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最愛の夫だった義理の兄に再び溺愛される 4

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レストランに戻って顔合わせを終わらせて家に帰ってきた。今日は一人暮らししてる羅漢も泊まる事になった。父さんたちの前では何とか普通でいられた。何とか。宿泊の荷物を取りに戻った羅漢を見送って家に入って自室に戻る。
「ふぅ………………。」
今日だけで色々あったなあ。なんか疲れてベッドに寝そべる。前世のブラッカとは夢だけどお別れして、母さんになる人と顔合わせして。その連れ子がブラッカの生まれ変わりで、前世の記憶を全部思い出しただけでなく。
「告白されるって……。」
いや、まあ。イヤでは無いんだよな。ブラッカは前世の時だとあんなニコヤカな顔なんて出来なくて無愛想だったし。父さんも羅漢を気に入ってたよなあ。
「オレの兄貴かぁ……。」
なんか、不思議な感覚。前世では仲間として出会って、なし崩しに身体の関係だけ持って。最終的に夫婦として過ごして。って、ううん?短かったけれど夫婦として過ごした時間は恋人みたいに甘い時だった。世界一幸せな時間だった。
「待て待て待て!思い出すな。」
病に倒れるまで身体を重ねてたって。なんで思い出すの!まあ、前世の記憶を思い出したからだけど。それも、あるけど。
『考えていてくれないか?』
「オレ、どうしたら良いのかなあ。」
好きなのは好きなんだ。突然だったけど告白されて嬉しいとも思ってるし、オレの気持ちとしては付き合いたい。羅漢と恋人だったらどれだけ楽しいんだろな。けれど義理の兄弟という関係があるだけで躊躇してしまう。周りの目を気にして。バレたらどうするの?って。
「…………。」
前の、前世のオレなら。こんな事気にしなかったのに。前世では、同性婚は禁忌で周りにバレたら良くて牢獄行きで、最悪処刑。それなのに。前世のオレはブラッカのパートナーになる事を選んだ。受け入れた。最悪バレたら処刑されるのに。理由は単純。
好きだったから。死ぬまでいたかったから。それだけだったのに。今ならどうだろう。罪にならないのに、同性婚も同性カップルも普通な時代なのに。
なんで躊躇うの?なに怖がるの。義理の兄と付き合ってるって何考えてるのって言われるから?
「アイン?どうした。」
「うわ!!あ、羅漢。ごめんね、部屋散らかってるけどゆっくりしてよ。」
「いや、別に散らかってはないけど。なあ、アイン。」
オレの告白に困ったのか?と心配そうに言ってきた。
「っ。」
今も嘘を付くのが苦手なオレは。図星突かれたら何時だって分かりやすく反応するし、顔にも出る。口だけで
「そんな事ないよ。」
「……………………。そうか。」
アインがそう言うなら分かったって答えた羅漢は。悲しそうに、それで辛そうに笑って。小さい声で告白なんてしてアインを困らせてごめんなって謝った。
「ぁ……。」
オレ、羅漢と。再会した時。なんて思った?今度こそ一緒に幸せになるって決めた筈なのに。なのに、なんでこんな顔をオレはさせてるの?
