82 / 218
2章 満たす白 空っぽの黒
2話
しおりを挟む――「……ん」
いつの間に眠ってしまっていたことに気付き、辺りを見回す。
太陽も早々に姿を隠していた。
意識していないと自動的に身に纏ってしまうようになった漆黒だが、如何せん熱も光も吸収するせいで、真冬に外で寝ていても気温の低下に気付かない。
今では、日向ぼっこと風呂の時以外はずっと真っ黒人間状態だ。
起き上がり、伸びを一つ。
そこで重大な事実に気付く。
「……あ、今日金ローじゃん」
足早にテレビの元へ向かった。
§
何かが地面を這う音が、ゆっくり、ゆっくりと、眠りこける東条に近づく。
「……シュルル」
臭いに釣られて化物の住処に忍び込んだ彼女は、鎌首を擡げ、得物をその瞳に映した。
――「……んぁ?」
「(ンゴっ、ンゴっ――)」
若干寝苦しい感覚に襲われ、寝惚け眼を擦る。
「……」
「(ンゴっ、ンゴっ――)」
……これは、どういう状況だ?
デカくて白い蛇が、自分の下半身を飲み込もうとしている。
こうしている間にも、既に腰まで口の中だ。
……とりあえず、と足を開いた。
「(ンガ……?)」
喉につっかえた白蛇と、腕を組む東条の目が合う。
「……よっ」
「……」
言っても彼の顔は、目が何処にあるのか分からない相貌なのだが、彼女にもこの状況は理解できたらしい。
「(ンゴっ、ンゴっ――)」
ゆっくりと東条を吐き出し始めた。
「……お前、面白いな」
「シュルル」
デュロデュロになった下半身の無事を確かめ、どうしてやるか考える。
ジッと此方を見つめる白蛇には、襲ってくる雰囲気もない。
「うん、殺さないどいてやるよ」
シッシ、と手を振り、そのままソファーに腰を落としテレビをつける。
負けることはないだろうし、いざとなれば殺せばいい。
すぐに何処かに行くと思っていた東条だが、何故か白蛇は動こうとしなかった。
「……お前、変わってんな」
「シュルル」
テレビを食い入るように見つめる白蛇を、見つめる東条。
(何だ?モンスターってのはテレビで大人しくなんのか?)
そうなら和平を結ぶことも夢ではないのでは?などと、思ってもいない事を考えていると、
「マジかよ……」
彼の傍に置いてあったリモコンを、ツンツンと口先で押し始めた。
チャンネルが変わるごとに画面を確認し、また押す。
その行動はまるで、規則性を探っている様にも見える。
「理解してんのか?」
「シュルル」
突如現れた謎蛇の謎行動に興味を引かれた彼は、一晩中彼女の行動を観察していた。
0
お気に入りに追加
15
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる