上 下
120 / 218
終章 上には上がいる

5

しおりを挟む
――ノエルがワクワクとコースターに座る中、東条は操作室にて、訳の分からないボタン達と睨めっこをしていた。

「まぁ、死ぬこたねぇだろ」

 幾ら考えても分からないと判断し、適当にボタンを押しまくる。
 すると、外でコースターが稼働する音が聞こえた。

「まさーーっ、動いたー!速くーー」

「へいへい、っとッ」

 すぐに飛び出し、足を武装、跳躍。

 上昇中のコースターに飛び乗り、ノエルの横に着席。洗濯機を後ろに座らせた

「わくわく」

「安全バーちゃんと下ろしとけよ」

「安全バー?」

「この上の奴を、こう……あれ?」

 なぜだろう。搭乗者の命を繋いでくれるはずのそれは、ピクリとも動こうとしない。

 上昇し続ける二人の目前には、既に頂上が迫っている。

「ちょ、マジで、下がっ」

 バキィッ

「……」
「……」

 東条の手元に残る、千切れた命綱。

 ……顔を見合わせ、

 瞬間

「うぉおおおおおおお!」
「ぁははははははは!」

 急降下と同時に全身が持ち上がり、腕二本で身体をたなびかせる。

「やっべ吐きそう」
「あはははははっ!」

 爆笑するノエルの隣で、青い顔をする東条。

 そもそも彼は絶叫系が得意ではないのだ。
 色々強くなったから大丈夫と思っていたようだが、別にそんなことは無かったらしい。

 強風の中無理矢理腕を引き、本来の態勢に戻る。

「きもちわる」

 あと少しでゴールだ。
 酷い体験をしたが、新しい発見ができたから良しとしよう、と自分に言い聞かせた所で、

「……は?」

 コースターがゴールを通過。

 二周目に突入した。

「きゃーー!あはははっ」

 楽しむノエルに反して、東条は絶望する。
 十中八九自分がボタンを押しまくったせいだろう。

(いっそ飛び降りるか?)という思考が過る中、
 気付く。

「……なんか、加速してね?」

 見るからに速くなっていくコースターに青ざめ、手すりにしがみつく。

 二周半。


 最後のカーブ。


 速度は一週目のほぼ二倍。


「……嫌な予感がする」

 そんな彼の予感は的中。

 限界速度に到達したコースターは線路を突き抜け、正にジェットの如く空を舞った。

「ギャアああああッ!」
「キャアははははははっ」

 木霊する二つの叫び声は、真っ白なドームの天井をぶち抜き、盛大に土煙を上げるのだった。




 §




 近くから聞こえる、楽し気な絶叫。
 男は眉間に皺をよせ、奴らがそこにいることを確信する。

 自分を貶めておいて、当の本人は遊園地を満喫している。腹立たしいことこの上ない。

「……報いを受けさせてやる」

 一言呟くと。快人はその方角に向けて歩を進めた。




 §
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活

XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

処理中です...