Real~Beginning of the unreal〜

美味いもん食いてぇ

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3章

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 教室を後にした二人は、リュックと洗濯機を回収し、周辺の全景を眺める為屋上の扉を開いた。

 朝から色々な事があって疲れた身体を伸ばす。

 仄かに潮の香りがする空気を肺いっぱいに溜め、思いっきり吐き出した。

「うまい!」

「うまい!」

 排気ガスから解放された大気イオンは、身体に纏わりつくいらない物から東条を解放してくれる。

「ふぅ~。さて、何処行く」

「東京タワーー」

 遠くに聳える赤い塔を、ノエルがビシっ、と指さす。

「距離は……三㎞くらいか。だらだら歩いても余裕だな」

 スマホを弄る東条は、ついでに近くに良いホテルが無いか検索をかけた。

 流石首都、高級ホテルがそこら中にある。全て無人だが。

「おし、ホテルはザ・プリンスパークタワーだ。俺らに相応しい」

「うしゃ」

 目的地も決まり、準備体操の屈伸をしていた。その時、

「お、まだ行ってなかったね」

「?馬場さん、どうしたんすか」

 屋上のドアを押して馬場が姿を現した。

「何、一つ依頼をしようと思ってね」

「……何です?」

「明日また顔を出すんだろ?」

「はい」

 そう言う東条に、一枚の丸められた地図が投げ渡される。

「これは?」

「ここ近辺で、強力なモンスターがいて私達が近づけなかった場所が書いてある。
 今日その付近を通るなら、近くの食料を持ってきてほしいんだよ」

 地図を開いてみれば、所々にモンスターの絵が描いてある。これから向かおうとしていた東京タワーまでの道中にも、二匹。

「それで、俺達は何を得られるんですか?」

 その言葉を聞いた馬場は色っぽく笑い、東条の前で腰を折り、胸元を指で引っ張った。

「私の体を好きにしていいよ」

「ぐぅっ!!」

「おい……」

 前のめりになる東条に、ノエルがジト目になる。

 似た様な前例がつい最近あった。この先の結果など目に見えている。

 しかし彼の次の一言は、意外にもノエルの予想に反したものであった。

「ぅう……魅力的な条件だけど、断らせてもらいますぅ。くっ」

「あら」

 血涙を流し、抗い難い自身の欲求を精神で抑え付ける。
 その姿を見た馬場も、当てが外れたか、と一歩引いた。

「……俺は好きになった女と、あと今は、そーゆー事を商売にしてる女と以外寝ないって、決めてるんです。だから」

「そうかい。いいと思うよ、線引きは大事だ。……でも困ったね。これ以外私が出せるもんなんてないよ」

 どうしたものかと考えている馬場の一部分を、東条の目が射抜いた。

「揉ませて下さい」

「へ?」

「揉みしだかせて下さい」

「……これかい?」

 自分の胸を指さす馬場に、彼が頷く。

「ハハハっ、そんなに良い物持ってないけど、そんなんでいいなら全然構わないよ」

「感謝」

「てか胸を揉むのはありなのね」

「セーフです」

 よく分からない線引きに爆笑する馬場に、結局こうなるか、と呆れるノエル。何故か恭しく膝立ちする東条。

「ノエルは手伝わない」

「何故だ。揉みたくはないのか?」

「まったく」

「はぁ、食わず嫌いは良くないな。大人の女性を知っておくのも、一つの経験だと思うんだ。冒険に、深いも浅いもないだろう?」

「何言ってんだいあんたは」

 綺麗な顔で意味の分からない理詰めをする東条に、馬場は突っ込み、当のノエルは顎に手を当て考える。

(確かにノエルは大人の胸を知らない。知らないで否定するのはナンセンス。もしかしたら、まさがあれだけ執着する理由が分かるかもしれない……)

 彼女は冒険や経験といった言葉に弱かった。

「……分かった。ノエルも引き受ける」

「えぇ……」

「それでこそ俺の相棒だ」

 斯くして契約は成ったのだった。

 立ち上がった東条はノエルを背負い、苦笑する馬場に振り返った。

「何で馬場さんそんな体張るんすか?子供達の食事は、何だかんだ足りてるでしょ?」

「別に体一つ、安くはないけど減るもんじゃないしね。それに、今回は子供達ってより新の為だね」

 彼女は煙草に火をつけ、空に煙を撒いた。

「あいつは人の事を考えすぎる。多分今回カオナシがいなくなったことで、数週間は塞ぎ込むだろうね。
 だから明日貰う食料は、カオナシとノエルが自発的に持ってきた物にする。そうすりゃあいつも幾分かマシになんだろ」

「なるほど」

「言っても私等の頭だからね。潰れてもらっちゃ困るんだよ」

 能力、人格は優秀だが、性格に少しの癖がある。

 それが美徳に感じるか、欠点に感じるかは、馬場と東条が違う様に人それぞれなのだろう。

 東条はノエルを背負い直し、今度こそ脚に力を込めた。

「それじゃ馬場さん、また明日」

「ああ。……ただ、
 私はあんたになら抱かれてもいいって思ったから、この提案をしたんだぜ?」

 その言葉を聞き東条の口角が上がる、と同時に漆黒が脚を包み、助走。

 隣の崩れた建物に飛び移った瞬間、約束された勝利のおっぱいの力が、瓦礫を粉々にし大跳躍を果たした。


「ひぃやっほぉぉぉぉーー!!」


 木霊するどこまでも純粋に欲に塗れた雄叫びが、大学中に響くのであった。
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