107 / 114
学園編
104.街に雪
しおりを挟む
学園から帰ってきて、4日経ち、俺の体調が万全になり、外へ出る許可が出た。
そして、なんと今、街ではお祭りをしているらしい。そのお祭りの視察にルダン様と一緒に行くことになった。
メル様はすでに学園へ行き、屋敷にはいない。
何のお祭りかと聞いても、ルダン様は「行ってみれば分かる」としか答えてくれない。
馬車から景色を見ると、チラチラと雪が降ってきていた。今までここで暮らして来たが、屋敷の外では初めての雪を見た。
「ここでも、雪が降るんですか?」
「いや、初めてだな」
その言葉を聞いて、ひゅっと息を飲む。もしかして、俺が何かしたのかと不安になる。雪と俺は切っても切り離せない。俺がいることで、またあの時みたいに長い冬が……。
心が恐怖に支配されそうになる。しかしそれを見越したのか、ルダン様はぎゅうと俺を抱きしめてくれた。
「怖がる必要は無い」
俺は、彼の胸に顔を押し付ける。とくとくと鳴るルダン様の鼓動を聞きながら、心を落ち着かせる。ガタガタと音を立ててる馬車の音よりもルダン様の鼓動の方が大きく聞こえた。俺は彼を信じて目を瞑りながら、街に着く間、じっと待つ。
少しすると鼓動とは別の音、ドラムのような音が聞こえてきた。近づくに連れて色々な音が増えていく。金管楽器や弦楽器の音色が合わさる。
「聞こえるか?」
「ハイ」
顔を上げて、ルダン様の顔色を伺う。彼は優しげな顔をしていた。
馬車が止まり、扉が開かれる。ルダン様が先に出て、その手を取り降りる。馬車から降りると、騒ぐ声が大きくなった。音を消してしまう雪が消せないほどの音楽を奏でいた。
馬車の先に街の住民達が踊る。子供のキャッキャと遊ぶ声が響く。
その中心にキャンプファイヤーのように丸太が組まれていて、大きな炎が灯っていた。高く燃える炎が雪を溶かし、また炎の熱が届かない所は雪が白に染めた。キャンプファイヤーの近くには凍ったグリフがあった。そのグリフが雪を呼ぶのだという。
皆、楽しそうだった。寒ささえも嬉しそうだった。
「彼らは雪が降り始めてからすぐに祭りの許可を貰いに来たんだ」
「?」
「ここでは雪なんて降らないからな。珍しいんだろう」
「雪が珍しいからお祭りするんですか?」
「いや、ただの口実だ。祭りなんてこの地ではしたことが無い。他の領地の真似事もしたかったのだろうな」
つまりお祭りがしたいがために、雪が降ったという理由をつけたってこと?
ふと、彼らを見るととても楽しそうで、雪が降って良かったねと思ってしまった。
そして、なんと今、街ではお祭りをしているらしい。そのお祭りの視察にルダン様と一緒に行くことになった。
メル様はすでに学園へ行き、屋敷にはいない。
何のお祭りかと聞いても、ルダン様は「行ってみれば分かる」としか答えてくれない。
馬車から景色を見ると、チラチラと雪が降ってきていた。今までここで暮らして来たが、屋敷の外では初めての雪を見た。
「ここでも、雪が降るんですか?」
「いや、初めてだな」
その言葉を聞いて、ひゅっと息を飲む。もしかして、俺が何かしたのかと不安になる。雪と俺は切っても切り離せない。俺がいることで、またあの時みたいに長い冬が……。
心が恐怖に支配されそうになる。しかしそれを見越したのか、ルダン様はぎゅうと俺を抱きしめてくれた。
「怖がる必要は無い」
俺は、彼の胸に顔を押し付ける。とくとくと鳴るルダン様の鼓動を聞きながら、心を落ち着かせる。ガタガタと音を立ててる馬車の音よりもルダン様の鼓動の方が大きく聞こえた。俺は彼を信じて目を瞑りながら、街に着く間、じっと待つ。
少しすると鼓動とは別の音、ドラムのような音が聞こえてきた。近づくに連れて色々な音が増えていく。金管楽器や弦楽器の音色が合わさる。
「聞こえるか?」
「ハイ」
顔を上げて、ルダン様の顔色を伺う。彼は優しげな顔をしていた。
馬車が止まり、扉が開かれる。ルダン様が先に出て、その手を取り降りる。馬車から降りると、騒ぐ声が大きくなった。音を消してしまう雪が消せないほどの音楽を奏でいた。
馬車の先に街の住民達が踊る。子供のキャッキャと遊ぶ声が響く。
その中心にキャンプファイヤーのように丸太が組まれていて、大きな炎が灯っていた。高く燃える炎が雪を溶かし、また炎の熱が届かない所は雪が白に染めた。キャンプファイヤーの近くには凍ったグリフがあった。そのグリフが雪を呼ぶのだという。
皆、楽しそうだった。寒ささえも嬉しそうだった。
「彼らは雪が降り始めてからすぐに祭りの許可を貰いに来たんだ」
「?」
「ここでは雪なんて降らないからな。珍しいんだろう」
「雪が珍しいからお祭りするんですか?」
「いや、ただの口実だ。祭りなんてこの地ではしたことが無い。他の領地の真似事もしたかったのだろうな」
つまりお祭りがしたいがために、雪が降ったという理由をつけたってこと?
