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血統鑑定士の災難【本編】
44 銀縁眼鏡側近の災難⑥
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うぁぁ・・・と項垂れるクリストフェルにトゥマエレが「自分で慰めたりは出来るのよね?」と手を上下にするジェスチャーに、ニリアンが「聖下っ、おやめください!」と思わず止め、項垂れつつも「人並みには」と律儀に答えるクリストフェルにエドゥバルドが笑いを堪える。
「完全にリリちゃんだけの身体なのねぇ。若い頃に出会ってしまった影響かしら?」
「かもなぁ・・・。っ、く・・・。俺もトゥマもある程度、年が行ってから会ったからな」
「笑いたければ、笑ってください・・・。ニリアン、覚えておけよ」
「すみません、忘れさせてください」
クリストフェルの一途なまでの想いが解ったところで、執務室にトントントンと来訪を知らせる音が響いた。
そういえば、休憩していたとはいえ、執務中だったと思い出しニリアンは部屋の主であるクリストフェルを見た。
クリストフェルがどうしたものかと悩む先にエドゥバルドが「構わん、入れてやれ。一人を除外して人払いをしていたんだ」とニリアンへ告げた。
そうだ。
こんなにも長い休憩を取っているにも関わらず、外へと業務を持たせた他の側近が返って来ない訳がないのに。と、ニリアンは今更ながら、エドゥバルドとトゥマエレの登場によって頭が回っていなかったのだろうと反省した。
室内へ招いて良いという事なので、ニリアンは「どうぞ」と扉の向こう側に立つ人へと声を掛けた。
「失礼します・・・、こちらの報告書を持って行く様にとの事でして・・・・・・ヴァ、っ、エドゥバルド鑑定士長に、トゥマエレ教皇まで・・・」
司書官のローブを身にまとい、室内へと入ってきたのはロアンだった。
ロアンは室内にいた魂の伴侶と認めた2人に目を丸くして「なぜここに?」と思わず駆け寄った。
隠してはいるのだろうが、どことなく嬉しそうに微笑むロアンにエドゥバルドもトゥマエレも思わず脂下がる。
「リリカント司書官殿、書類なら私が預かろう」
その様子を目の当たりにして、居てもたってもいられずにクリストフェルが声を掛ければ、ロアンの目から感情がふっと消え去るのをエドゥバルドは見逃さなかった。
「ニリアン、後ろを向け。直ぐにだ。護衛としての立場もあるだろう、耳を塞げとは言わんができるだけ聞くな」
「?、し、承知しましたっ」
「エドゥバルド鑑定士長?・・・んっ!んんーーーーーっ!?」
「なっ!伯祖父殿っ!」
「あら、まぁ」
ロアンの前に立ち、直ぐにニリアンに支持を出したエドゥバルドはニリアンが慌てて立ち上がり完全に後ろを向いた事を確かめるや否や、ロアンを抱き込み唇を重ね、多少強引ではあったが唇を舌で割り開き口内を蹂躙する。
ロアンは抗議の声を上げる間もなく、齎される快感に酔わされてエドゥバルドに応えていく。
それを成す術もなく見るだけしか出来なかったクリストフェルは声を荒げるが、トゥマエレは何か考えがあるのかしら?と首を傾げて見守った。
ただし、クリストフェルが暴走した時の為に直ぐ動けるように警戒をしてだが・・・
ニリアンは何か良からぬことが起きているのを、背後から聞こえるロアンの鼻にかかりくぐもった甘い声と、ぴちゃぴちゃと室内に響く水音に心の中で咽び泣いた。
(やめてくださいーーー!せめて、せめてっ、私が居ないところでやってくれー!)
耳を塞ぎたいが、エドゥバルドが言った通り護衛としての立場があるため(エドゥバルドとトゥマエレが居ては護衛は形無しなのだが、一応はクリストフェルの護衛はニリアンなのだ)、塞げずニリアンは心の中でひたすら「聞こえない聞こえない聞こえない」と繰り返し念じる。
「んっ、ん・・・。ぷはっ」
「ふぅ・・・、ロアン、お前の中で何があった?何を思ってその結論に達し、行動に移した?」
ロアンから思考の抵抗すら奪いきり唇を開放するとエドゥバルドは優しく宥める様に囁いた。
その質問に一瞬だがロアンは身体を震わせる。
あまりにもの衝撃で床に足が張り付いたようになっていたクリストフェルも大きく息を飲んだことで、自分が息すら止めていたことに漸く気付いた。
なかなか口を開こうとしないロアンに今度はトゥマエレが近付き、ロアンの手を取ると手のひらへ唇を落とす。
クリストフェルは駆け寄りたくなるのをグッと堪えて、拳を力の限り握り3人を見守る事を選んだ。
「リリちゃん、言ったでしょう?全てを分かち合いましょうと・・・。1人で悩まないで、貴方の苦しみを分けて?」
「悪かった。ロアンがこんなに苦しんでいるのに気付かなかったとは・・・伴侶失格だな」
「っ、そんなことはっ」
エドゥバルドの伴侶失格という言葉にロアンはふるふると頭を振り否定するが、適切な言葉が出てこずロアンは泣きそうになる。
違う、違うのだ。私が悪いのだ。と繰り返し、瞳が濁り始めるロアンの鼻をぎゅっとトゥマエレが摘まんだ。
ふぎゅ。と声を出し、パチパチと目を瞬かせるロアンにトゥマエレは微笑みかけ「リリちゃんは、クリスちゃんとの何が怖いの?」と問いかける。
その問いかけにロアンはウロウロと目を泳がせて口を開けては閉じを繰り返す。
その揺れる視界の先にクリストフェルを映しては「あ・・・」と小さく声を上げて感情を見え隠れさせる。
(いやだ、いやだ。こんな、情けない)
自分の女々しい部分を顕わにされてロアンの心は揺さぶられる。
決めたのだ。クリストフェルを愛さないと・・・というロアンの決意が自身の心を蝕んでいく。
身体の奥底から感じる渇望を必死で抑え付けるロアンの身体が小さく震え始める。
その様子に、まずいと感じたのはロアンに触れていたエドゥバルドとトゥマエレの2人だった。
「完全にリリちゃんだけの身体なのねぇ。若い頃に出会ってしまった影響かしら?」
「かもなぁ・・・。っ、く・・・。俺もトゥマもある程度、年が行ってから会ったからな」
「笑いたければ、笑ってください・・・。ニリアン、覚えておけよ」
「すみません、忘れさせてください」
クリストフェルの一途なまでの想いが解ったところで、執務室にトントントンと来訪を知らせる音が響いた。
そういえば、休憩していたとはいえ、執務中だったと思い出しニリアンは部屋の主であるクリストフェルを見た。
クリストフェルがどうしたものかと悩む先にエドゥバルドが「構わん、入れてやれ。一人を除外して人払いをしていたんだ」とニリアンへ告げた。
そうだ。
こんなにも長い休憩を取っているにも関わらず、外へと業務を持たせた他の側近が返って来ない訳がないのに。と、ニリアンは今更ながら、エドゥバルドとトゥマエレの登場によって頭が回っていなかったのだろうと反省した。
室内へ招いて良いという事なので、ニリアンは「どうぞ」と扉の向こう側に立つ人へと声を掛けた。
「失礼します・・・、こちらの報告書を持って行く様にとの事でして・・・・・・ヴァ、っ、エドゥバルド鑑定士長に、トゥマエレ教皇まで・・・」
司書官のローブを身にまとい、室内へと入ってきたのはロアンだった。
ロアンは室内にいた魂の伴侶と認めた2人に目を丸くして「なぜここに?」と思わず駆け寄った。
隠してはいるのだろうが、どことなく嬉しそうに微笑むロアンにエドゥバルドもトゥマエレも思わず脂下がる。
「リリカント司書官殿、書類なら私が預かろう」
その様子を目の当たりにして、居てもたってもいられずにクリストフェルが声を掛ければ、ロアンの目から感情がふっと消え去るのをエドゥバルドは見逃さなかった。
「ニリアン、後ろを向け。直ぐにだ。護衛としての立場もあるだろう、耳を塞げとは言わんができるだけ聞くな」
「?、し、承知しましたっ」
「エドゥバルド鑑定士長?・・・んっ!んんーーーーーっ!?」
「なっ!伯祖父殿っ!」
「あら、まぁ」
ロアンの前に立ち、直ぐにニリアンに支持を出したエドゥバルドはニリアンが慌てて立ち上がり完全に後ろを向いた事を確かめるや否や、ロアンを抱き込み唇を重ね、多少強引ではあったが唇を舌で割り開き口内を蹂躙する。
ロアンは抗議の声を上げる間もなく、齎される快感に酔わされてエドゥバルドに応えていく。
それを成す術もなく見るだけしか出来なかったクリストフェルは声を荒げるが、トゥマエレは何か考えがあるのかしら?と首を傾げて見守った。
ただし、クリストフェルが暴走した時の為に直ぐ動けるように警戒をしてだが・・・
ニリアンは何か良からぬことが起きているのを、背後から聞こえるロアンの鼻にかかりくぐもった甘い声と、ぴちゃぴちゃと室内に響く水音に心の中で咽び泣いた。
(やめてくださいーーー!せめて、せめてっ、私が居ないところでやってくれー!)
耳を塞ぎたいが、エドゥバルドが言った通り護衛としての立場があるため(エドゥバルドとトゥマエレが居ては護衛は形無しなのだが、一応はクリストフェルの護衛はニリアンなのだ)、塞げずニリアンは心の中でひたすら「聞こえない聞こえない聞こえない」と繰り返し念じる。
「んっ、ん・・・。ぷはっ」
「ふぅ・・・、ロアン、お前の中で何があった?何を思ってその結論に達し、行動に移した?」
ロアンから思考の抵抗すら奪いきり唇を開放するとエドゥバルドは優しく宥める様に囁いた。
その質問に一瞬だがロアンは身体を震わせる。
あまりにもの衝撃で床に足が張り付いたようになっていたクリストフェルも大きく息を飲んだことで、自分が息すら止めていたことに漸く気付いた。
なかなか口を開こうとしないロアンに今度はトゥマエレが近付き、ロアンの手を取ると手のひらへ唇を落とす。
クリストフェルは駆け寄りたくなるのをグッと堪えて、拳を力の限り握り3人を見守る事を選んだ。
「リリちゃん、言ったでしょう?全てを分かち合いましょうと・・・。1人で悩まないで、貴方の苦しみを分けて?」
「悪かった。ロアンがこんなに苦しんでいるのに気付かなかったとは・・・伴侶失格だな」
「っ、そんなことはっ」
エドゥバルドの伴侶失格という言葉にロアンはふるふると頭を振り否定するが、適切な言葉が出てこずロアンは泣きそうになる。
違う、違うのだ。私が悪いのだ。と繰り返し、瞳が濁り始めるロアンの鼻をぎゅっとトゥマエレが摘まんだ。
ふぎゅ。と声を出し、パチパチと目を瞬かせるロアンにトゥマエレは微笑みかけ「リリちゃんは、クリスちゃんとの何が怖いの?」と問いかける。
その問いかけにロアンはウロウロと目を泳がせて口を開けては閉じを繰り返す。
その揺れる視界の先にクリストフェルを映しては「あ・・・」と小さく声を上げて感情を見え隠れさせる。
(いやだ、いやだ。こんな、情けない)
自分の女々しい部分を顕わにされてロアンの心は揺さぶられる。
決めたのだ。クリストフェルを愛さないと・・・というロアンの決意が自身の心を蝕んでいく。
身体の奥底から感じる渇望を必死で抑え付けるロアンの身体が小さく震え始める。
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