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公爵家編
50.ルダン視点
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執務室にメルとメイドが入ってきた。メルはそのメイドの手を掴んでおり、肌に直接触っている事から彼女のお気に入りの存在ということが分かった。
しかし、そのメイドはメルの影に隠れ、更には俯いている為、顔が見えない。
「ほら、ちゃんと見せてあげなきゃダメよ」
メルに促されて、メイドは顔を上げた。私は、その顔を見て衝撃を受けた。
「ウェイン!?」
私が声を上げると、すかさずメルの後ろに隠れてしまった。
「ちょっとお父様!ウェインを驚かせないで下さい」
「……あぁ、すまない」
「ほら、ウェイン。ちゃんとお父様の所に行ってあげて」
背中を押されて、ウェインはトトッと前に出る。私は、彼をよく見る為に近寄った。
ウェインは黒のメイド服と白のエプロンを着ていた。裾の部分が花柄のレースになっており、肌が透けて見え、まるで顔を赤らめたようなメイクに心が跳ねた。
モジモジと恥ずかしそうにしているウェインを抱き上げる。また俯こうとする彼の顎を押さえた。
「顔をよく見せてくれ」
落ち着きがなく、目を合わせてくれない。
「ふふっ、立場が逆になりましたわね。ウェインはお父様が避けているから寂しがっていたんですよ」
「そうなのか……?」
「メル様、イッチャダメ!」
「あら、ごめんなさい」
ウェインに注意されようと、メルは全く反省の色がない。
「寂しくさせてすまないな」
ウェインの俺の言葉を聞くと、肩に顔を埋めて、黙ってしまった。私はそのままソファに座り、メルが隣に座る。
「お父様、私、良い事を考えましたの。聞いてくださるかしら?」
「あぁ」
「王立学園には、付き人制度がございましょう?それを利用してウェインを私の付き人として、編入させるんです。そうすれば、ある程度学力が低くても平気ですわ。これで、ウェインが願いも叶えて、王立学園を卒業したという事実が出来ます」
「事実?」
メルはパチリとウィンクした。何か嫌な予感がして、ウェインの耳を塞ぐように強く抱きしめた。ぐぇっと、潰れたような悲鳴が聞こえたが離す気はない。
「夫人には、再婚にしてもある程度の立場が必要です。それなら王立学園卒業ということで箔をつけれるのでは?」
さ、さいこん……。私はウェインが隣にいることを想像し、腕の力を強くした。
「それに、メイドが公爵夫人になるなんて、恋愛小説のようですわ!」
楽しそうに、パンッと手を合わせて片頬に持っていくメル。私はその仕草を見て、力が抜ける。プハッとウェインが息を吸う音が聞こえた。
「それが狙いか」
「いえ、真の目的は別にありますわよぉ」
メルはオホホホと、高笑いするが、一体何の小説に影響されたのか。私は呆れてしまう。
「ルダン様?」
心配そうにウェインは、私の顔を伺う。そうだ、私は彼を守らなくては。
誰よりも心優しく、冷たい彼を。
「大丈夫だ」
「ヨカッ……クシュンッ!」
ウェインのくしゃみで、私は慌ててジャケットを脱いで彼にかけ、ハンカチで顔を拭いてあげた。彼は腕を交差して、服を落とさないようにギュッと前を押える。
動作の1つ1つでウェインは、簡単に私の心臓を燃やしてしまう。私は息を掃いてその炎を静める。
「メル、その案は良いが、ウェインにはしっかり服を着せるように」
「畏まりましたわ」
私の命令にカーテシーを返すメルを見て、部屋を出る。
「さぁ、ウェイン。早くガーデンに帰って暖まろうな」
ウェインがこれ以上冷えないように、私は速足で向かった。
しかし、そのメイドはメルの影に隠れ、更には俯いている為、顔が見えない。
「ほら、ちゃんと見せてあげなきゃダメよ」
メルに促されて、メイドは顔を上げた。私は、その顔を見て衝撃を受けた。
「ウェイン!?」
私が声を上げると、すかさずメルの後ろに隠れてしまった。
「ちょっとお父様!ウェインを驚かせないで下さい」
「……あぁ、すまない」
「ほら、ウェイン。ちゃんとお父様の所に行ってあげて」
背中を押されて、ウェインはトトッと前に出る。私は、彼をよく見る為に近寄った。
ウェインは黒のメイド服と白のエプロンを着ていた。裾の部分が花柄のレースになっており、肌が透けて見え、まるで顔を赤らめたようなメイクに心が跳ねた。
モジモジと恥ずかしそうにしているウェインを抱き上げる。また俯こうとする彼の顎を押さえた。
「顔をよく見せてくれ」
落ち着きがなく、目を合わせてくれない。
「ふふっ、立場が逆になりましたわね。ウェインはお父様が避けているから寂しがっていたんですよ」
「そうなのか……?」
「メル様、イッチャダメ!」
「あら、ごめんなさい」
ウェインに注意されようと、メルは全く反省の色がない。
「寂しくさせてすまないな」
ウェインの俺の言葉を聞くと、肩に顔を埋めて、黙ってしまった。私はそのままソファに座り、メルが隣に座る。
「お父様、私、良い事を考えましたの。聞いてくださるかしら?」
「あぁ」
「王立学園には、付き人制度がございましょう?それを利用してウェインを私の付き人として、編入させるんです。そうすれば、ある程度学力が低くても平気ですわ。これで、ウェインが願いも叶えて、王立学園を卒業したという事実が出来ます」
「事実?」
メルはパチリとウィンクした。何か嫌な予感がして、ウェインの耳を塞ぐように強く抱きしめた。ぐぇっと、潰れたような悲鳴が聞こえたが離す気はない。
「夫人には、再婚にしてもある程度の立場が必要です。それなら王立学園卒業ということで箔をつけれるのでは?」
さ、さいこん……。私はウェインが隣にいることを想像し、腕の力を強くした。
「それに、メイドが公爵夫人になるなんて、恋愛小説のようですわ!」
楽しそうに、パンッと手を合わせて片頬に持っていくメル。私はその仕草を見て、力が抜ける。プハッとウェインが息を吸う音が聞こえた。
「それが狙いか」
「いえ、真の目的は別にありますわよぉ」
メルはオホホホと、高笑いするが、一体何の小説に影響されたのか。私は呆れてしまう。
「ルダン様?」
心配そうにウェインは、私の顔を伺う。そうだ、私は彼を守らなくては。
誰よりも心優しく、冷たい彼を。
「大丈夫だ」
「ヨカッ……クシュンッ!」
ウェインのくしゃみで、私は慌ててジャケットを脱いで彼にかけ、ハンカチで顔を拭いてあげた。彼は腕を交差して、服を落とさないようにギュッと前を押える。
動作の1つ1つでウェインは、簡単に私の心臓を燃やしてしまう。私は息を掃いてその炎を静める。
「メル、その案は良いが、ウェインにはしっかり服を着せるように」
「畏まりましたわ」
私の命令にカーテシーを返すメルを見て、部屋を出る。
「さぁ、ウェイン。早くガーデンに帰って暖まろうな」
ウェインがこれ以上冷えないように、私は速足で向かった。
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