ふと、彼らを見るととても楽しそうで、雪が降って良かったねと思ってしまった。
12
お気に入りに追加
342
あなたにおすすめの小説
貴族家三男の成り上がりライフ 生まれてすぐに人外認定された少年は異世界を満喫する
美原風香
ファンタジー
「残念ながらあなたはお亡くなりになりました」
御山聖夜はトラックに轢かれそうになった少女を助け、代わりに死んでしまう。しかし、聖夜の心の内の一言を聴いた女神から気に入られ、多くの能力を貰って異世界へ転生した。
ーけれども、彼は知らなかった。数多の神から愛された彼は生まれた時点で人外の能力を持っていたことを。表では貴族として、裏では神々の使徒として、異世界のヒエラルキーを駆け上っていく!これは生まれてすぐに人外認定された少年の最強に無双していく、そんなお話。
✳︎不定期更新です。
21/12/17 1巻発売!
22/05/25 2巻発売!
コミカライズ決定!
20/11/19 HOTランキング1位
ありがとうございます!
冷遇された第七皇子はいずれぎゃふんと言わせたい! 赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていました
taki210
ファンタジー
旧題:娼婦の子供と冷遇された第七皇子、赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていた件
『穢らわしい娼婦の子供』
『ロクに魔法も使えない出来損ない』
『皇帝になれない無能皇子』
皇帝ガレスと娼婦ソーニャの間に生まれた第七皇子ルクスは、魔力が少ないからという理由で無能皇子と呼ばれ冷遇されていた。
だが実はルクスの中身は転生者であり、自分と母親の身を守るために、ルクスは魔法を極めることに。
毎日人知れず死に物狂いの努力を続けた結果、ルクスの体内魔力量は拡張されていき、魔法の威力もどんどん向上していき……
『なんだあの威力の魔法は…?』
『モンスターの群れをたった一人で壊滅させただと…?』
『どうやってあの年齢であの強さを手に入れたんだ…?』
『あいつを無能皇子と呼んだ奴はとんだ大間抜けだ…』
そして気がつけば周囲を畏怖させてしまうほどの魔法使いの逸材へと成長していたのだった。
【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する
エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】
最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。
戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。
目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。
ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!
彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!!
※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中
転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

オッサン、エルフの森の歌姫【ディーバ】になる
クロタ
BL
召喚儀式の失敗で、現代日本から異世界に飛ばされて捨てられたオッサン(39歳)と、彼を拾って過保護に庇護するエルフ(300歳、外見年齢20代)のお話です。
男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。
カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。
今年のメインイベントは受験、
あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。
だがそんな彼は飛行機が苦手だった。
電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?!
あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな?
急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。
さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?!
変なレアスキルや神具、
八百万(やおよろず)の神の加護。
レアチート盛りだくさん?!
半ばあたりシリアス
後半ざまぁ。
訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前
お腹がすいた時に食べたい食べ物など
思いついた名前とかをもじり、
なんとか、名前決めてます。
***
お名前使用してもいいよ💕っていう
心優しい方、教えて下さい🥺
悪役には使わないようにします、たぶん。
ちょっとオネェだったり、
アレ…だったりする程度です😁
すでに、使用オッケーしてくださった心優しい
皆様ありがとうございます😘
読んでくださる方や応援してくださる全てに
めっちゃ感謝を込めて💕
ありがとうございます💞
伯爵令嬢の秘密の知識
シマセイ
ファンタジー
16歳の女子高生 佐藤美咲は、神のミスで交通事故に巻き込まれて死んでしまう。異世界のグランディア王国ルナリス伯爵家のミアとして転生し、前世の記憶と知識チートを授かる。魔法と魔道具を秘密裏に研究しつつ、科学と魔法を融合させた夢を追い、小さな一歩を踏み出す。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる