113 / 114
学園編
110.リラ視点
しおりを挟む
メルとオーガストの会話に参加できず、ただ聞いているだけだった。
メルが部屋に出て、私は慌てた。
「ちょっと、メル様とお話しています!」
「リラ!?」
オーガストが私を止めようとするが、彼を無視して、部屋を出たメルを追いかける。
グリフが現れたとき、私はこれはストーリーなんだから、倒せるんだって思っていた。
けれど魔法が効かず、魔物に見下された時、初めてこれはゲームの中では無いことをようやく気づいて心の底から恐怖した。
腰が抜けていなかったら、きっと皆を見捨てて逃げていただろう。
私だって努力した。愛されるために、誰かを救えるように。でも、この世界は最後にはゲームのストーリー通りに動くんだってそう思ってた。最後には、ハッピーエンドになるんだって。
それが甘い考えだったと分かってしまった。だから、私はちゃんと考えた。この世界の事。私の事。メルの事。オーガストの事。ウェインの事。
考えて、考えて、そして出した答えは一つだった。
「メル様!」
廊下を歩いていたメルを呼び止める。足を止めてくれたけど、振り返りはしないメルに私は宣言する。
「私!もっと頑張ります!貴女に認めて貰えるように!それで、絶対オーガスト様のお嫁さんになってみせます!だから!」
攻略とかそういうのを抜きにして、私はオーガストと結婚したい。傍にいたい。支えて上げたい。私が出した答えはそれだった。
自分を捨てて逃げることも考えたけど、オーガストの手は離せないと思った。
だって、私、彼に恋したのは本当だから。
彼が熱で倒れていた時に初めて会い、それから会う度に愛おしいと思う感情が積もっていった。それをゲームだから、好感度だからと逃げて、自分の感情から目を背けていた。でも、もうちゃんと私である為に、私はリラだということに逃げない。
「だから、正々堂々と持てるもの全てを使ってオーガストの婚約者の立場になってみせます。それでもっと強くなって、彼に訪れる危険から守って幸せにしてみせます」
私は、そう宣戦布告した。
すると、メルは振り返り、私に一枚の招待状を差し出した。
「アナタをお茶会に招待しますわ。どうぞ、お越しください」
メルの表情はいつもと変わらない。敵意の一つも感じられない。
彼女を見てると、心が乱される。まるで道端の石を見ているような瞳だった。その目に見つめられると、自分が本当にそうなってしまうかのようだ。
「……はい」
震える手で招待状を受け取った。招待状からふわりと花の香りが漂う。
「詳細は後ほど、ご連絡致しますわ」
そのお茶会で、私はゲームでは知りようがなかった話を聞かされたのだった。
メルが部屋に出て、私は慌てた。
「ちょっと、メル様とお話しています!」
「リラ!?」
オーガストが私を止めようとするが、彼を無視して、部屋を出たメルを追いかける。
グリフが現れたとき、私はこれはストーリーなんだから、倒せるんだって思っていた。
けれど魔法が効かず、魔物に見下された時、初めてこれはゲームの中では無いことをようやく気づいて心の底から恐怖した。
腰が抜けていなかったら、きっと皆を見捨てて逃げていただろう。
私だって努力した。愛されるために、誰かを救えるように。でも、この世界は最後にはゲームのストーリー通りに動くんだってそう思ってた。最後には、ハッピーエンドになるんだって。
それが甘い考えだったと分かってしまった。だから、私はちゃんと考えた。この世界の事。私の事。メルの事。オーガストの事。ウェインの事。
考えて、考えて、そして出した答えは一つだった。
「メル様!」
廊下を歩いていたメルを呼び止める。足を止めてくれたけど、振り返りはしないメルに私は宣言する。
「私!もっと頑張ります!貴女に認めて貰えるように!それで、絶対オーガスト様のお嫁さんになってみせます!だから!」
攻略とかそういうのを抜きにして、私はオーガストと結婚したい。傍にいたい。支えて上げたい。私が出した答えはそれだった。
自分を捨てて逃げることも考えたけど、オーガストの手は離せないと思った。
だって、私、彼に恋したのは本当だから。
彼が熱で倒れていた時に初めて会い、それから会う度に愛おしいと思う感情が積もっていった。それをゲームだから、好感度だからと逃げて、自分の感情から目を背けていた。でも、もうちゃんと私である為に、私はリラだということに逃げない。
「だから、正々堂々と持てるもの全てを使ってオーガストの婚約者の立場になってみせます。それでもっと強くなって、彼に訪れる危険から守って幸せにしてみせます」
私は、そう宣戦布告した。
すると、メルは振り返り、私に一枚の招待状を差し出した。
「アナタをお茶会に招待しますわ。どうぞ、お越しください」
メルの表情はいつもと変わらない。敵意の一つも感じられない。