「ま、待って!」
「うお、アイン?どうした?」
部屋を出ようとしてた羅漢は思わず勢いよく抱き付かれアインを見てどうかしたのか聞いた。
なんでこんな時まで優しくするの?優しい声するのって思ったけど。悩んでた理由を言わないといけないと思った。なんで優しくするのとは言わずにアインは
「オレ。周りになんて言われるのか怖かったの。羅漢と付き合うのがイヤじゃないの。告白だって、されて嬉しかったし。オレが周りの目だとか気にしなかったらあの場で付き合いたいって言ってた。前のオレなら周りの目だとか、世間だとか。そんなの気にしなかったのに。ゴメン、ゴメンね。」
「……。オレもゴメンな。」
少し長くなるがオレの話を聞いてくれるか。と羅漢は言ってきた。話?話ってなんだろ。って思うけど、聞いてくれって言うなら聞かないと。羅漢は床に座ると
「そうだな。アイン、オレはな。羅漢として、今の人生が始まってた時から前世の記憶は全部あったんだ。」
え?最初から?オレと違って羅漢は最初からブラッカとしての記憶を持っていて、前世のアインを覚えてたって。
もちろん星を救うみんなとの旅も。戦いも。
「物心付いた時にはアインは生まれ変わって無いのかと探してた。なんでいない?もしかして生まれ変わってもいないのか?とすら思ってた。アインは見つからないのに。なのに昔から女には寄ってこられたんだよ。顔が良いからって。男からは嫉妬やらモテるから羨ましいだとか揶揄される。それで付き合いたくもない女からは寄ってこられる。ウンザリだった。」
「………………。」
そこまで聞いて羅漢は。ブラッカの記憶を持ってた羅漢は。ずっとオレと恋人になりたかったと思ってたんじゃ。って考えた。そしたら推測通りで
「中学、高校。部活にうち込んだのはアインに会えない寂しさだとかを紛らわしかったのもあった。高校にもなれば恋人の話をイヤでも聞かされる。外を歩けばカップルが目に入る。その内思ったんだ。オレの隣にアインがいてくれたらオレは幸せなのになって。もしもアインと再会できたら。告白しようって思ってたから。だから義理の弟なのに告白してしまってたんだ。」
アインそのものを諦めようとした事もあったけれど、オレも生まれ変わってると信じて待つことを選んだ。他の誰かでもなくて、結局オレで無いと幸せと思えなかった。ずっとオレを想ってくれてた。何時会えるのか分からないのに。
対してオレはどうなんだろ。グダグダ周りの目だとか世間の事ばかり考えては。羅漢の気持ちを考えてもいない。
「アインは何時もそうだな。」
「え?」
そう言われて指先で涙を優しく拭われる。
「何時も相手の事だけ考えていたな。そういう思いやりあるところ、好きなんだが。自分はオレの気持ちを考えてないと責めるのは止めてくれ。アインは周りの目を気にするから悩んでたんだろ?友達だとかなのか?」
「うん。オレ、今でも。お人好しって言われてて。だからかな。友達も昔からたくさんいたんだ。バレたらどう言われるだとかそんな下らないこと考えてた。」
「なるほどな。下らなくはないと思うぞ。世間体を気にするやつはいたりするからな。法律では大丈夫でも義理とはいえ兄と付き合うと知られたらって考えるのも仕方ない。友達だとか多いとなれば尚更な。」
オレは色々焦りすぎて告白してアインを悩ませてごめんなと頭をポンポンと叩く。涙出てきそ。もう本当に優しいよ。何とかぐっと我慢すると
「そうだな。悩み解消になるか分からないが。義理の兄のオレと付き合ってあれこれ悪く言われたりからかうなら所詮その程度のヤツだったと切り捨てたらいい。視野が狭いヤツなんだと思って距離を取れば良いだけだ。オレなら義理の弟と付き合っているがだからどうした、血縁関係は無いから問題無い、大体お前に何か迷惑かけたのか?と言ってやれるけどな。」
「あ……。」
そうだった。オレたちの関係知ってあれこれ言うならそうすれば良かった。
何も問題無いのに、悪いことをしようと思ってないから。なんか悩み吹っ飛んだな。
「ありがと、心軽くなったよ。」
「そうか?それなら良かった。」
やっぱりアインは笑顔が似合うなと柔らかく微笑んで。それから頬を撫でられて、顔がまた赤くなった。あれ?前世ではこんなじゃなかったよね?確かに優しかったけれど。こんな甘々では無かった。………………。まて?確か。
最後の夢で。
前より良い男になって惚れさせてやるって言ってなかったっけ。
「顔赤いな。具合悪いのか?」
「あ、ううん。」
顔近い!顔を反らしたけど、額に手を当てて。
「熱は無いな……。」
どうしよ。別の悩みができた。甘々になって生まれ変わった義理の兄の羅漢にトキメキすぎて辛い。付き合ってもいないのにこれだとどうなの?
そんな時に限って、どうしてこうなる?って事になるんだよな。

それは夕飯が終わって羅漢がお風呂に行った後のことで。バスタオルを忘れていったからオレが届けたら。
「………………。」
「ん?アインどうかしたのか?あ、バスタオル持ってきてくれたのか。ありがとな。って、大丈夫か?」
「大丈夫大丈夫!」
なにあの身体!脱いだらスゴかった!ボクシングしてるだけあるからすごいいい身体!!腕も腹筋も胸も綺麗に筋肉付いてる!あの身体で抱き締められたらって、なに考えてるの!?
