眠り姫は君と永遠の夢を見る

望月くらげ

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『眠り姫』に罹ってから、夢をよく見るようになった。通常、夢は浅い眠りのときに見るものらしいけれど、凪人の見る夢は深くて、そして懐かしい夢だった。
 その日も凪人は夢を見ていた。幼い頃の夢。凪人と詩月がまだ仲良く過ごしていた頃の夢を――。

 五時間目の授業が終わり、凪人は机の中に入れた教科書を全部ランドセルの中に押し込んだ。今日は水曜日で、週に一度の五時間授業の日。六時間の日とは違って遊ぶ時間が長く取れるのが嬉しかった。
 みんな同じことを思っているのか、帰りの会はいつもよりもスムーズに進んでいく。先生が少しでも長く喋ろうものなら「先生話が長いでーす」なんてお調子者の男子が言う。
 先生も今日ばかりは仕方ないと笑って「じゃあそろそろ終わるか」なんて言ってくれる。
「きりーつ、れい、さよーならー」
 日直の号令で、みんな教室から一目散に飛び出して行く。凪人もランドセルを背負い、水筒を首から提げると一番前の席でまだランドセルに教科書を入れていた詩月の元へと向かった。
「終わった?」
「うん、もう終わるよ」
「んじゃ帰ろう」
 家が同じ町内にある詩月とは、入学したときにお互いの母親が「一人で学校に行かせるのは心配だから」と一緒に行くように言って以来、五年間毎日一緒に登下校をしていた。
 別にもう一人でだって学校に行けるし、帰りも一緒に帰る必要なんてないことはわかっている。けれど、凪人が詩月と一緒に登下校したいから、何も言われないのをいいことに今もこうやって一緒に歩いていた。
「今日、昼休みに運動場でケイドロしてたらさ。ジャングルジムから飛び降りた奴がいて」
「男子ってホント危ないことするよね」
 凪人の話に詩月は呆れたように笑う。くだらない話ばかりだったけれど、詩月が笑ってくれるならそれでよかった。
「…………」
「詩月?」
 けれど今日は詩月の様子が何か変だった。どこか上の空というか、何かを考えているのか「んー」とか「やっぱり……」とか一人で唸っている。腹でも痛いのだろうか? それとも風邪を引いた? 心配になって、凪人は詩月に尋ねた。
「詩月? どうしたの?」
「え?」
「今日なんか様子変だよ。変なものでも食べた?」
「た、食べてないよ! そうじゃなくて、えっと」
 詩月はしばらくモゴモゴ言い続けたかと思うと突然、凪人の斜め前を指さした。
「あれ!」
「あれ?」
 指さす方向を視線で追いかける。そこには町内の掲示板があって、秋祭りのポスターが貼られていた。
「秋祭りかー。今日だっけ。詩月行くの? あ、それで早く帰りたくてソワソワしてたのか。ごめん、俺気付かなくて――」
「ち、違う」
「へ? 違うの?」
 きっとこれで当たりだと思ったのに、違うと言われてしまい首を傾げる。
「あ、えっと、秋祭りはあってるんだけど」
「あってるのかよ!」
 思わずツッコんでしまう。けれど凪人のツッコミをスルーすると、詩月は目を閉じ口を開いた。
「こ、これ! 一緒に行きたい!」
「え? 一緒にって俺と?」
「そう! 駄目、かな」
 不安そうに見上げてくる詩月に、凪人は全力で首を振った。
「駄目じゃない!」
「ホ、ホント?」
「ホント! 俺も詩月と行きたいって思ってた」
 凪人がそう言うと「調子いいんだから」と詩月は笑う。その頬が少しだけ赤く染まっているのに気付いて、凪人は心臓がうるさいほど鳴り響くのを感じる。
 詩月への気持ちに気付いたのは、一年前のことだった。
 初めはただの幼なじみとしか思ってなかった。一緒にいると楽しいし女子の中では一番仲がいい。けれど、別に詩月と一緒にいなくても他の友達と遊ぶし、女子とばっかり一緒にいても周りから冷やかされてしまう。
 だからほどほどの距離で一緒にいた。あの日までは。
「じゃあ次の特活の時に、一番好きな本を持ってきてください」
 担任の先生は、黒板に『ぼく・わたしの好きな本』と白いチョークで書いた。
「小説でも図鑑でも絵本でも何でもいいわよ」
「先生、漫画は?」
「漫画もいいわ。ただその漫画のどこが好きかちゃんと説明できることが条件ね。あと学校で読まないこと」
「読んじゃ駄目なのかー」と言う男子の残念そうな声に、教室のあちこちで笑い声が聞こえた。凪人も笑っていると、隣の席に座っていた詩月に肩をつつかれた。
「ねえ、凪人は何を持ってくるか決めた?」
「俺? うん、決めたよ」
 好きな本と言われて思い浮かんだのは一冊しかなかった。
「そっかぁ。私は何を持ってくるか悩んでて」
「そうなの?」
「最近買った星占いの本にするか、それともみんなが知ってるシリーズの一巻にするか。どっちがいいかなぁ」
 悩むように言う詩月だったけれど、凪人はその答えに首を傾げた。
「どっちって詩月が好き名を持って行けばいいんじゃないの? だって、先生もそう言ってたし」
「まあ、そうなんだけどね」
 歯切れ悪く、そして苦笑いを浮かべながら「男子にはわかんないよね」なんて言って、凪人から視線を逸らしてしまう。
 その言葉の意味も、どうして視線を逸らされたのかも、そのときの凪人には何一つとしてわからなかった。

