雪も積もれば冬となる～悪役公爵家に愛されちゃった！？～

学園編

103.絵

　手紙を出した次の日に、返事の手紙を渡された。相変わらず手紙のやり取りが早く、前世で手紙を速達で頼んでも１日で返事が来ることはないよなと感心する。
　ワクワクしながら封筒をレターナイフで慎重に開けて、折ってある紙を広げた。ふわりとラベンダーのような花の香りがする。
　おばあ様からの手紙はこう書かれていた。

　ウェインさん、お手紙ありがとう。お手紙が届いてとても嬉しかったわ。
　学校でとても大変な事があったのね。あの魔法が貴方の役に立ったのなら、教えたかいがあったわ。
　感謝の言葉だけでも充分だけど、貴方に会えるならお伺いするわ。5日後くらいにはそちらにつけると思うの。滞在は１週間くらいするわ。
　よろしくね。

　とても綺麗な字で何回も読みたくなる手紙だった。手紙の縁も綺麗な花の絵が描かれていて見てるだけでも楽しい。俺も絵を書けばよかったかな？でも、俺の絵なんて貰っても嬉しくも無いか。

「おばあ様は絵がお上手なんですね」

　俺を膝の上に乗せてくれているルダン様に話しかけた。

「そうなのか？」
「ハイ。ここの花の絵なんてとても綺麗です」
「ウェインが言うのなら、そうなのかもな」

　ルダン様は興味深そうに、手紙の絵を撫でた。

「ウェインも描いてみるか？」
「俺の絵なんて上手くも無ければ、面白くも無いのですから」

　ふるふると横に首を振って断る。

「やってみなくては分からないだろう？私は君が描いた絵が見てみたい」
「でも、何の絵を描けばいいか分からないです」
「何でも良い。私でも、メルでも。君の好きなフラガでも」

　人を描くには難易度が高いけど、フラガなら描けるかも。三角に黄色い種を散らばせて、色を塗ったら完成だ。頭の中でシミュレーションすると上手く描けた。

「フラガなら」
「そうか。絵を描く機材は用意しておく。出来たら１番に見せてくれ」
「ハイ」

　ルダン様は俺を持ち上げて机の端に座らせる。視線がルダン様と同じくらいの位置になった。

「私の心を動かせるのは、ウェインだけだ。だから、きっと君が描いた絵も美しく見えるだろう」

　ルダン様は俺の前髪を触り、耳にかける。頬を撫でて、指先を顎の方へと滑らす。親指で唇を少しだけ開けされる。
　あ、これは、と勘づいた。顔が近づいて、口と口が合わさる。

「んっ」

　熱の塊のような舌が俺の中を蹂躙する。クチュクチュと水っぽい音が鳴っている。息をするのもやっとだった。ちゅうは何回しても慣れない。
　ルダンさまの熱が、俺に移ったように耳が熱くなった。