞬一瞬を数える終わりを愛しむ、そんな、夢まぼろしのような日こそがと。
 でも、特別であることは、幸せな日には欠いてはならない。特別な場所も、特別なものも食べるべきだ、特別な言葉を言わずに押し込めておくなんてもってのほかだ。それだけにはとどまらない。特別な目覚めがある。目覚めの前の夢や寝ぼけ眼の青い、鳥の声もまだ聞こえない特別な朝がある。いつも着る服。衣擦れごとにそれは特別なものになっていく。風も光も、会う人も。一瞬一瞬は、時間を過ごすたびに何かきらびやかなものに置き換えていくそのどれよりも眩しく、高価なものや夢まぼろしのものにまぎれた霧をすっかり晴らしてしまう。
 それは特別な現実で、一生にわたって、思い出さずとも忘れられず、変わりゆくどんなあなたにも問いかけてくる、そんな幸福なのだ。
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