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第六章
6-2
しおりを挟む翌朝、学校に行くために家を出る。すると、玄関の塀の向こうに見覚えのある頭が見えた。
「……おはよ」
「おう」
ぶっきらぼうに言うけれど、その耳がほんのり赤くなっていることに気づいてちょっとだけ笑ってしまった。
「なんだよ」
「なんでもない」
こんな何気ないやりとりさえ嬉しくて仕方がない。
「……なあ」
「え?」
「手、繋いでもいいか?」
「え、あ……うん」
差し出された手をそっと握りしめる。
どうしよう。凄く、すっごく照れくさい。なのに、どうしようもないほど、嬉しい。
今度こそ、本当の本当に両思いになれたんだ、と改めて実感する。
でも……。
「どうした?」
「え?」
「今一瞬、不安そうな表情しただろ」
「あ……」
私の些細な表情の変化にも蒼くんはきちんと気づいてくれた。
「多分、色々言われること思うけど、俺が守るから」
「……ううん、守らなくていいよ」
「え?」
「私も、ちゃんと顔を上げていろいろな声に向き合うから。だから守らなくていいの。それよりこうやって手を繋いで隣を歩いていて欲しい」
繋いだ手にぎゅっと力を込める。
きっと傷つくこともあると思う。それでも、こうやって手を繋いでいたら、きっと立ち向かえる気がするから。
そんな私を蒼くんは小さく笑った。
「あんた変わったな」
「そう、かな」
「そうだよ。すげえ変わった。……そういうところ好きだよ」
「え? い、今……」
ふんっと顔を背けた蒼くんの耳も頬も赤くなっているのを見て、私は笑ってしまう。
それと同時に、先輩が言っていたことを思いだした。
「あ、あのね。聞きたいことがあるんだけど、聞いてもいい?」
「何?」
「……ハンカチ、貸してくれたのって蒼くんなの?」
「な、お、お前、なんでそれ知ってんだよ」
真っ赤になった顔に、蒼くんが何も言わなくても答えがわかってしまった。
だから、つまり。もしかしなくても。
「先輩が言ってた、桜の下で泣いていた女の子って……」
「は? あいつそんなことまで喋ったのか⁉ マジふざけんな。 あんたも何笑ってんだよ」
あまりの可愛い反応につい笑ってしまう。
いつかその日の話を、蒼くんから聞ける日が来るかな。
うん、二人ならきっと大丈夫。
「蒼くん、あのね――」
「おはよ」
「ひゃっ」
「は?」
突然、私の肩に乗せられた手に思わず変な声を上げてしまう。振り返ればそこには樹くんの姿があった。
「い、樹くん」
「お前、何しに来たんだよ」
「ん? だってさ、せっかく加納さんへの嫌がらせが落ち着いたのに、ここで僕と別れてまた蒼に戻りました、なんて言ったらまた何されるかわからないでしょ? だったらしばらくは僕と付き合ってるってことにしておいた方がいいと思ってさ」
「まあ、たしかに……って、ふざけんなよ、んなこと必要ねえよ」
一体何が起きているのか私には理解が追いつかない。混乱する私の耳元で、樹くんはクスッと笑った。
「僕さ、加納さんのこと、諦めないからね」
「えっ……」
そんなこと言われると思ってもみなかったので、思わずドキッとしてしまう。
私のそんな態度に目敏く気づくと、蒼くんは怒ったように声を荒らげた。
「お前、ふざけんなよ!」
そう言ったかと思うと蒼くんは私の身体を抱き寄せた。
「こいつはこれの物だ」
「でもまだ対外的には僕の彼女だよ?」
「うるせえ!」
口げんかをする二人に挟まれた状態になってしまう。前までならこんなとき、どうすればいいのか悩んで動けなかった。でも。
「蒼くん」
「は?」
「……行こ?」
背伸びして耳元で囁くと、蒼くんは一瞬キョトンとした表情を浮かべたあとニッと笑った。
「行くか」
私の手を握りしめて、引っ張るようにしてその場を駆け出した。
後ろから樹くんの残念そうな声が聞こえてきたけれど、もう気にしない。
誰かのために自分の気持ちを偽るのじゃなくて、これからは私自身のためにホントの気持ちを大事にしたい。
私を変えてくれた、蒼くんと一緒に。
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きゅんとしながら読んでました。
樹くんの包容力と、蒼くんの不器用な優しさ!
あと、学校特有の空気感がリアルでした。
とにかく可愛いお話で、幅広い年齢が読めそうです(^^)
ずっと可愛いと思いながら読んでいました!とても素敵な作品でした!
わー!可愛いと思っていただけて嬉しいです!
お読みくださりありがとうございました!
すごくきゅんきゅんしながら読み進められました!
読みやすい文章で一気に読んじゃいましたし、個人的に蒼くんがすごく格好良くて、ときめきがとまりませんでした!!
お読みくださりありがとうございます!
蒼がカッコよかったと言っていただけて嬉しいですー!
最後まで楽しんでいただけたようでよかったです!ありがとうございました!