 一週間が経った。その日は、先週言っていた特活の授業がある日で、前の日からウキウキしながらランドセルに入れておいた絵本と一緒に凪人は家を出た。
 待ち合わせ場所にしている交差点に向かうと、もうそこには詩月の姿があった。
「おはよ」
「おはよう」
 挨拶を交わすと学校へと向かう。そういえば、と思い、凪人は詩月に尋ねた。
「結局、何の本にしたの?」
「星占いにした」
「へえ、いいじゃん」
「最近流行ってるからちょうどいいかなって」
 ちょうどいい、という言葉が引っかかったけれど、それ以上何か言うとこの間のようなことになりそいうだったので凪人は口を噤んだ。
 学校に着き自分の席に座ると、ランドセルの中身を机の上に置いた。一番上には、好きな本として持ってきた絵本を載せて。すると――。
「え、凪人。お前、絵本なんか持ってきたのか?」
 からかうような声が聞こえたかと思うと、クラスメイトの太一が凪人の絵本を取り上げた。
「何だよ、返せよ」
 取り返そうとするけれど、太一は隣の席の椅子に上がると凪人から届かないように絵本を高く掲げた。
「お前、絵本なんて幼稚園児の読むもんだろ? それとも凪人ちゃんはまだ幼稚園児さんなんですかー? ここは小学校だから、間違えて入ってきちゃ駄目ですよお」
 ケラケラとおかしそうに笑う太一の言葉に、顔が熱くなるのを感じる。それと同時に、詩月の言っていた言葉の意味がようやくわかった気がした。
 なんて言い返したらいいかわからなくて、凪人は下を向いたまま黙り込んでしまう。凪人が何も言わないのをいいことに、太一は他の男子も巻き込んで凪人を冷やかそうとした。
 ――そのとき。
「ばっかみたい」
「は?」
「なんだよ、詩月。お前、凪人の味方なのかよ」
「あ、もしかしなくてもお前も絵本持ってきたんだな?」
 顔を上げると、詩月が怒ったような表情で太一を睨みつけていた。
「だったら何? だとしてあんたたちに何か迷惑かけた? だいたい、先生は小説でも絵本でもって言ったんだから絵本を持ってきたっていいじゃない」
「そ、そうだとしても! 絵本がガキの読むものだってことは変わらねえだろ!」
 詩月の勢いに押されながらも、太一は言い返す。そんな太一に詩月はわざとらしく盛大にため息を吐いた。
「だから馬鹿みたいだって言ってるの。じゃあ、何? あんたには子どもの頃からずっと好きなものってないの?」
「は? ないし。ガキのものは全部卒業したからな!」
「へえ?」
 太一の言葉に詩月は乾いた笑みを浮かべると、少し声のトーンを落とした。
「じゃあ、あんたが毎日抱きしめて寝てるウサギのぬいぐるみは何? あれがないと寝られなくて、洗濯するのも駄目だってお母さんに言って困らせてるって聞いたよ」
「お、ば、な……!」
 お前、馬鹿、なんでそれを。そう言いたかったのかもしれないけれど、太一の言葉は声になってすらいなかった。幸い、詩月が声のボリュームを下げたおかげで、太一のウサギのぬいぐるみの話は、詩月と太一以外では凪人にしか聞こえていないようだった。
「なんで知ってるかって? 太一のお母さんとうちのお母さん。同じところで働いてるから仲いいんだって知らなかった? 他にも色々聞いたけどどうする? たとえば、お風呂に――」
「詩月ストップ」
 凪人は慌てて詩月の口を両手で押さえた。これ以上言えば今にも零れそうなほど瞳に涙を溜めている太一が泣いてしまいそうだったし、それに凪人のために怒ってくれたとはいえ、やりすぎだった。
「……わかった」
 不服そうな声を出したあと、詩月は太一に向かって手を差し出した。
「な、なんだよ」
「凪人の絵本、返して」
「か、返せばいいんだろ! なんだよ、うぜーな! そんなんだから生意気ブスって影で言われるんだよ」
「なっ……!」
 太一が吐き捨てるように言った言葉に詩月が何も言えないでいる隙に椅子から降りると、太一は「ほらよ」と言って絵本を差し出した。凪人は絵本を受け取るとホッとして、思わずそれを抱きしめた。
「へっ、大げさなんだよ」
「……大げさかもしれないけど、これ……俺が小さい頃におばあちゃんが買ってくれたものだから。だから、とても大事なんだ」
「え、凪人くん可哀想……」
「太一ってば最低」
 凪人の言葉に、教室中の女子たちの冷たい視線が太一を襲う。女子だけではない。それまで笑っていたはずの男子も「ちょっとやりすぎだよな」と手のひらを返し始めた。
 その空気に気付いたのか、太一も気まずそうにそっぽを向くと「悪かったよ」と言って自分の席へと戻っていった。
 返してもらった絵本を机の中に入れていると、隣に立ったままだった詩月がポツリと言った。
「おばあちゃん、まだ生きてるじゃん」
「別に、死んだとは言ってないでしょ」
「まあ、それはそうだけど」
 本当は絵本が返ってきたらそれでよかった。別に馬鹿にされたってなんだってあの絵本が一番好きな本であることに変わりはなかったから。
 けれど、太一が詩月に言った言葉がどうしても許せなかった。自分でもどうしてかはわからないけれど、あんなふうに詩月のことを傷つけられたまま何もなかったようにはいられなかった。
 
