Real~Beginning of the unreal〜

美味いもん食いてぇ

文字の大きさ
上 下
7 / 218
1巻~Beginning of the unreal〜第1章 ようこそ現実へ

7話

しおりを挟む
 ――東条は漆黒を弄びながら、十一階フロア、家庭用品・インテリア・バラエティ雑貨の階を散策する。

 その足取りはどこか軽いようにも見える。
 仕方がないといえば、仕方がないのかもしれない。

 今まで妄想の中に留まっていた力が自らの手元にあるのだ。能力は全く分からないが、興奮しないわけがない。




 ――一時間ほど経ち、彼はTシャツに腕を通しながら出来上がったツリーハウスを見上げる。

 ハンモック、ハンガー、水筒、武器を入れたリュックは、できるだけ高い位置の、それも太い枝を支えにして吊るされている。

 葉量が多いため、ハンモックやリュックなど、先から入れなければいけない物には苦労させられた。

 しかしそのかいあって、簡素ながらもどこかロマンを感じる夢のマイホームが出来上がった。



 東条は出来立てのベッドに寝転がり、採れたてのグミを口に放り込みながら、モバイルバッテリーに繋いだスマホを弄る。
 自分が戦っている間に、日本全国も、いや世界も、なかなか大変なことになっていた。

 例のドブ球は東京を始めとした都会を中心に、日本全国に現れていた。

 ドブ球の大きさは地域によって違うようだが、その中でも特に山手線エリアに出現したドブ球は危険指定されていた。

 そしてここ池袋が、日本で群を抜いてやばい場所だという表記もある。  

 自衛隊の掃討作戦は順調に進んでいるらしい。

 現時点で、大量に出現している敵性生物単体の戦闘力は大して高くなく、銃火器で充分対抗できていた。

 中には効きずらい者や、全く効かない者もいるらしく、対策が急がれているようだ。


 ……順調、そう言われても……。

 彼は自衛隊の派遣先と、交戦地帯の大雑把なマップと名前を見る。

 ここ近辺の地区の名前は一つもない。

 皇居周辺に大量派遣されているようだが、守っているものがものだ。この隊がこちらに動く事はないと考える。



 そしてそんな彼の予想は、残念なことに当たっていた。

 厳密には、池袋周辺にも自衛隊は来ていた。しかし壊滅速度があまりにも早く、情報規制が敷かれているのだ。

 山手線エリア内にある数々の重要施設、要人護衛の為、人員を無暗に死地に送ることはできなかった。

 市民の知らぬ場所で、非情な決断がされているのが事実なのだ。
 命に優先順位をつけなければならない、それが権利者の宿命であり業だ。

 特別危険区域指定、通称デッドゾーン指定された山手線内は、現在も成果が出ていない。


(……助けが来るまで動かないのは愚策だな)

 上の考えなど知る由もないが的は得ている東条が、恐怖と好奇心の間で揺れていると、数ある情報の中一際ひときわ目を引くものがあった。


【魔法】の発現。


 誰しも一度は夢見る、超常の力の名がそこにはあった。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

今日の授業は保健体育

にのみや朱乃
恋愛
(性的描写あり) 僕は家庭教師として、高校三年生のユキの家に行った。 その日はちょうどユキ以外には誰もいなかった。 ユキは勉強したくない、科目を変えようと言う。ユキが提案した科目とは。

処理中です...