雪も積もれば冬となる～悪役公爵家に愛されちゃった！？～

公爵家編

41.ルダン様VS.メル様

　メル様と共に、部屋でリハビリをしていると、急にグレイさんが顔をしかめ始めた。
　メル様が俺を横抱き、扉から距離を取る。庇うようにグレイさんが前に立った。漂う緊張感に息を飲む。
　シュウセツは「シャーッ」と毛を逆立てて、威嚇した。

　数分後、合間から見えたのは、扉がとろりと溶岩のように溶けるところだった。そして、部屋に入ってきたのは、ルダン様だった。
　顔を顰めて、触った所を溶かしていく。

「ウェイン……」
「ルダン、サマ？」

　俺の名前を呼び、コチラを向いたルダン様が見えた。ルダン様の瞳は揺れていて、焦点が合っていない。

「これじゃあ、グレイでは手に余るわ。グレイ、ウェインをお願い。お父様のお相手は私がするわ」

　俺はグレイさんに受け渡され、メル様はゆっくりとルダン様に近寄る。

「全く、お父様ともあろう者が正気を失うなんて呆れますわ」

　ため息と共に、言葉を吐く。

「ウェイン、ウェイン……」
「"フレイムファン"舞いなさい！炎の花びらよ！」

　メル様の手に燃え盛る炎で作った扇子が現れた。その扇子で扇ぐと半透明の赤色の花びらが舞う。花びらは、ルダン様の身体を切り刻んでいった。
　それでも、ルダン様の歩みは止まらない。それどころか、ドンッドンッと炎の柱がいくつも立ち上る。熱風が凄い勢いで吹いた。堪えきれなかったシュウセツは「ニャッ」と、悲鳴を上げて転がっていく。

「シュウセツ！」

　俺が手を伸ばすと、グレイさんは落とさないように、より力を込める。
　炎の柱が舐めるように天井を焼き、他の場所まで燃え写っていく。
　メル様はルダン様から目を離さない。

「弾けなさい"スパークスプレッド"！」

　花びらがルダン様に当たり、バンッと爆弾のように弾ける。けれど、ルダン様には効いていないようだ。
　ギリぃとメル様が歯を食いしばる音が聞こえた。

「流石、歴代最強ですわね。もうこれしか無いようですね」

　広げた扇子を閉じると、扇子も花びらも跡形もなく消えた。メル様はスカートをたくし上げて、裾から燃えていくと、赤いズボンになった。

「赤の聖剣"ローズエッジ"」

　燃える剣が作られ、メル様は握り、ルダン様に向かっていく。振り上げた剣は、彼に当たること無く、赤いキラキラによって阻まれる。

「どうして、そんなに正気を失っておられるのですか！その状態で、ウェインに触れたらどうなるのか、分からないのですか！？」

　剣を振り回しながら、メル様は必死にルダン様に言葉をかける。
　剣はキンッと金属のような音を立てて弾かれていく。やがて、剣はルダン様の手で掴まれて動けなくなった。

「邪魔をするな！」

　ルダン様の怒鳴り声で、剣が炎を伝っていき、メル様の腕を燃やしたが、彼女は引かなかった。