Real~Beginning of the unreal〜

美味いもん食いてぇ

文字の大きさ
上 下
132 / 218
3巻~友との繋がり~ 1章

7

しおりを挟む
 
「……えっぐ……」

 凄惨な現場を目の当たりにした東条は、肉を食うのを止め、此方に歩いてくる少女に戦慄する。

「おまた」

「お、おう。お疲れさん」

「あーっ、先に食べてる!」

「いや、これはあれだ、映画にコーラとポップコーンがないとダメな感じの、あれだ。ノエルの姿がカッコよすぎてつい、な?」

 焦り気味に弁明する東条の視界の端では、常に一凛の大きな薔薇が存在を主張している。

「むー。許す」

「あざす」

 優しい少女で本当に良かった。……本当に。



 ――「うめぇうめぇ」

「うみゃいうみゃい」

 持ってきた塩を振り掛け、パリパリの皮と程良くしまった肉に舌鼓を打つ。
 骨を持ってかぶりつき、捨ててはもぎ取りかぶりつく。口の周りを汚しながら手掴みで噛み千切るのが、骨付き肉の一番おいしい食べ方である。

「そういやあの技何よ?」

「んむんむ、ンぐ、必殺技」

 しっかりと呑み込んだ後、油べとべとの手でピースを作る。

「かっこいいだしょ」

「かっこいいだわ。いつの間に?」

「一日一個作ってた」

「めっちゃあるじゃん」

 必殺技とはそんなに簡単に作れるものなのだろうか……。疑問は尽きないが、東条もそのロマンには大いに共感できる。だからこそ、

「いいな~。俺も考えたことあるけどよぉ、派手な技がねぇんだよぉ」

「まさのパンチは充分派手」

「華がねぇ」

「確かに」

 自分の技に名前をつけるとなると、『ぶっ飛ばし』とか『ぶん殴り』になってしまう。それではあまりにダサい、ダサすぎる。なのにノエルときたら、

「『ロゼ』ってなんだよ~めっちゃカッコいいじゃ~ん」

「うぇへへ」

 ゴロゴロと転がりバタつく東条に、頬を緩ませ照れるノエル。

「他にどんなのあんのよ」

「秘密~」

 血が滴る一凛の薔薇の横で、肉を片手に談笑する二人であった。


しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

処理中です...