Real~Beginning of the unreal〜

美味いもん食いてぇ

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2章 満たす白 空っぽの黒

5話

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「まさ、まさっ」

 先の発光でもピクリともしなかった東条を、揺すって起こそうとする。

 しかし当然、運動エネルギーは全て吸収される。
 故に全く動かない。

「まさっ、起きてっ、……むー」

 早く自慢したいというのに、この男は……。
 殴る蹴るの暴行を一旦やめ、考える。

 そしてある策を思いついた彼女は、リモコンを拾いテレビを付け、音量をマックスにした。
 とりあえずリモコンは顔面にぶん投げておく。

「…………ぁあ?うるさ」

 ようやく目を覚ました彼は、のそのそと起き上がり、


 ……逆光を浴び仁王立ちする裸の少女を、その視界に捉えた。


「よっ」


「…………え、誰?」


 当然の反応。
 当然の疑問。

 情報量の多さに彼の頭が高速で回転し、そして一つの結論を導く。


『事案』


(おい嘘だろ?俺酔ってこんな子に手ぇ出したのか!?そもそも俺のタイプは年上と紗命以外に……いや待て、考えれば紗命も童顔の節が……。いいやまだだ、夢、そう夢!)

 東条は顔をはだけさせ、一縷の望みに賭け衝撃波を放った。

「ブぼぇッ」

 ……当然、ぶっ飛ぶ。

 ゴミの中をスライディングしていく彼に、呆れかえる彼女であった。



「……」

「……殺せ」

 本当に殺してやろうか、と一瞬思うが、彼女は最後のチャンスを与えることにした。

「よっ!」

 腕を前に出し、渾身の挨拶。

「……」

 訳の分からない行動に再度固まる東条だが、彼女の全身を見て気付く。

 髪も、顔も、睫毛も、身体も、たった一つ、目だけを除き、異常なまでに白い。
 白すぎる。

 そして今の挨拶……。

「……まさかお前、白蛇か?」

「ん。正解」

 サムズアップする幼女に、今度こそ東条は目を見開いた。


 ――「とりあえず服着とけ」

「ん」

 彼女には大きすぎるコートを投げ渡し、ソファに座らせる。

 自分は地べたに胡坐を掻き、その変貌ぶりをもう一度眺めた。

「で、何がどうなってる?」

「変身した」

「どうやって?」

「身体創り変えた」

「……それがお前の能力か?」

「違う」

「他のモンスターもそれできんの?」

「分かんない。けど、私とあれは違うから」

「何が?」

「んー、格?」

 いまいち要領の得ない回答に頭を掻く。

 正直、白蛇の姿形が変わろうがどうでもいいのだが……。

 一応、一番重要な、今だから聞けるようになったことを聞いておく。

「お前、俺を殺す気ある?」

「ない。なんで?」

 心底不思議そうな顔をする幼女。

 思えば今更な質問、完全に毒気が抜かれてしまった。

「そうかい、んじゃ別にいいや」

 さっさと寝る準備に入る東条を、彼女がジト目で止める。

「ん!」

「何よ?」

「変身、褒めて」

「あぁ……。すげぇよ。驚きすぎてぶっ飛んじまった」

「ん。おけ」

「おけおけ」

 お互いにサムズアップし、東条は就寝に付く。

 いつもと変わらぬ夜が、再び室内を満たす。

 ありえない程重大な変化は、ありえない程普通に幕を閉じた。

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