Real~Beginning of the unreal〜

美味いもん食いてぇ

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3章

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 大学の外壁から少し離れた場所、戦闘員の四人組が報告を受け見回りをしていた。

「誰もいねぇじゃんか」

「あのおっさんパチこいたんじゃね?」

「有り得るね。あの人いちいちウザイってよく聞くもん」

「んね。いい噂聞かない」

 最近よく話題に挙がる、高年の面々。

 先程校舎にて外を見ていたという彼等から、西側の外壁にガラの悪い連中がいたとの報告を受けたのだ。

 そういう場合、新には危険だから自分に報告してくれと言われていたが、正直日常茶飯事。

 加えて慣れと魔法を使えるという自信から、報告を受けた男子二人は気分転換がてら自分達で見回りに行くと決めたのだ。

「ねぇ、いないしもう帰ろ?私こっち側嫌いなのよ」

「あたしもー。あいつら下品だからヤダ」

「はっ。あんな人にちょっかいかけるしか能がない奴等、恐るるに足りないぜ」

「俺の土魔法で埋めてやるよ」

 男子二人の過剰な自信に、女子二人は溜息を吐く。休んでいるところを誘われたので何となくついてきたが、そろそろアピールがうざい。

「いーよなー魔法」

「お前も使えんだろ」

「水滴しか出ねぇよ」

「ドンマイ」

 会話をしながらも彼は辺りを警戒する。

(……モンスター一匹出てこねぇな。
 チっ、せっかく女連れてきたのに、いいとこ無しじゃねぇかよ)

 彼は心の内で愚痴を吐くも、しょうがない、と三人をつれて丘を渡り林に背を向ける。

 ……その時、

「言いたい放題言ってくれるねぇ」

「「「「っ」」」」

 トレントの影から五人の男が現れた。全員マスクをしており、素顔が分からない。

「……あんた等か、ここいらうろちょろしてるって奴は」

「ちょっと、五人もいるじゃないっ。本当に大丈夫なの?(ボソッ)」

「任せろ」

 不安気に鉄パイプを構える女子に、彼は余裕だと言ってのける。

「ヒュ~カッコイイね」

「ギャハハハハっ、任せろ、だってよ」

「女の前だからってカッコつけてんじゃねぇよグぇっ」

 嘲笑するマスクの一人が、突如盛り上がった土に腹を殴られ水に落ちた。

「テメェっ!」

「喚くな、油断してたそいつが悪い」

「う、うす」

 仲間がやられ叫ぶマスク連中を、ピエロマスクが黙らせる。

(あれがリーダーか)

 此方が魔法を使ってもビビらないところを見るに、向こうも魔法を使える可能性が高い。

 少々心配だが、自分は今までこの力を鍛えてきた。負けるはずがない。そう彼は考えた。

「あんたも魔法使えるんだろ?お互い怪我したくないだろうし、さっさと帰ってくんない?」

「そうしたいのも山々なんだがよぅ、あんちゃん挨拶もなしにうちのもん傷つけちゃってんのよ」

 じりじりと詰め寄ってくるマスク連中に、彼は魔法を発動した。





 ――「おいおいおいおい、さっきの威勢はどこいったんだ?」

「ごべ、ごべんなざゴボゴボッ」

 彼の攻撃を水魔法で迎撃したピエロは、その勝敗の呆気なさに頭を掻いた。

 女子二人はマスクに組み伏せられ何もできなくなり、もう一人の男子はマスクに馬乗りされ殴られ続けている。

 そして自信に満ち溢れていた当の彼は、首から上を水で覆われ吊るし上げられていた。

「離して!離しなさいよ!!」

「ひひひ、気が強い女は好きだぜぇ?」

「変なとこ触ってんじゃねぇよ!!クソ変態!!」

「お前は口悪ぃなぁ。顔は良いのに勿体ねぇ」

「触んな!どけっ!臭ぇんだよ!!」

「チッ、調子乗ってんじゃねぇぞオラァッ!!」

「イぅっ」

 女子の一人が頬に平手打ちを喰らい、目を見開く。

 今まで男性に手を上げられたことなどなかった彼女は、痛みと衝撃に一瞬何が起きたのか理解できなかった。

「口を開くな。黙ってろ」

「ひっ……」

 頬を張った乾いた衝撃音、
 隣で鳴り続ける拳が肉を叩く音。

 躊躇いのない暴力の恐怖に、女子二人の身体は動かなくなってしまった。

「おい、勝手に傷つけんじゃねよ」

 ピエロが部下を睨む。

「す、すいません。こいつ五月蠅くて」

「チっ、まぁいい。帰るぞ」

「こいつどうします?」

 立ち上がったマスクが、殴られ続け、顔が腫れ上がった男子を踏みつける。

「これもそれも、そこら辺に捨てとけ。モンスターが片付けてくれる」

「うっす」

 ピエロは酸欠で白目を剥く彼を放り投げ、用は済んだと立ち去ろうとする。

 しかしその背中を、呻く様な声が引っ張った。

「待っで、待っでくだざい。たずけてくだざい。お願いじまず。お願いじまず」

「うるせぇッ」

「げぶっ」

 顔面をボコボコにされ血を吐くその男子は、しかし生を諦めず許しを請う。

 そんな惨めな姿を見たピエロは、にやりと笑い彼に歩み寄った。

「死にたくないか?」

「グふっ、はぃ」

「何でもやるか?」

「はぃい」

「そうかそうか、んじゃあいつら犯せ」

 その言葉に固まるのは女子二人。
 理解するのに数秒、自分達に向けられた悪意に、全身の鳥肌が立った。

「なんで、なんでそんなこと!」

「何でも何も、お前等はその為に連れてこられたんだよ。最近使ってた女が壊れちまったから、ちょうど良かったぜ」

 彼女達にはピエロの言っている意味が分からない。

「まぁ分かんねぇよな。いいぜ答え合わせだ。おーい出てこいお前等」

 ピエロが木々に向かって手を振ると、なんとそこから出てきたのは、彼等四人に不審者の報告をした、あの高年達であった。

 予想外の人物の登場に、彼女達は目を見開く。

「ひでぇよなぁ、あいつ等自分達が特区から出たいが為に、お前等を売ったんだぜ?
 人間は怖いねぇ、自分の為なら平気で他人を裏切るんだから!あははははは」

 爆笑するマスク達と、目を逸らす高年共。

 彼女達は絶望と怒りの中、自分達に近づく影に気付く。

「や、やめて、来ないで!」

「ごべん、ごめん、ごめんっ、こうずるじかないんだっ」

「嫌だ!離して!嫌だぁ!」

 両手を押さえつけられ、強引に服を剥がれる彼女。

 先は口汚く反抗していたもう一人の彼女も、遅かれ早かれ自分に訪れる光景に、涙を流し放心してしまっていた。

 そんな悍ましい光景から目を逸らしながら、高年はピエロに話しかける。

「……本当にここから出してくれるんだろうな?」

「勿論。俺達はここ結構気に入ってるけど、出れるなら出たいからね」

 ピエロは心の中で笑った。

 高年達の、痛ましいものを見るその表情を。
 自分達が陥れといて何を悲しんでいるのか、と。

 ピエロはここら一帯の半グレを纏める元ヤクザである。

 今日この場所に来た本当の目的は、最近自分達の縄張りにちょっかいかけてくる人間を彼自ら殺そうと考えたからだ。

 新含めた代表者四人は彼でも勝てるか分からない。
 だから適当に大学内の人間を使って炙り出そうと考えていたのだが、そんなところにバカな高年達が話を持ってきた。

 大学内に入らず女も手に入るし、四人に恐怖を与えることもできる。正に一石二鳥。

 ピエロは暴れる女の服を泣きながら破る男を目に入れ、再度爆笑した。


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