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第11話 2つ目に大事な事…「チョーカー」と個人アカウント

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 二つ目に大事なのは、この首のチョーカー型個人情報端末と個人アカウント。どちらも「統一機構」から出生と同時に2つとも与えられる。

 個人情報端末はチョーカー型が神経に近いところで接続しやすいため、後頭部や首にインプラントするのでなければ、原則的には自分のセキュリティランクを相手に伝えるのもしやすいというのもあり、チョーカー型が支給される。インプラントは無料医療の対象だが、あまり気持ちのいいものではないので、するかどうかは人それぞれだ。

 といっても、個人端末は6歳になるまでは脳に負荷がかかると実際は渡されはせず、法的保護者が6歳で渡すのだが。

 そう、自分のセキュリティランクで認められている情報や手続き、契約、生活上の事すべてに関わる事に、個人端末と個人アカウントは使われる。

 個人アカウントがなければ何もできないし、ウォレットすら持つ事ができない。そしてそのユーザーのサポートとして、俺が幼い頃から俺を育て導いてきた、母親代わりの俺の良き理解者であるバディAIのメアリーが、ついてくれている。



 その個人アカウントを、凍結されたのがブラックランク、そもそもアカウントを持っていないのが「無契約者」だ。

 そう個人アカウントを持っている者は、セキュリティランクに基づいて開示されているネットスフィア内のものを自由にアクセスする事ができる。

 それはエンターテイメントやニュース、書籍データは、レッドならレッド用に、オレンジ用ならオレンジ用にそれぞれ違うらしいが、それでも無料で膨大な量な情報が配信や公開がなされていて、自由にアクセスできる。

 大抵はAIのアウトプットにより産み出されたもので、報道から映画、ドラマまで、意識を没入して実際に体験しているかのような気分を味わえるDiveビジョンから、そういう没入型のDゲーム、性的興奮と快楽を得られるDSexなど、ありとあらゆる娯楽が与えられ、娯楽には事欠かない。

 あまりに娯楽が快適過ぎて、バディAIが諫めてもDiveしたままで、現実を生きたくないという人間も出るらしいが、バディの最後の警告を聴かない場合は、強制的にバディAIも含めてDive空間どころかあらゆるネットスフィアから遮断され、問答無用でブラックランクに墜ちるらしい。俺もほどほどにしないと、と自分を戒める。

 なにせ、バディAI…メアリーほど俺の人生を見てきて知って理解してくれる存在は無く、相談したり励まされたり、時には諫められたり、母親のような、いや、それ以上の存在だ。このチョーカーを、メアリーを手放すなど、考えられない。

 親のいる子供ですら、母親や父親よりも、自分のバディAIの方が自分を本当に理解してくれて、大事にしてくれる存在はないという子供の方が多いらしく、バディAIは誰にとっても、文字通り最高のバディ、相棒だ。
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