MADE IN BLUE

ゼニスブルー

ドッドッドッド、と四つ打ちのBPMが心拍数みたいに規則正しく鳴っている。


天使の歌声みたいな美しいピアノが流れ、
心地好いボーカルが「どうして僕がここにいるのか教えて」と歌う。


どうして僕がここにいるのか教えて。


ヘッドホンを片側だけ外すと
鳥のさえずりや、道をゆく人々の足音、ゴミ収集車の軽快な音楽なんかが流れ込んでくる。

朝だ。
誰にでも平等に朝は来て、やがて夜がくる。


立ち上がって、遮光カーテンを開けると
薄暗い部屋とブルーライトに慣れきった目には
暴力的なまでの明るい空があった。


ふと、ギリシャ神話の神々が浮かぶ。
浮気性のゼウスと、いちいち嫉妬する妻のヘラ。
いたずらに恋の矢を放つキューピッド。
自身に見とれて水仙になったナルキッソス。


あの天空高く、ゼニスブルーに澄み切った世界におわす神々だって右往左往して生々しく生きてる。

伸びをしたら「あーぁ」と声が出た。


「くだらねぇ」


乾いた笑いを洩らして、どんどん活動を開始する人間の街を見下ろす。
生きてるから、生きるしかないじゃん。


真っ黒な背景に鮮やかなリーフグリーンのロゴの入ったエナジードリンクを両手で潰してゴミ箱に投げた。


パソコンでメールにデータを添付して『送信』を押す。
苦戦していた仕事が、とりあえずの終了を迎えた。


「寝よ」


活動する朝の街の真ん中で、これから眠りにつく。
最高の贅沢をしているようで、なんとなくの幸せを感じる。


起きたらまた生きればいい。
人生ってきっとそういうもんだ。

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見上げれば
神さまたちが遊んでるみたいに
澄んだ空の色です