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第四章 想いを込めた星空ブレスレット
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翌日、お店に行くと瞬君は約束通りブレスレットを作ってくれていた。
「え、何時から来てたの?」
「うちの学校、今日テストで終わるのが早かったんだ」
「こんな時期にテスト?」
「中間テスト。お前のところないの?」
「うち二学期制だからちょっと前に期末テストが終わったところだよ。瞬君のところは三学期制なんだね」
頷く瞬君にやっぱりと思う。夏休み前にもしかしたらそうかもって思ってたけれど、やっぱりそうだったんだ。
「二学期制かー、テスト少なくて羨ましい」
手を動かしながら瞬君は言う。
お昼過ぎから来ていたからか、ブレスレットはもうほとんど完成していた。
あとはチャームをつけるだけのようだった。
「どう? イメージと違ったりしない?」
「うん、私のイメージとピッタリ!」
これをつけている瞬君の姿を想像してにんまりしてしまう。
「ならよかった。んじゃ、ほい」
できあがったブレスレットを受け取る。銀色に光る星のついた少しチェーンが太めのブレスレットは、以前作った三日月のブレスレットとは違って男の人がつけていてもおかしくないデザインになっていた。
「ありがとう」
「別に。……喜んでくれるといいな」
「うん!」
受け取ったブレスレットを持って私は二階に上がる。
準備してきたラッピング用の袋に入れて、リボンをかけた。
へにゃっとなってしまたリボンを直しながら、急に不安になってくる。
「作ってもらったものをプレゼントするなんて、やっぱり変かな」
それに私なんかがデザインしたものをプレゼントしたって喜ばないかもしれない。
「ううん、そんなことない」
瞬君がそんな人じゃないことを私は知っている。きっと笑って受け取ってくれる。そうに決まってる。
「あれ? そういえば今日って瞬君バイトないんだよね? じゃあ、これ作ったらすぐに帰っちゃうかもしれないってこと?」
そんなことになったら大変だ。
明日も来るだろうから明日でもいいんだけど、でもできれば早めに渡したい。
それでもって、瞬君に笑顔になってほしい。
私は急いでラッピングしたブレスレットを鞄に入れると、階段を駆け下りた。
電気の消えた工房には人影がなく、慌ててお店に繋がるドアを開けた。
「美琴?」
「どうしたんだ?」
そこには二人で何かを話す瞬君とおじさんの姿があった。
瞬君がまだ帰ってなかったことにホッとして、ホッと息を吐いた。
「もう帰っちゃったかと思って」
「美琴を置いて帰らねえよ」
ふっと瞬君は笑う。
その笑顔を見て、私は自分の気持ちにようやく気づいた。
ああ。私、瞬君のことが好きだ、って。
「美琴? どうかしたか?」
「う、ううん。なんでもない」
気づいてしまった自分の感情に戸惑いながらも、でも、どこかストンと胸の奥に落ちるのを感じる。
ずっと気づかないふりをしていただけで、本当は知っていたのかもしれない。
だってこの感情は、こんなにもあたたかくてくすぐったくて心地いいんだから。
「ホント変だぞ? なんか落ちてるものでも食ったんじゃないのか?」
「そ、そんなことしないよ!」
「そうか?」
おかしそうに笑う瞬君の後ろで、どうしてかおじさんが顔をしかめているのが見えた。
「おじさん?」
「いや、なんでもない。美琴はもう帰るのか?」
手に持った鞄に視線を向けるとおじさんは尋ねる。
私はどうしよう、と瞬君の方をチラッと見た。
「ちょっと早いけど帰るか。それに俺、美琴に話したいことがあるから」
「話したい、こと?」
心臓が跳ねるように高鳴る。
もしかして、と思った。
もしかして瞬君も、私と同じ気持ちで、それで――。
でも、瞬君の顔を見た瞬間、そんな淡い期待は打ち砕かれた。
瞬君は悲しそうな、それでいて辛そうな表情を浮かべていた。
それは先ほどおじさんが浮かべていた表情とよく似ていた。
「瞬君?」
「……行こうか」
私の背中を押すようにして瞬君は店の外に出る。そして。
「今までお世話になりました。……本当に申し訳ありませんでした」
「いや、こちらこそありがとう。戻ってきてくれることを願ってるよ」
おじさんの言葉に応えることなく、瞬君は頭を下げると私の方を向いた。
「行こうか」
「え、ね、ねえ。今のどういうこと? ねえ、瞬君! ねえってば!」
