雪も積もれば冬となる~悪役公爵家に愛されちゃった!?~

コータ

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学園編

97.合同授業6

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 それはいきなりだった。透明な壁に最後の雪玉が当たると、ガラスが盛大に割れたような音が鳴り響き、グリフが前脚を上げたまま固まった。
 壊れた雪玉は小さな雪の山となり、冷たい風が吹くと、空に舞い上がる。辺りは音さえも消えてしまったかのように静まり返った。

 チラリ、チラリと白い小さい結晶が降る。誰かが大きく息を吐くと、息は白く染まり口から出ていく。
 結晶は気温を下げ、体温を奪っていった。

 ガチッと、誰かが歯を鳴らした。それを合図に俺を除いて身体を震わせ始める。ガタガタ、ガチガチ。誰も動けなくなった。

 俺は気力を使い果たして、ボォっと立っていた。やがて力が抜けていき、クラリクラリと身体が揺れる。

「あっ、メル様」

 奥の方からゆったりとメル様が姿を見せた。俺はニコリと笑って手を振る。例え、視界がぼやけていてもすぐに分かる。だって、ずっと傍にいたから。

「頑張ったわね」

 メル様にそう言われて、俺は「ハイ!」と元気に答えてみせた。
 メル様は俺の頭を自分の肩に寄りかからせる。そのまま身体を預けると、メル様は少ししゃがんで俺の膝の裏を掬い、横抱きにした。

「炎の守護を"フレイガード"」

 温かい魔力が全身を包んだ。燻る灰の匂いと甘い香りが安心させる。

「オーガスト様、ご無事そうで何よりです」
「これが無事だと?これが!?そもそもお前ならもっと早く助けに来れなかったのか?」
「それは申し訳ありませんでした。私が呼ばれなかったので必要ないと思いましたので。それに側近は何をしていたのですか?この程度で狼狽えるなぞ修練不足では?」

 誰かがメル様と口論している。でも、俺には誰か分からないし、何を言っているのか分からなかった。メル様は激昂している誰かと違い、冷静に返していた。その声は冷たさも感じられる。

「メル様」
「ウェイン、帰りましょうね」
「ハイ」

 心配して声を掛けると、いつもの優しい声に戻る。

「皆様方は、私の後ろについてきてください」

 メル様が歩きだすと、その後ろを歩く人達の足音。メル様は、俺をずっと褒めながら森の中を歩いていく。

「ウェイン、よく頑張ったわ。やっぱり貴方は凄い子よ。あんなに怖がっていたのに、立ち向かえるなんて凄いわ」
「かっこよかったですか?」
「勿論。きっとお父様も惚れ直してくれるわ」

 その言葉がお世辞でも嬉しかった。
 メル様の腕の中で揺られていると、徐々に眠たくなってくる。
 きっと運命を変えられた。これでメル様の運命も変わる。夢現の中で、俺はルダン様の迎えを待っていた。
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