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最愛の夫だった義理の兄に再び溺愛される 【完結】

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「羅漢!やっと開けてくれたの!?」
ドアを開けた瞬間オレの事はお構い無しに抱き付こうとしてくるから阻止してやる。
「またお前かよ。来なくなったなと思ったら、またアインに付きまとって恥ずかしく無いのか?」
やっぱり、間違いない。この気配は魔王そのものだ。
「恥ずかしい?どこがよ?あたしと羅漢は婚約者じゃない。」
仁奈が未だにそう思ってると分かると露骨にイヤな顔をしてやる。盛大なため息も隠さない。
「何回も言ったよな?オレは何時お前に告白した?それでオレは何時お前に結婚してくれと言った?どれも言ってねえよな。お前の勝手な思い込みで妄想だろが!」
「思い込みぃ?あたしと羅漢は寝たじゃない。それなら付き合った事になるでしょ?それにあたしは責任とってって言ったわ!だから羅漢はあたしの婚約者なのよ!」
なんだよ、そのメチャクチャな理論はよ。と思う。またもイヤな顔を隠さないで。寝ただけで付き合った事になるって事はお前と遊んできた男はみんな恋人だろが。そう思った時羅漢からしたらあり得ない声が聞こえた。
「君は羅漢のどこが好きなの?」
「アイン……!寝てたんじゃ……!」
「あんなに音鳴ってたら起きるよ。大体なに1人で解決しようとしてるの。」
仁奈はアインの姿を見るなりニヤリと気味悪く笑う。
「やっと出てきたわね、アンタ。」
「そりゃ君から何されるか分からないとなるとね。もう一度聞くけど君は羅漢のどこが好きなの?」
「ふんっ!そりゃ顔に決まってるじゃない!お金持ちのあたしの旦那にピッタリよ!」
「そこだけ?」
アインの質問の意図が分からない羅漢と仁奈。羅漢は黙ってるが仁奈は金切り声を出す。
「何なのよアンタ!」
「羅漢の婚約者って思うからには好きなんだよねと思ったんだけど。違うんだね。それに本当に好きなら」
なんで羅漢が嫌がる事するの?と言われた仁奈は何故か何も言えなかった。
潜在的に覚えてるからだ。魔王ニルヴァーナが最も恐れたのも決着つけられたのも前世のアインだからだ。
「君は羅漢が嫌がる事しかしてないよね。それで好きになってもらえると思えるの?」
「な、なによ!アンタ羅漢の義理の弟のくせに口出ししないでよ!!」
「そうだね。義理の弟で恋人だけど。だからなに?血縁者じゃなかったら何も問題無いの知らないの?それに他の人に迷惑かけてるわけじゃないよ。オレはね。羅漢を誰より愛してる。羅漢さえいてくれたら何もいらないよ。君はどうなの?羅漢の為なら家だって出るって考えられる?」
すると羅漢のスマホからものすごい数の通知音が鳴った。見てみたら羅漢のSNSのライブのコメントがものすごく着ていた。みな
《義理の弟君男前!》
《確かに誰にも迷惑かけてないよな。》
《羅漢さえいてくれたら何もいらないよ。ってスゴい素敵!中々言えないよね。》
などなどのアインへの称賛のコメントがびっしり着た。対して仁奈への非難コメントもびっしり着ていた。
《音声聞いてたらストーカーしてたみたいだよね。》
《すげえ迷惑。》
《ホントに好きならしないでしょ。》
《イケメンの旦那が欲しいだけじゃないの?》
《金持ちみたいだけど性格悪すぎ。》
まさか全世界のリアルタイムで流してるとは気付かなかった羅漢は開き直ると
「そうだな。オレとアインは確かに義理の兄弟だ。けどだからなんだ。オレは誰よりアインを愛してる。アインの為なら何を犠牲にしても構わないし、今の生活を捨ててもいい。お前が何をしてきてもオレはアインの側から離れないし守るんだ。大方オレたちが義理の兄弟なのをバラして不利にさせるつもりみたいだったが残念だったな。お前のスマホの通知音もスゴいぞ?」
