雪も積もれば冬となる~悪役公爵家に愛されちゃった!?~

コータ

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学園編

88.似ている親子

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 頬に温かい何かが触れて、目が覚める。ゆっくりと、瞼を上げるとそこにはメル様がいた。メル様が俺の頬を撫でたらしい。

「お帰りなさい……」
「ただいま。調子はどう?」
「……大丈夫です」

 俺は喉が乾いてガサついた声で答えた。眠ったおかげで、身体の調子はだいぶ良くなってきている。

 夢を思い出した。そうか、あれは夢だったのか。過去を夢に見る程、ルダン様に会いたかったんだと気づいた。

「そうね。ほっぺも赤みが戻っているわ。ご飯は食べられる?」

 俺は首を横に振った。もしかしたら、吐いてしまうかもしれないから食事はまだ無理だった。

「じゃあ、フラガはどう?」

 メル様は、小皿乗ったフラガを見せる。真っ赤に熟されたフラガがとても美味しそうだった。

「食べます」

 即答した俺にメル様は苦笑する。

「身体は起こせるかしら?」
「ハイ」

 そう頷いたものの身体を起こすだけでも四苦八苦する俺に、メル様は背中を支えて助けてくれた。やっぱりまだ本調子とまではいかないようだ。なんでこの身体は、すぐに調子が悪くなるのだろうかと心の中で自分に悪態をつく。
 そのあと身体を起こした俺に、メル様はフラガを口元に運んでくれる。

「俺、一人で食べられます」
「でも、私にやらせて。ね?」

 メル様におねだりたら、しょうがないよね。俺は口を開けて、食べさせてもらう。
 でも、本当は俺がそこまで元気じゃないことを見越しいるからこその提案ってことに気付いている。俺が気にしないように、気を使っているメル様は優しい。

「あーかわい」

 メル様は口癖のように呟いた言葉を言う。そんなに可愛く無いと思うけど、メル様の思考が分からない。

 一口で食べられるほどの小ぶりのフラガ。赤くつやつやとしていて、噛めば、じわりと甘酸っぱい果汁が流れる。たらりと口から溢れた果汁を、メル様が白いハンカチで拭ってくれた。

「懐かしいわ。ちょっと前はこうしてあげてたのよ。覚えてる?」
「ハイ」

 俺が動けなかった時、1番にお世話してくれていたのがメル様だった。懐かしい。でも、今もこうしてお世話してもらっているんだから、全然成長していない事に自分でがっかりする。

「いつもありがとうございます」
「別にずっとこのままでいても良いのよ?私、ウェインに頼られるの、嫌いじゃないもの」

 感謝を述べると、メル様は俺の頭を撫で微笑む。彼女の言葉に、やっぱりメル様とルダン様はよく似ているなと思う。それでいて、メル様の愛情にくすぐったい気持ちになった。

「はい、もう一つどうぞ」

 メル様に促されて、口を大きく開ける。今度は口を汚さないように気を付けながら咀嚼した。
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