彼女を見てると、心が乱される。まるで道端の石を見ているような瞳だった。その目に見つめられると、自分が本当にそうなってしまうかのようだ。
「……はい」
震える手で招待状を受け取った。招待状からふわりと花の香りが漂う。
「詳細は後ほど、ご連絡致しますわ」
そのお茶会で、私はゲームでは知りようがなかった話を聞かされたのだった。
47
お気に入りに追加
343
あなたにおすすめの小説
転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。
訳ありな家庭教師と公爵の執着
ゆきむらさり
恋愛
〔あらすじ〕📝名門ブライアン公爵家の美貌の当主ギルバートに雇われることになった一人の家庭教師(ガヴァネス)リディア。きっちりと衣装を着こなし、隙のない身形の家庭教師リディアは素顔を隠し、秘密にしたい過去をも隠す。おまけに美貌の公爵ギルバートには目もくれず、五歳になる公爵令嬢エヴリンの家庭教師としての態度を崩さない。過去に悲惨なめに遭った今の家庭教師リディアは、愛など求めない。そんなリディアに公爵ギルバートの方が興味を抱き……。
※設定などは独自の世界観でご都合主義。ハピエン🩷
※稚拙ながらも投稿初日(2025.1.26)からHOTランキングに入れて頂き、ありがとうございます🙂 最高で26位(2025.2.4)。
※断罪回に残酷な描写がある為、苦手な方はご注意下さい。
Switch!〜僕とイケメンな地獄の裁判官様の溺愛異世界冒険記〜
天咲 琴葉
BL
幼い頃から精霊や神々の姿が見えていた悠理。
彼は美しい神社で、家族や仲間達に愛され、幸せに暮らしていた。
しかし、ある日、『燃える様な真紅の瞳』をした男と出逢ったことで、彼の運命は大きく変化していく。
幾重にも襲い掛かる運命の荒波の果て、悠理は一度解けてしまった絆を結び直せるのか――。
運命に翻弄されても尚、出逢い続ける――宿命と絆の和風ファンタジー。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。
冷遇された第七皇子はいずれぎゃふんと言わせたい! 赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていました
taki210
ファンタジー
旧題:娼婦の子供と冷遇された第七皇子、赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていた件
『穢らわしい娼婦の子供』
『ロクに魔法も使えない出来損ない』
『皇帝になれない無能皇子』
皇帝ガレスと娼婦ソーニャの間に生まれた第七皇子ルクスは、魔力が少ないからという理由で無能皇子と呼ばれ冷遇されていた。
だが実はルクスの中身は転生者であり、自分と母親の身を守るために、ルクスは魔法を極めることに。
毎日人知れず死に物狂いの努力を続けた結果、ルクスの体内魔力量は拡張されていき、魔法の威力もどんどん向上していき……
『なんだあの威力の魔法は…?』
『モンスターの群れをたった一人で壊滅させただと…?』
『どうやってあの年齢であの強さを手に入れたんだ…?』
『あいつを無能皇子と呼んだ奴はとんだ大間抜けだ…』
そして気がつけば周囲を畏怖させてしまうほどの魔法使いの逸材へと成長していたのだった。

アルファな俺が最推しを救う話〜どうして俺が受けなんだ?!〜
車不
BL
5歳の誕生日に階段から落ちて頭を打った主人公は、自身がオメガバースの世界を舞台にしたBLゲームに転生したことに気づく。「よりにもよってレオンハルトに転生なんて…悪役じゃねぇか!!待てよ、もしかしたらゲームで死んだ最推しの異母兄を助けられるかもしれない…」これは第2の性により人々の人生や生活が左右される世界に疑問を持った主人公が、最推しの死を阻止するために奮闘する物語である。
転生したけど赤ちゃんの頃から運命に囲われてて鬱陶しい
翡翠飾
BL
普通に高校生として学校に通っていたはずだが、気が付いたら雨の中道端で動けなくなっていた。寒くて死にかけていたら、通りかかった馬車から降りてきた12歳くらいの美少年に拾われ、何やら大きい屋敷に連れていかれる。
それから温かいご飯食べさせてもらったり、お風呂に入れてもらったり、柔らかいベッドで寝かせてもらったり、撫でてもらったり、ボールとかもらったり、それを投げてもらったり───ん?
「え、俺何か、犬になってない?」
豹獣人の番大好き大公子(12)×ポメラニアン獣人転生者(1)の話。
※どんどん年齢は上がっていきます。
※設定が多く感じたのでオメガバースを無くしました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる