雪も積もれば冬となる~悪役公爵家に愛されちゃった!?~

コータ

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学園編

80.メル視点

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 ウェインを問いただし、全て知っていることを吐かせた。
 私に秘密にしていた罰として、ウェインの頬をキリキリとつねる。勿論、手加減はしている。手加減無しであれば、ちぎれてしまうもの。
 ウェインはその罰を甘んじて受けて、シクシクと泣いている。

 リラという子は、転生者という前世の記憶を持つ。そして、それはウェインも同じだった。別にリラが、別にどう思おうが気にならない。だって、取るに足らないような子だ。でも、それを言葉にし態度に示すことは意味が違くなる。私を侮辱することは、ディゾル家も侮辱するということ。つまり、無礼な行動には仕返しをしなければならない。
 まぁ、彼女の事は今は置いといて……。ウェインが私を、私達を普通の人のように扱う理由がようやく知れた。そもそも私達を人として扱うことすらもこの国では異常で。だから、別の世界で生きていたという理由があり、常識が異なっていた事に私は一人納得した。

 そしてウェインが私に内緒だった理由は、ゲームの中で私が処刑されるからだった。私はそんなこと気にしないが、ウェインは特に気にしているようで、話をする時、とても心苦しそうにしていた。
 お父様が私に話さなかった理由は、多分、ウェインを気遣ったのだろう。あの人は私を気遣うという心を持てないから。

「……馬鹿な子」

 私は呆れてしまった。けれど、愛しいと思った。
 私のことを心配してくれる人なんて、他にいない。お父様も、私を産んだ実母も、婚約者も、ディゾル家の使用人でさえ、誰も私の事を心配なんてしない。それが当たり前だったのに。
 ウェインはそうしてくれる。物語に出て来る母親のように心配してくれるのだ。それが何よりも愚かで愛しいと思う。

「ご、ごめんなさいぃ」

 ポロポロと綺麗な涙を流すウェイン。肌が傷つかないように、ハンカチでナミダをそっと拭う。

 契約で縛られた人生。与えられた役目。魔道具によって感情は制御される。私はあの時まで、ずっとずっといろんな事を諦めていた。ウェインと出会うあの日まで。
 あの日、やって来た彼は傷んだ黒髪、布切れのような服、真っ黒な首輪に瞳は閉じていた。傷だらけで、それでも人を思う気持ちを持つ優しい心の人。

「……ねぇ、ウェイン。貴方、今幸せ?」
「えっ?ハ、ハイ。幸せです」

 唐突に聞いた私の言葉に、泣くのも忘れて目を丸くするウェイン。私はその可愛さにようやく抓っていた手を離した。

「それなら、全部許してあげる!」

 空っぽな私の心に息を吹き込んでくれたのは、ウェインだった。ウェインもそうであれば良いと願っている。
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