「……………………。なあ。」
羅漢は持ってきたバスタオルを置いたらバタンと浴室のドアを閉めると近寄ってきて、腕の中に閉じ込めた。所謂壁ドンってやつをしてきた。
「ふぇ!?」
「静かに。聞こえるから。……なあ。」
オレに見惚れたの?ってあの全く変わらないイケボを耳元で聞かされて。
「ぁ、う……。」
「………………。なんてね。」
相変わらずかわいいなって何も無かったみたいに離れられてつい
「へ?ひ、ひどい!からかうとか。」
「からかってないよ。真っ赤になって可愛いなって思ったし。それに鍛えておいて良かったなって思ったから。アインの見た夢の中で言われたでしょ。前より良い男になって惚れさせてやるって。」
「え?なんで。」
「なんで、かあ。もしも再会した時アインに前よりも良い男になって惚れさせてやるって思ったんだよ。そしたら本当に再会したから驚いたよ。」
そう、だったんだ。ってどこか納得してたら思い出した。羅漢はお風呂に入ろうと服脱いでた途中だったの。
「それじゃ持ってきたから!」
「うん。……………………。」
間近に見た真っ赤に染まった顔とうなじ。近寄った時に自分を見上げた顔。
正直あんな可愛くて大丈夫なのか?とすら思った。再会して再確認できた。今のアインも男受けする顔と体格してると。だからこそ焦った。アインが友達と思っても狙ってる奴はいると思ってる。
「ふぅ…………。……………………。」
前だってそうだった。誰でも寄せ付ける魅力があるアインは男には下心を抱かせ女なら結婚したいと思わせた。あの反応を見る限りだと、まだ交際経験無いと思っていいだろうな。
「はぁ……。」
羅漢がお風呂上がってからオレが入って湯船に浸かってため息付く。悩み解決したらまた別の悩みって。今分かった。なんでこの見た目で、髪型でいたのか。ブラッカに、羅漢に見付けてもらうためだった。髪の毛を頑なに切らなかったのも。羅漢もだったのかな。前世と全く変わってなかった顔と声。生まれ変わったら多少変わるんじゃないの?と思ったけど。見た目だけは変わらなかったけど。中身は変わりすぎてた。本当に無愛想で、味覚はうん。こう言ったらなんだけど酷い。いや、美味しいと思う許容範囲が広すぎなだけ。今は違ってたし。夕飯の時羅漢は自炊してると聞いて
『え?自炊、してるの……?』
『さすがに前のように味覚は悪くない。』
あれを美味しいと思ってたなんてどうかしてたと言ってたし。いや、良かった。
「ふぅ………………。」
誰かに恋した事とか無かった。可愛いなって思った女の子はいたけど付き合いたいとまでは思わなかった。確かに恋愛対象は女の子で、好きだった筈なんだけれど。親しくなった子はみんな向こうもオレも。友達止まりだった。
だけど羅漢は違った。まあ、誰より好きで。愛してた夫との再会なのを除いても
ドキドキするもん。スーツすごい似合ってたし!
「……ヤバい。」
このまま悩んでたらのぼせるからそろそろ上がった。
そもそも、今感じてるこの思いが恋なのか今一つ分からない。カッコいいとは思うけどこれは恋なの?と思った。
「ううーん、考えても分かんない。」
とりあえず今日だけでも色々あったから考えるのは止めよう。明日は学校休みだけどバイトはあるから休んだ。
朝何時ものように起きたら朝食と昼のお弁当作る。羅漢は起きたらいなかった。オレ、6時前には起きるんだけど起きたら荷物も無かった。おはようって言いたかったのにな。って少し寂しく思ったけど仕方ないよな。
品出ししたりレジ打ちしたり。高校3年だから今月で辞めるけど。ここでアルバイトするのは楽しかった。
「……。進路かあ。」
進学するか就職するか。父さんは進学しておいた方が良いって言うけど。行きたい学校は特に無いんだよな。やりたい仕事も特に無い。
「……。やってみよかな。」
農業。羅漢と二人で田舎に暮らせたら楽しいかな。でも。そうなったら羅漢は今の仕事辞めないといけなくなる。それは、イヤだなあ。あれこれ考えてたからか
「少し休んできたら?」
「え、あ。すみません。」
ホント、色々悩みあると。顔に出るとこ変わらない。ちょっと外に出て背伸びしたら
「ん?あれって……。」
羅漢がいた。羅漢だけでなくて。同じ年くらいの女の人も。羅漢といる女の人は
「ねえ!私とは遊びだったの!?付き合ってるんじゃなかったの!?」
