Real~Beginning of the unreal〜

美味いもん食いてぇ

文字の大きさ
上 下
109 / 218
3章 旅立ち

11話

しおりを挟む
 §




「「「――ッ!?」」」

「な、なんだ!?」

 警戒に警戒を重ね目的地を目指していた四人の男女。

 何かの破裂音の直後、民家をぶち抜いてきた、瓦礫に埋もれるそれに驚愕する。

「……死、んでる?」

 見たことのないモンスターの首なし死体は、当然かなピクリとも動かない。

「い、一旦隠れましょうっ。音に集まってくるかもしれません」

 中年の指示に従い、四人は恐怖に固まった筋肉を叱咤して近くの民家に息を潜めた。



 ――暫く外の様子を窺っていると、複数の足音が聞こえてきた。

 さっ、と窓の下にしゃがみ、近づいてくる音をやり過ごすべく息を殺し耳を澄ます。


 心臓の音がうるさく響き、口の中が乾いていく。

 死への覚悟など、そうそう出来るものではない。

 今まで生き残って来たからと言って、今日死ぬかも分からない。
 恐怖と懇願に、震える拳を握りしめた彼等は、

 徐々に響いてくる話声に目を見合わせた。




 §




 ――「……できたか?」

「あとちょい」

 東条の背中でパソコンを弄るノエルは、先程思いついた案をプログラミングに書き込んでいく。

 というのも、

「バトルシーンだけ有料化するっつっても、俺ら金保存する場所なくね?」

「ダイジョブ。ポイント化して後で換金できるようにする」

「はー。そんなことも出来んのか」

 彼女が考えたのは、よくあるプレミア会員制度の導入。

 モンスターの特徴や戦闘方法など、羽振りのよさそうな連中が欲しがりそうな情報の大体が、バトルシーンに集約されてしまう。

 しかしだからと言って一切の情報を秘匿してしまうと、相手方が此方に要求する際、欲しい情報を明確にできない。

 ならばいっそ、バトルシーンはそれとして全国民から金を毟り取ればいいと考えたのだ。

 会話でも、バトルでも、これはマジで売れると思える箇所だけ、適当に切り抜いてしまえばいい。

 彼女の労力は多少増えるが、ノエルにとってもこれくらいなら許容範囲内であった。

「モザイク処理とかは?」

「めんどくさいし、多分そーゆーの欲しがる人間はモザイク剥がす技術持ってる」

「なるほど」

 機械面で何も分からない東条は、動画関連の全てをノエルに任せている。

 彼女のやる事は間違いないと信じているし、正直ミスしても間違っていても別にいい。

 自分は楽しく冒険できて金が稼げればいい。

 彼女のやりたいことなのだ。彼女が楽しければそれでいい。

「まさの名前のとこは全部切り取ってるから」

「ありがとな」

 他意のない思いやりに身じろぎするように、ノエルを背負い直す。

「じゃあ今回のcellは切り取んのか?」

「取らない。何だこれって思わせて、知識欲を擽る」

「おー流石」

「でも能力の詳細は聞かれても明言しない。他人のはどうでもいいけど。

 交渉する相手として、ノエル達は脅威であるべき」

 彼女の合理的発想に東条は納得する。

 自分達の生き方的にも、武力は一番の脅しになる。

 別に隠す気も無いので、バレたらバレたで割り切れるが、『確証がない』というだけで手綱の握りやすさには天と地程の差ができる。

「……よし。終わた」

 彼は背負っていたノエルを降ろす為しゃがみ、

 ……そこでどうしてかノエルが止まる。

「まさ、あれ」

「あ?……人じゃん」

 彼女の指さす先には、民家から恐る恐る出てくる四人の男女がいた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

今日の授業は保健体育

にのみや朱乃
恋愛
(性的描写あり) 僕は家庭教師として、高校三年生のユキの家に行った。 その日はちょうどユキ以外には誰もいなかった。 ユキは勉強したくない、科目を変えようと言う。ユキが提案した科目とは。

処理中です...