一人で歩いて行く瞬君を小走りで追いかけると腕を掴む。
振り返った瞬君は、悲しそうな顔で微笑んだ。
「え、何時から来てたの?」
「うちの学校、今日テストで終わるのが早かったんだ」
「こんな時期にテスト?」
「中間テスト。お前のところないの?」
「うち二学期制だからちょっと前に期末テストが終わったところだよ。瞬君のところは三学期制なんだね」
頷く瞬君にやっぱりと思う。夏休み前にもしかしたらそうかもって思ってたけれど、やっぱりそうだったんだ。
「二学期制かー、テスト少なくて羨ましい」
手を動かしながら瞬君は言う。
お昼過ぎから来ていたからか、ブレスレットはもうほとんど完成していた。
あとはチャームをつけるだけのようだった。
「どう? イメージと違ったりしない?」
「うん、私のイメージとピッタリ!」
これをつけている瞬君の姿を想像してにんまりしてしまう。
「ならよかった。んじゃ、ほい」
できあがったブレスレットを受け取る。銀色に光る星のついた少しチェーンが太めのブレスレットは、以前作った三日月のブレスレットとは違って男の人がつけていてもおかしくないデザインになっていた。
「ありがとう」
「別に。……喜んでくれるといいな」
「うん!」
受け取ったブレスレットを持って私は二階に上がる。
準備してきたラッピング用の袋に入れて、リボンをかけた。
へにゃっとなってしまたリボンを直しながら、急に不安になってくる。
「作ってもらったものをプレゼントするなんて、やっぱり変かな」
それに私なんかがデザインしたものをプレゼントしたって喜ばないかもしれない。
「ううん、そんなことない」
瞬君がそんな人じゃないことを私は知っている。きっと笑って受け取ってくれる。そうに決まってる。
「あれ? そういえば今日って瞬君バイトないんだよね? じゃあ、これ作ったらすぐに帰っちゃうかもしれないってこと?」
そんなことになったら大変だ。
明日も来るだろうから明日でもいいんだけど、でもできれば早めに渡したい。
それでもって、瞬君に笑顔になってほしい。
私は急いでラッピングしたブレスレットを鞄に入れると、階段を駆け下りた。
電気の消えた工房には人影がなく、慌ててお店に繋がるドアを開けた。
「美琴?」
「どうしたんだ?」
そこには二人で何かを話す瞬君とおじさんの姿があった。
瞬君がまだ帰ってなかったことにホッとして、ホッと息を吐いた。
「もう帰っちゃったかと思って」
「美琴を置いて帰らねえよ」
ふっと瞬君は笑う。
その笑顔を見て、私は自分の気持ちにようやく気づいた。
ああ。私、瞬君のことが好きだ、って。
「美琴? どうかしたか?」
「う、ううん。なんでもない」
気づいてしまった自分の感情に戸惑いながらも、でも、どこかストンと胸の奥に落ちるのを感じる。
ずっと気づかないふりをしていただけで、本当は知っていたのかもしれない。
だってこの感情は、こんなにもあたたかくてくすぐったくて心地いいんだから。
「ホント変だぞ? なんか落ちてるものでも食ったんじゃないのか?」
「そ、そんなことしないよ!」
「そうか?」
おかしそうに笑う瞬君の後ろで、どうしてかおじさんが顔をしかめているのが見えた。
「おじさん?」
「いや、なんでもない。美琴はもう帰るのか?」
手に持った鞄に視線を向けるとおじさんは尋ねる。
私はどうしよう、と瞬君の方をチラッと見た。
「ちょっと早いけど帰るか。それに俺、美琴に話したいことがあるから」
「話したい、こと?」
心臓が跳ねるように高鳴る。
もしかして、と思った。
もしかして瞬君も、私と同じ気持ちで、それで――。
でも、瞬君の顔を見た瞬間、そんな淡い期待は打ち砕かれた。
瞬君は悲しそうな、それでいて辛そうな表情を浮かべていた。
それは先ほどおじさんが浮かべていた表情とよく似ていた。
「瞬君?」
「……行こうか」
私の背中を押すようにして瞬君は店の外に出る。そして。
「今までお世話になりました。……本当に申し訳ありませんでした」
「いや、こちらこそありがとう。戻ってきてくれることを願ってるよ」
おじさんの言葉に応えることなく、瞬君は頭を下げると私の方を向いた。
「行こうか」
「え、ね、ねえ。今のどういうこと? ねえ、瞬君! ねえってば!」
一人で歩いて行く瞬君を小走りで追いかけると腕を掴む。
振り返った瞬君は、悲しそうな顔で微笑んだ。
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