雪も積もれば冬となる~悪役公爵家に愛されちゃった!?~

コータ

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学園編

76.聖女リラ

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「はじめまして!私はリラ!氷の女神から聖女に選ばれた者です!」

 日差しでキラキラと輝きながら、ニコリと笑う主人公。リラはゲームの中のデフォルトの名前だと、思い出した。
俺はとうとうゲームのストーリーが始まるのだと、武者震いする。絶対にメル様を、守ってみせる。

 今から1年前に、俺は学園に入ることが出来た。それはルダン様を始め、いろいろな人が支えてくれたからである。

 彼女はクラスを見渡して、メル様に、笑いかけた。俺はギュッと自分の小指に着けている指輪を触る。

「メルさん、申し訳ないのだけれど、少しの間、彼女の面倒を見てくれないかしら?」
「了解しましたわ」

 先生はメル様を指名した。
 何故、メル様なのだろう?だって、他にきっともっと適任がする人がいるはずだ。なのに、メル様を選んだ。これは所謂、運命の矯正力といものなのかもしれない。
 考え込む俺を素通りして、彼女はメル様の前に立った。

「初めまして!私は、リラです。仲良くしてください!」
「初めまして。私はメル・ディゾル。こちらこそよろしお願いしますわ」

 メル様も立ち上がり、リラさんと握手する。俺も慌てて、立ち上がりメル様の後ろで行儀良く待つ。

「この子は、私の付き人のウェインよ。この子も仲良くしてあげてくださいね?」

 メル様は俺の紹介をすると、リラさんは目を見開き、「えっ!?」という大きな声を上げる。

「どうかしたのかしら?」
「あ、あのぉ、その人とはどこでお知り合いに?」
「はぁ?」
「い、いえ、何でもございませんわ。オホホホ」

 リラさんは、まるで漫画のお嬢様のように高笑いして、せかせかと距離を取って自分の席に座った。
 リラさんと俺達の席は離れている。俺が1番端の窓側で、その隣がメル様。その真逆である1番前が、リラさんの席だった。

「無礼な子だわ。ウェインを見下すようなことを言って」

 メル様が小さく呟く。怒りで少し彼女の周りの温度が上がった。俺はそれを中和するように、ふぅと息を吐く。ルダン様に魔法の先生をつけてもらったので、このぐらいのことならお手の物だ。

「私は平気ですから。座りましょう?授業が始まってしまいます」
「……そうね。授業は大切だわ。でも、後でどんなにウェインが私達にとって大切な人か分からせてあげましょうね」

 フフフと笑う姿に、耳をすまして聞いていたクラスメイト達は顔を青くした。それは、俺が来た初日に教室半壊事件があったからだ。
 あれはメル様を宥めるのが大変だった。俺は1年前を思い出して、遠い目をした。
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