 その日から、凪人にとって詩月の存在が今までとは違うものになっていった。気付いたらずっと視線で追ってしまったし、詩月を傷つけられると腹が立った。詩月が悲しめば凪人も悲しくなり、詩月が笑えば嬉しく思う。
 いつのまにか、自分が詩月の一番じゃないと嫌だと、そう思うようになっていた。
 詩月も同じ気持ちだったらいいなと、ずっと思って来たのだけれど――。
「じゃ、じゃああとで神社の階段の下で待ち合わせで」
「わかった」
 こうやって祭りに誘ってくれるということは、詩月も同じ気持ちだと思っていいのかも、しれない。
 高学年になって、クラスには女子と付き合っている男子も何人かいる。今日の祭りで詩月に告白すれば――。そんな期待に胸を膨らませながら、凪人は自宅への道のりを足取り軽く歩いた。

 待ち合わせ時間の十分前。洗面所の鏡に映る自分の姿を見る。両手を水で濡らして、髪の毛を撫でつけた。本当は父親の使っているワックスを使いたかったけれど、高い位置に置かれているせいで、凪人の身長では届かなかった。
「ま、まあこんなもん、だよな」
 学校に着て行っていた半袖のTシャツの上に薄長袖のパーカーを羽織る。最近買ってもらったスポーツブランドのパーカーは、凪人の今一番お気に入りの服だった。
 分針を睨みつけるように見つめるけれど、なかなか動くことはない。少し早いけれど、そろそろ行ってしまおうか。
「あー楽しみだなー」
 楽しみ過ぎて、つい口に出してしまう。あまりにも浮かれた自分の声に恥ずかしくなってコホンと一つ咳払いをした。
 待ち合わせ時間の五分前、そろそろいいだろうと凪人は靴を履く。ここから神社までは自転車で三分だから、今から出ればちょうどいい時間に着くはずだ。
「よし、行くぞ!」
 そう思って立ち上がり、玄関のドアに向かって駆け出――そうとした凪人は、知らぬ間に踏んでいた靴紐のせいで、玄関のタイルに顔を打ち付けるようにして顔面から転けた。

「ん……鼻、いた……」
 ふと目覚めると、鼻のあまりの痛みに一瞬、何が起きたかわからなかった。辺りを見回し、時計が目に入った。時計は知らぬ間に十九時を指していた。
 時計の針が示すことの意味がわかった瞬間、凪人の頭から血の気が引いた。
「し、詩月!」
 強く打ち付けたせいか未だに頭がクラクラするけれど、そんなことどうでもよかった。今もなお待っているとしたら、凪人は詩月を二時間以上も待たせていることになる。
「詩月……」
 今度こそ、きちんと靴を履き、玄関を飛び出す。
 自転車に乗ろうとする凪人の耳に、どこかから救急車の音が聞こえてきた。その救急車に詩月が乗っていたことを凪人が知るのは、その日の夜中のことだった――。

 夢から目覚めるけれど、今もまだ救急車の音が耳にこびりついて離れない。
 晴らすことのできない後悔を抱えたまま、今日もまた凪人は詩月の夢を見る。どれだけ後悔しても、もう二度と戻ることのできない、過去の夢を。
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