雪も積もれば冬となる~悪役公爵家に愛されちゃった!?~

コータ

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学園編

81.体調不良

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「ウェイン、起きられる?」

 俺はメル様の言葉で目を覚ました。昨日、メル様と話しすぎて、起きられないみたいだ。ちょっと、夜更かしし過ぎた。俺の話とこれからの事を話をしていたら、すっかり夜は更けていた。
 いつもならメル様が起きる前に起きて、自分の準備をしてるはずなのに。

「体調悪い?」

 俺はコクリと頷く。身体がどろりと液体のようで、動こうにも動けない。

「そう。なら、今日は休みなさい。私一人でも平気よ」
「ごめんなさい」

 最近、ずっと謝ってばかりだ。情けなくて、涙が出た。

「謝らなくて良いのよ。きっと、あの子が来て疲れちゃったのね?」

 メル様は優しく頭を撫でてくれる。それだけで、ダルさが少し取れたように感じた。

「辛いならグレイを呼んでも良いわよ?」

 グレイさんを呼ぶということは、ディゾル家の屋敷に帰るということだ。つまりその間、学校に通えなくなる。それだけは避けたい。だって、もしメル様に何か合ったらと思うと、俺はルダン様に顔向け出来ない。
 俺は慌てて否定する。メル様が先に連絡しないように。

「大丈夫ですから」
「本当に?」
「はい」
「分かったわ。でも、無理は禁物よ?辛くなったら、ちゃんと報告するのよ?」
「はい」

 それを最後に俺は気を失ったようで、気づけばメル様はいなくなっていた。部屋を出てから時間が経っていることは、冷たく暗い空気がそれを示していた。

 少し目を開けるだけで世界は回り、吐き気が襲ってくる。内臓が凍てつくように冷えていき、吐く息も寒さを増すばかり。頭にはまるで重しを乗っけているかのようにじわりと重い。

 もう1度、寝ようとして目を瞑れば、思い浮かぶ不安。メル様、どうかご無事で、と祈ることしか出来ない。大げさに感じるかもしれないが、心細くなるとどんどん思考は暗くなっていく。
 一人が寂しくなって、苦しくなって、涙が溢れスンスンと鼻を啜る。

「ニャアオン」

 野太い鳴き声がベッドの隣にやって来た。
 薄目を開けると、そこにはシュウセツがいた。初めて会った時の数十倍にも大きなったシュウセツは、俺を丸ごと囲むように丸くなる。

「シュウセツ、ありがとう」

 重い身体を動かして、シュウセツの頭を撫でると、嬉しそうに喉をゴロゴロと鳴らした。
 シュウセツが呼吸する度に赤色の首輪と着けたチャームがゆらゆらと動く。

 その首輪を見て、俺はルダン様との初めてのデートを思い出し、不安はすっかり消えていた。
 シュウセツのふわふわな毛に顔を埋めると、ほのかな花の香りがして訪れた眠気に抗わず、目を閉じた。
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