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第三章 恋が叶うストラップ
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翌日、私はいつもより早く学校に向かった。
靴箱のところで待っていると、緊張した顔で小夜ちゃんがやってくるのが見えた。
「おはよう」
「っ……な、なんだ。美琴ちゃんか。おはよう」
「ね、ちょっといいかな」
「どうしたの?」
私は廊下の端っこまで小夜ちゃんの手を引く。小夜ちゃんは昇降口を気にしながらも、私に着いてきてくれた。
左右を見回して誰も見ていないことを確認すると、私はポケットに入れていたストラップを取り出した。
「これなんだけど」
「ストラップ? 凄く可愛いね! でも、これがどうしたの?」
「これね、私がデザインしたの」
「え?」
首をかしげる小夜ちゃんに私は照れくささで耳が熱くなるのを感じながらも、昨日のことを話した。
「昨日の小夜ちゃんの話を聞いて、どうしても作りたくなって。それで私のおじさんのお店アクセサリー屋さんなんだけど。あっ、ほら二丁目の『レインボー』ってお店なんだけど知ってるかな? そこで作ってもらったの」
「『レインボー』は知ってるけど……。え、作ったって、え? 美琴ちゃんが? ホントに? 凄い!」
「私がしたのはデザインだけで、実際に作ってくれたのはお店のバイトの人なんだけどね。で、これなんだけど……小夜ちゃんにもらってほしくて」
「私に?」
「うん。ダメかな?」
小夜ちゃんは不思議そうに首をかしげる。突然、これをあげるって言われてもそりゃ「え、なんで?」ってなるよね。
だから私は、昨日これを作りたいって思ったときの気持ちを、小夜ちゃんに伝えた。
「小夜ちゃんのおかげでこれはできたの。小夜ちゃんがね松原君への気持ちを教えてくれて、そんな小夜ちゃんにつけてほしいって思って作ったんだ。小夜ちゃんの話を聞かなかったらこれはできなかったの。だから受け取ってくれると嬉しい」
一気に喋ってちょっとだけ息が切れる。
小夜ちゃんに気持ちは伝わっただろうか。
いらないって言われたらどうしよう。
不安に思う私の向かいで、小夜ちゃんが嬉しそうに微笑んだ。
「ありがとう」
「じゃあ、もらってくれるの?」
「うん、美琴ちゃんがそんなふうに思ってくれて作ってくれたんだもん。とっても嬉しい。……ホントはね、あんなふうにお手紙を入れたけど、不安で仕方がなかったの。今日も松原君が来る前にあの手紙を下駄箱から取っちゃおうかなって思ったりもしたの」
だからこんなに早く登校したんだ。
私は小夜ちゃんがいつ来るかわからなかったからだいぶ早く来たけれど、実際この時間に学校にいるのは先生と、それから部活の朝練がある人ぐらいだ。
帰宅部の私や小夜ちゃんが来るには早い時間だった。
「でも、美琴ちゃんのこのストラップがあれば勇気が出せる気がする。私、ちゃんと松原君に気持ちを伝えてくるね」
「うん、応援してる」
「ありがとう」
はにかみながら小夜ちゃんはポケットから取り出したスマホに私が作ったストラップをつけた。
どうか小夜ちゃんの告白が上手くいきますように。
私は心の中でそう願った。
靴箱のところで待っていると、緊張した顔で小夜ちゃんがやってくるのが見えた。
「おはよう」
「っ……な、なんだ。美琴ちゃんか。おはよう」
「ね、ちょっといいかな」
「どうしたの?」
私は廊下の端っこまで小夜ちゃんの手を引く。小夜ちゃんは昇降口を気にしながらも、私に着いてきてくれた。
左右を見回して誰も見ていないことを確認すると、私はポケットに入れていたストラップを取り出した。
「これなんだけど」
「ストラップ? 凄く可愛いね! でも、これがどうしたの?」
「これね、私がデザインしたの」
「え?」
首をかしげる小夜ちゃんに私は照れくささで耳が熱くなるのを感じながらも、昨日のことを話した。
「昨日の小夜ちゃんの話を聞いて、どうしても作りたくなって。それで私のおじさんのお店アクセサリー屋さんなんだけど。あっ、ほら二丁目の『レインボー』ってお店なんだけど知ってるかな? そこで作ってもらったの」
「『レインボー』は知ってるけど……。え、作ったって、え? 美琴ちゃんが? ホントに? 凄い!」
「私がしたのはデザインだけで、実際に作ってくれたのはお店のバイトの人なんだけどね。で、これなんだけど……小夜ちゃんにもらってほしくて」
「私に?」
「うん。ダメかな?」
小夜ちゃんは不思議そうに首をかしげる。突然、これをあげるって言われてもそりゃ「え、なんで?」ってなるよね。
だから私は、昨日これを作りたいって思ったときの気持ちを、小夜ちゃんに伝えた。
「小夜ちゃんのおかげでこれはできたの。小夜ちゃんがね松原君への気持ちを教えてくれて、そんな小夜ちゃんにつけてほしいって思って作ったんだ。小夜ちゃんの話を聞かなかったらこれはできなかったの。だから受け取ってくれると嬉しい」
一気に喋ってちょっとだけ息が切れる。
小夜ちゃんに気持ちは伝わっただろうか。
いらないって言われたらどうしよう。
不安に思う私の向かいで、小夜ちゃんが嬉しそうに微笑んだ。
「ありがとう」
「じゃあ、もらってくれるの?」
「うん、美琴ちゃんがそんなふうに思ってくれて作ってくれたんだもん。とっても嬉しい。……ホントはね、あんなふうにお手紙を入れたけど、不安で仕方がなかったの。今日も松原君が来る前にあの手紙を下駄箱から取っちゃおうかなって思ったりもしたの」
だからこんなに早く登校したんだ。
私は小夜ちゃんがいつ来るかわからなかったからだいぶ早く来たけれど、実際この時間に学校にいるのは先生と、それから部活の朝練がある人ぐらいだ。
帰宅部の私や小夜ちゃんが来るには早い時間だった。
「でも、美琴ちゃんのこのストラップがあれば勇気が出せる気がする。私、ちゃんと松原君に気持ちを伝えてくるね」
「うん、応援してる」
「ありがとう」
はにかみながら小夜ちゃんはポケットから取り出したスマホに私が作ったストラップをつけた。
どうか小夜ちゃんの告白が上手くいきますように。
私は心の中でそう願った。
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