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学園編
100.領民視点
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「父ちゃん!父ちゃん!なんか降ってる!」
子供が喜び、外を跳ね回っている。子供の声に誘われて外に出た。
「なんじゃこりゃ?」
掴もうとした白い粒は、手のひらに当たるとすぐに消えてしまった。
「父ちゃんも知らないの?」
「こんな不思議な天気、俺が知るわけ無いだろ」
「えぇ?」
息をすると白くなっている事に気づいた。それが身体に触れると、徐々に熱を奪っていった。
「さむ~い!つめた~い!」
キャッキャッと子供は初めての感覚に興奮する。
「何をしてるの?」
「白くて冷たいものが降ってるの!」
「何か分かるか?」
子供が騒ぐ声に妻も家から出てきた。子供が上を向くと釣られて妻も上を向く。
妻はこの土地どころかこの国の人間ではなかったから、こういう天気も知っているだろう。
「しろい?」
それから妻は何かにハッとしたように目を丸くした。
「そうだわ、雪よ。これは雪!」
「えっ!これがあのゆき!?」
「雪だと!」
俺と子供は、妻が言った言葉にはしゃぐように声を出した。
「初めて見た!」
「凄いな、これが雪か!」
雪だと聞くと、この冷たさまでもが気に入った。
「雪が積もれば、雪だるまも作れるかな!?」
「えぇ、積もればね」
この土地に雪が降るなんて、奇跡としか言いようがない。
「ちょっと友達と遊んでくるね!」
「遅くなるなよ?」
「うん!」
ワクワク、キラキラと目を輝かせながら子供は遊びに出かけた。
「あの国にいたときは、雪なんて憎くて憎くてしょうが無かったけど、今はこんなに恋しく思えるのは不思議だわ」
「雪が嫌で飛び出して来るくらいだもんな」
「そうよ。国を出てから、ようやく分かったの。雪は何も悪くないの。だって、ただの天気だから。悪いのは、弱みにつけ込んで搾取した人間の方だったのよ」
妻は手のひらに落ちてきた雪をぎゅっと握って開く。雪はあっという間に溶けて儚く消えた。
妻の国は冬が来ると、作物が育たなくなり、何も手に入らなくなるという。それなのに、国や領主はいつも通りの税を収めなければならなかったとも聞いた。故に貧困が増していったのだとも。それを全て雪のせいにしたのは、国による洗脳教育だったらしい。
初めて会った時、雪というものに憧れを持っていた俺とは反対に妻は雪を憎み、冬がないこの領地を喜んでいた。それが時が経っていく事に恨み言が少なくなっていき、子供に聞かせるほど緩和していった。
今では、その片鱗さえ見えなくなった。
「帰りたいか?」
「まさか。私はずっと貴方の傍にいたいの」
国に家族も残してこちらに渡ってきたからそう聞くと、妻は首を横に振った。
妻の答えがどれほど嬉しいのか、きっと彼女は知らないだろう。
子供が喜び、外を跳ね回っている。子供の声に誘われて外に出た。
「なんじゃこりゃ?」
掴もうとした白い粒は、手のひらに当たるとすぐに消えてしまった。
「父ちゃんも知らないの?」
「こんな不思議な天気、俺が知るわけ無いだろ」
「えぇ?」
息をすると白くなっている事に気づいた。それが身体に触れると、徐々に熱を奪っていった。
「さむ~い!つめた~い!」
キャッキャッと子供は初めての感覚に興奮する。
「何をしてるの?」
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妻はこの土地どころかこの国の人間ではなかったから、こういう天気も知っているだろう。
「しろい?」
それから妻は何かにハッとしたように目を丸くした。
「そうだわ、雪よ。これは雪!」
「えっ!これがあのゆき!?」
「雪だと!」
俺と子供は、妻が言った言葉にはしゃぐように声を出した。
「初めて見た!」
「凄いな、これが雪か!」
雪だと聞くと、この冷たさまでもが気に入った。
「雪が積もれば、雪だるまも作れるかな!?」
「えぇ、積もればね」
この土地に雪が降るなんて、奇跡としか言いようがない。
「ちょっと友達と遊んでくるね!」
「遅くなるなよ?」
「うん!」
ワクワク、キラキラと目を輝かせながら子供は遊びに出かけた。
「あの国にいたときは、雪なんて憎くて憎くてしょうが無かったけど、今はこんなに恋しく思えるのは不思議だわ」
「雪が嫌で飛び出して来るくらいだもんな」
「そうよ。国を出てから、ようやく分かったの。雪は何も悪くないの。だって、ただの天気だから。悪いのは、弱みにつけ込んで搾取した人間の方だったのよ」
妻は手のひらに落ちてきた雪をぎゅっと握って開く。雪はあっという間に溶けて儚く消えた。
妻の国は冬が来ると、作物が育たなくなり、何も手に入らなくなるという。それなのに、国や領主はいつも通りの税を収めなければならなかったとも聞いた。故に貧困が増していったのだとも。それを全て雪のせいにしたのは、国による洗脳教育だったらしい。
初めて会った時、雪というものに憧れを持っていた俺とは反対に妻は雪を憎み、冬がないこの領地を喜んでいた。それが時が経っていく事に恨み言が少なくなっていき、子供に聞かせるほど緩和していった。
今では、その片鱗さえ見えなくなった。
「帰りたいか?」
「まさか。私はずっと貴方の傍にいたいの」
国に家族も残してこちらに渡ってきたからそう聞くと、妻は首を横に振った。
妻の答えがどれほど嬉しいのか、きっと彼女は知らないだろう。
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