え?誰と誰が付き合ってるの?羅漢は迷惑そうに。
「いつオレが付き合ってくれなんて言ったんだ。一度しただけで付き合ってると勘違いしたのはお前だろ。それにオレは好きな相手がいるんだから諦めろ。」
確か、羅漢。言い寄られる女が多くてウンザリしてたって。一言だけ用事ができたのでと断り入れたら飛び出してた。その一言を思い出したオレは
「あの!」
「アイン。どうして。」
「なによ!アンタ!」
どうしよ、咄嗟に出てきちゃった。だけど。
「あの、オレ。羅漢の義理の弟です。羅漢色んな女性から言い寄られてるの迷惑だって悩んでたと話してました。止めてもらえないですか?」
これで聞いてくれたらいいけど。って思ったけどやっぱりそうもいかなかった。
「なによ!アンタには関係ないじゃない!口出ししないでよっ!大体女みたいな顔しちゃってなんなのよ!」
「わ!」
避ける事が出来なかったオレは肩を押されて倒れそうになった、筈だった。
肩を支えられて見てみたら羅漢の腕がオレを支えてくれてた。それで聞こえたのはさっきの女の人が
「いたっ!」
「え?」
ギリギリと手首を掴まれた女の人は痛さで涙目になって離してって言ってるけど。
「お前。アインになんて言った。挙げ句に何しようとした。」
「っ!羅漢止めたげて!オレ大丈夫だから!」
羅漢は、ブラッカは前から本気で怒ると怖かった。オレの事だと特に。
「おっ、おねがっ!離しっ!」
「ならアインに謝れ。」
「ごっ!ごめんなさい!」
「は、はい。ほら、謝ってくれたから許してあげて。」
黙りながら羅漢はようやく彼女の手首を離す。そして
「アインが。オレの好きな相手が優しくて良かったな。」
「え。好きな相手って義理の弟。」
「オレを怒らせたいのか?」
いい加減黙れの一言と一睨みで何も言えなくなった彼女はさっさと行った。
「アイン、大丈夫か?」
「うん。あの、羅漢さ。さっきの人って誰なの?」
「ん?何でもないよ。」
ただオレと寝ただけの相手だ。と事も無げに言われて。
『え?寝たって。』
「えっと、セックスしたの?」
「?そうだが?」
胸の奥が軋んだ音がした。なんで。こんなに胸が痛いの?想像したくない。羅漢が、他の人としてたとことか。
「なんで。」
「アイン?」
「なんで他の人としたの?オレが好きじゃなかったの!?」
オレ、こんなに女々しかったっけ。なんでこんなに気にするの?羅漢が経験あるだけで、なんで。
「……。今のオレが好きになったのは」
アインが初めてだ。そんなウソなんて信じないって言いたかったのに、本気で好きだと瞳が訴えてたから。黙り込むしかなかった。
「場所が場所だからそうだな。オレの部屋に来てくれるか?まだ仕事の途中だからこの店で待っててくれるか。」
「……。うん。」
なんでオレ頷いたんだろ。なんで部屋行くのオーケーしたのか分かんない。なんだか酷くモヤモヤする。
荷物を取りにロッカーに行ったら先輩がいて
「あ、お疲れ様。って、どうしたの?なんか暗いけど。」
「その。モヤモヤしてて。」
「どうしたの?私で良かったら話聞くよ。」
「……はい。実は。」
順序を踏まえて先輩に話してみたら先輩はなるほどねって言った。何か分かったのかな。
「今までアイン君好きな人がいなかったから分かんなかったんだね。そのモヤモヤってさ、世間で言うところの嫉妬というか焼きもちだよ。」
「………………。え?焼きもち?」
「そうそう。誰かと身体の関係があったの知ってイヤな気分になったんだよね?好きでも無かったら焼きもち妬かないし。彼の話聞いてみなよ。」
焼きもちって、そんなの。したこと無かった。今までだって、今のアインになる前だって。無かったから。好きでも無かったらこんな気持ちにならないって。オレ、羅漢好きなんだな。
羅漢が言ってたコーヒーチェーン店に行ってクーポン使って羅漢が来るまで待った。なんて言おうか考えながら何時間かして羅漢が来て
「来てくれたのか?」
「うん。」
「……。来てくれないと思ってた。」
その一言聞いて顔上げたら、本当に来てくれて良かったって顔してた。オレが来ないって不安だったのかなって思ったら、胸がいっぱいになった。そっか、もしかしたらこれが恋なのかな。
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