雪も積もれば冬となる~悪役公爵家に愛されちゃった!?~

コータ

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公爵家編

73.ドレスの真実

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 日が暮れて、俺はメル様のもとに顔を出した。すると、指輪に気付いたメル様は嬉しそうに俺の両手を取る。

「良かったわ!上手くいったのね!お父様はズルいけど、おめでとう!ウェイン!」
「ありがとうゴザイマス」
「これで私のお母様になるのね!?」

 え?
 俺は思考を止める。固まった俺を、放置してメル様は話し続ける。

「お母様と一緒にお食事に行ったり、ショッピングしたりするのが夢だったのよ!」

 メル様は目を輝かせる。しかし急に打って変わって、落ち込む。

「明日から学園なのよね。もう少し早ければ」

 はぁと重いため息を吐くので、そっと肩に手を置いた。くるりと身体を翻して、メル様は俺を抱きしめる。

「お母様と呼んでも良いかしら?」

 ギュウとしながら、ゆらゆらとあやすように動かれて、釣られて俺も動く。

「えっ、と」
「そうよねぇ。まだ婚姻もしてないから、困るわね?」

 もう1度、はぁと名残惜しそうにため息を吐く。そんなメル様に同情して、つい言ってしまった。

「……1度だけなら」
「本当!?じゃあ、ウェインもメルって呼んで!!」

 頷くと俺をパッと離して、恥ずかしそうにモジモジと恥じらう。

「お、お母様っ」
「……メル」

 メル様を呼び捨てにするのは少しだけ勇気がいった。
 メル様は、自分のスカートを握ってグーッと引っ張る。それから、足をバタバタと動かして、口元は緩んでいた。その様子は、1度、冷静になろうとしたが嬉しすぎて失敗したかのようだった。
 メル様の頬は、林檎のように赤く染まって、興奮していることが分かる。こんなに喜んでくれるなら、ちゃんとしたら、メル様のお母様になれるよう努力してみても良いかもと、俺は少し絆されていた。

「はっ!そうだわ!聞くのを忘れていたわ」

 メル様目をパッチリと開けて、何かを思い出したようだ。
 俺の耳元に近寄って、小さな声で話す。

「初夜はどうだった?お父様に優しくしてもらったかしら?」

 今度は俺が顔を赤くする番だった。まさかメル様からそんな言葉を聞かれるなんて、思ってもいなかった!

「ど、ういう?」
「あら?しなかったの?せっかく、ドレスまで用意してお膳立てしたのに?」

 まるで不思議そうに首を傾げた。メル様が言うには、あのドレスは花嫁が着て、初夜にズボンを脱いで花婿を受け入れる伝統的なものらしい。そんなの初めて聞いたし、もしかして、あの場にいた人達も……?

「る、ルダン様も知っているんデスカ?」
「当たり前よ??……ウェイン?大丈夫?」

 その事を聞いた俺はルダン様に回収されるまで、そこで固まってしまった。
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