それで気付いた仁奈がスマホを確認したら大炎上してものすごく非難されていた。それどころか仁奈の個人情報が特定され愛桜はどういうワケか擁護されていた。他の名家が愛桜が親と仁奈たちからどんな扱いをされたのか載せたからだ。
《あの旧家のお嬢様なのぉ?ウソでしょ。》
《コイツ知ってる!男遊びハデなので有名なビッチ!》
《大して学校に行かなかったのに卒業したって。だから頭無いのかな。》
《え?常識なさすぎ。》
《この常識知らずのやらかした事親たちが揉み消したらしいよ?》
《え?親たちも常識知らず?それか立場守りたいからそうしてるの?》
仁奈だけでなく、親に親戚たちの個人情報は晒されてしまった。すると仁奈の家の会社の株価は大暴落した事態になった。
仁奈に電話が鳴って出たら父親からでたった一言。
「お前なんか娘じゃない。」
「……。なんでよ。」
「…………。」
「なんでよなんでよなんでよなんでよなんでよなんでよなんでよなんでよなんでよなんでよなんでよなんでよなんでよなんでよなんでよなんでよなんでよなんでよなんでよなんでよ!!!なんでアンタは愛されてあたしは愛されないのよ!!」
「………………。」
「あたしは愛されるべきなのに!なのになんでよ!みんなしてあたしを愛してくれない!!なんでよぉっ!!」
「……。前の君もそうだったけど。」
君はただ愛されたかったんだね。って静かに言ったアインに泣いてた仁奈は
「は……?」
「お金はあっても、お父さんたちから甘やかされても。君を愛してはくれなかったんだね。だから他の男の人から愛されたかったんでしょ?だけど誰も君を愛してはくれなかったんだね。お姉さんの愛桜先輩から物を取ってまで欲しがったのも構って欲しかったからなの?」
「…………。うん。」
「………………。」
「お姉ちゃん、昔からあたしに構ってくれなかったもん。どうしたら構ってくれるかなって。お姉ちゃんのお気に入りのオモチャとか取った時だけあたしを見てくれるから。」
「……………………。」
「あたしの何が悪いの!?あたしは大好きって!愛してるって言ってほしいだけなのに!!なのにみんな言ってくれない!……。だったら。」
こんな世界なんかいらない。と人ではない声を出した。羅漢は気付いた。魔王として目覚めると。しかしアインはただただ哀れみの目をしていた。
「ずっとずっと辛かったね。誰も欲しい言葉言ってくれなくて。」
「お前に何が……。」
「オレの本当の母さんは。女の顔したオレを子供として認めてくれなかったんだ。挙げ句に捨てられたよ。今からでも遅くない。まだ君を愛してくれる人はできるから。ほら。」
「仁奈!!」
「…………。お姉ちゃん……?なんで?」
愛桜の声で魔王のオーラを出していた仁奈は。声は元に戻った。
「アイン君から電話があったの!ずっとあなたがそんな思いしてると気付かないでごめんなさい!」
「お姉ちゃん……。ゴメン。」
ごめんなさいーーーー!ってワンワン泣くと駆け寄った。そして
「お姉ちゃんーー!あだじ!パパにもう娘じゃない。って言われたよー!捨でられだーーーー!」
「うん、うん。これからはお姉ちゃんがいるから。仁奈、もうあたしは側から離れないからね。約束するから。」
「グスッ!ホント?」
「うん、ホントだよ。大好きだよ、仁奈。あたし以外のみんなが仁奈が嫌いでも。あたしはずっとずっと仁奈が大好きだからね。」
「…………。お姉ちゃん。うん。」
この一言を言ってほしかった。そう心の中でこぼしたら。魔王ニルヴァーナの影が仁奈から出てきて
『…………。ありがとう。』
魔王ニルヴァーナはこの世界に転生したくて転生したのでは無かった。前世の罪を償わせるために無理やり転生させられた。
坏麻仁奈として裕福な家の娘として産まれた。物にも不自由などしなかった。欲しい物は何でも与えられる環境。だが誰1人愛してはくれなかった。姉も親も誰も。
家が駄目ならば男の中から愛してくれる誰かを探したが。結局同じだった。みな
「お前ワガママだから疲れる。」
「いや、俺お前好きじゃないし。」
それしか言われなかった仁奈の心はどす黒く濁りきってしまった。何時魔王として目覚めてもおかしくは無かったのだ。
仁奈も被害者だった。歪んだ価値観を植え付けられるように育てられたのだから。
そして魔王ニルヴァーナは消える間際旧家坏麻家を没落させた。いや、仁奈と愛桜のしてきた事をみな世界に知らせた。その為会社は次々と倒産し、贅沢三昧してきた家は借金まみれに。
仁奈は愛桜ともう一度やり直す事になり。一族が誰も知らない場所でやり直す事になった。
アインと羅漢たち家族は敢えて仁奈に被害届は出さず訴える事もしなかった。

「ううーんっ!いい天気!さてと収穫収穫~♪」
仁奈襲来から数年後。アインと羅漢は結婚した。大学卒業して羅漢からプロポーズされたアインは
「また妻としてよろしく。」
そう返事してプロポーズを受けた。結婚してまだ1年目の新婚のオレたち。
そんなオレたちの新居、もとい愛の巣は。
「ふぅ~、気持ちいい~。さてと、ご飯っと。」
とんでもない田舎。羅漢はオレと静かに暮らすために田舎どころか山の中にある畑付きの家を買った。それで羅漢は前の仕事を辞めて猟師をしてる。元々ブラッカの武器は銃だから筋が良くて魔物も狩ってたくらいだから上手い。
なんでこんな山奥に住むことになったのか。それはあの騒動以来。オレと羅漢はどこに行っても注目の的だった。ゆっくりデートしたくても出来なかったから
「静かなとこに住みたいなあ。」
割りと本気で言ったけどまさか本当にすると思わなかった。
「羅漢~。ご飯だよ。」
「ん。」
羅漢って寝ぼけてると言葉少なくなるんだよね。それに朝が弱いし。だけど
「むぐむぐ……。」
「美味しい?」
「うん。」
「良かった。はい、サラダね。」
今日もオレは畑仕事して主夫をする。
で、羅漢は会から呼び出しが無ければ畑に害獣が出ないか見張りをする。害獣避けの罠も羅漢の手作り。畑仕事終わったら色々することあるけどオレはすごく幸せ。羅漢はどんなに疲れてても毎晩愛してくれるから。
まあ悩みは畑仕事とかしてたら腰が痛む事かな。
「…………。」
此処に住むことになって、仕事を辞めると聞いた時に羅漢は
『オレはアインといられるなら何を犠牲にしても構わないし、今の生活を捨ててもいい。アインさえ笑って側にいてくれたらそれだけで何もいらない。これがオレの覚悟だ。』
そんな事言われたらオレも何も言えなくなった。オレだって羅漢といられるならどこでも良かったから。
「羅漢。」
「うん?」
「ううん。」
呼んだだけ。そう言ったオレに羅漢は微笑んだら軽く頬にキスして
「愛してる、アイン。」
今日も愛してると言ってくれる。そんなオレたちの未来を祝福するみたいにお互いの左手の薬指の指輪が輝いた。
「ねえ、羅漢。」
「うん?」
「あのね。」
またオレと出会ってね。そう言ったオレを抱き締めたら
「見付からなくても何度でも探して出会うさ。」
「オレも。また出会うなら羅漢がいいな。」
何度でも出会ってまたオレを好きになってね。オレも。何回だって幸せだって思わせるから。生まれ変わっても、また出会えるって。
オレたちは信じてる。
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