雪も積もれば冬となる～悪役公爵家に愛されちゃった！？～

学園編

101.帰る途中の馬車

　目が覚めて、最初に目にしたのはルダン様の顔だった。

「おはよう、ウェイン」
「おは、ようございます」

　喉が乾いて声が上手く出せなかった。俺はルダン様の腕の中で横抱きのような状態で眠っていたらしい。
　ガタガタと揺れているのは、馬車に乗っているからだ。
　俺が起き上がろうとすると、ルダン様がサポートしてくれた。膝の上に座る体勢で、水分補給の代わりとして、フラガを食べさせてくれる。
　それを微笑ましそうに見るメル様。
　徐々に頭がハッキリしてきた。多分、俺はメル様に抱えられるうちに意識を失ってしまったんだと思う。ルダン様とメル様と一緒に馬車にのっているってことはお家に帰っているのだろうと予測が出来たが、俺の意識が無くなったその後が気になったので、メル様に尋ねてみた。

「あの後、どうなったんですか？」
「グリフはまだ凍ってるから安心してちょうだい。あと、凍らせたのはルルってことになっているから。そこは覚えておいて」
「えっ、どうしてですか？」

　別に手柄が欲しいわけじゃ無いけど、疑問に思った。

「学園所有の森に雪が降り始めたのよ。奇異な天気を起こしたと、ウェインが虐げられないようにルルがそう進言したの。聖女様なら、奇跡で全部片付けられるから。本当の事を知っているのはオーガスト様のチームと私とお父様だけよ」
「そうだったんですね」

　ルルさんが俺なんかのために。やっぱり彼女は悪い人じゃないんだ。もしかしたら、本当のことを話しても彼女なら手を貸してくれるかもしれない。

「ウェイン」
「ハイ！どうしましたか？」

　名前を呼ばれてルダン様の顔を見る。すると、ムニムニと頬を触ってきた。

「君の口からも教えて欲しいくれ。最初から覚えている範囲で良いから」
「ふぁい」

　俺はちょっと喋りにくい状態のまま、合同授業での事を話した。

「そうか。ウェインは頑張ったんだな」
「おばあ様が教えて下さったおかげです！」

　おばあ様が教えてくれなかったら、きっと俺は逃げ惑って、皆に迷惑かけてしまうところだった。

「いや、ウェインは凄い。もっと誇って良い」
「そうよ。貴方は逃げなかったそれだけで十分凄いわ」

　2人から褒められて、ニヤケ顔になるのを押さえるのが難しい。こんなにも褒められるなんて思わなかった。
　そうだ、おばあ様にもちゃんとお礼を言わなくちゃ！

「あ、あの、お、おばあ様にお礼を言いたいです」
「あぁ、あの人に招待状を送ろうか」
「なら、ウェインに招待状を書いてもらいましょう！お父様！」
「それは良いな」

　とんとん拍子に話が進んでいき、いつの間にか俺が招待状を送ることになってしまった。