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3巻~友との繋がり~ 1章
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しおりを挟む「ノエルはめちゃかわダンスへびー♪
ほらこれみて尻尾をふりふりー♪
スーパーへびーはパンチもすごい♪
顔面パンチそれめちゃかわパンチ♪
邪魔する奴は皆殺し♪」
「どんな歌だよ……」
穏やかな陽光が枝葉を抜け、薄明りの中に温かな穴を作る。
子気味いい歌詞は風と共に木々の間を吹き抜け、それを追う呆れた足音が地を踏みしめる。
不可思議なダンスを踊る一人の少女を、天然のスポットライトが照らしていた。
東京ドームを出た二人は、現在皇居を目指し南下中。
目的は単純、何か面白い現代兵器が落ちているかもしれないから。
加えて、皇居の近くには主要な建物が多く存在している。彼等が次に訪れたい場所も、その近くにあるのだ。
――歩いて三十分ほど。彼等は予定通り目的地に到着した。
「ここか?」
「でか」
東条は、別の場所に来てしまったか?と現在地を確認するが、やはり合っている。
彼が混乱したのもそのはず。目の前に現れたのは、本来あるはずの堀ではなく、十五mを超す木々の壁であった。
マイホーム程の大きさはないが、他のトレントよりも明らかに血を啜っている個体が、見る限り堀であった場所にズラリと並んでいる。
「殺したモンスターでも捨ててたのか?」
「かも」
一朝一夕で育つデカさではない。経験則から出した推測ではあるが、不正解。
その実は、大量のC4で爆殺されたモンスターの肉片によって、一夜にして出来上がった塀である。
このトレントの成長速度だけで、その日どれだけのモンスターがこの場所を襲ったのかが窺い知れる。
……と言っても、彼等には大した問題でもない。
「んじゃ行くか」
身体強化を施し、脚に力を込める。
「おんぶ」
「あ?」
そこで繰り出される、ノエルのワガママ。
「っどくせぇなっ」
「わー」
いちいち付き合ってやるものか。東条は彼女の背負っているリュックを引っ掴み、そのまま樹上に跳躍した。
枝を経由し、頂上に手を掛ける。
眼下を眺めるも、予想とは少々違う景色に目を丸くした。
「あんま変わってなくね?」
「(バタバタ)ぷはっ」
大規模な戦闘の結果、皇居内はジャングル化しているものだと思っていたのだが……。
元から緑が多かったせいか、変化が分かりづらい。
「栄養全部この子達に集まってる」
「あぁ、なるほどね」
幹に手を添えるノエルに言われ、納得する。
思い返せば、マイホームも他のトレントを呑み込んで成長していた。あれが十五mを越える頃には、周りのトレントは移動することも大きくなることもなくなっていた。
見えない場所で支配が完了した証拠だったのだろう。
トレントいう種族は、同族すら利用する恐ろしい種族だという事が分かった。
そして中にいるモンスターだが、
「ちょっとだけ強ぇな」
「誤差」
数は少ないが、全体的に外にいる個体より魔力量が多い。
デカいトレントのせいで外に出られないという状況下で、モンスター同士が殺し合った結果なのだろう。
要するに、この中では蟲毒が行われている。
そこに加わるなど、普通考えれば自殺以外の何物でもないが、
しかし、
「よっ」
「わー」
普通とは程遠い二つの劇毒が今、血染めの大地に降り立った。
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