雪も積もれば冬となる~悪役公爵家に愛されちゃった!?~

コータ

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公爵家編

36.してはいけないこと

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 ソファに座った後、3人で食事をした。しかし、目が覚めたシュウセツに邪魔されてしまった。

「み~!」

 高い声で叫ぶシュウセツ。ひょっこりとバスケットから顔を出して、バランスを取れず、後ろに倒れた。何度も挑戦しても、バスケットから抜け出せない。

「かわい!」
「カワイ!」

 俺とメル様の声が揃う。
「み~」と鳴く声が続き、俺はルダン様の顔を見た。連れて行って欲しいけど、伝わるかな?
 ルダン様はしかめっ面をして、俺はどうしてそんな顔をしているのか分からない。その顔のまま、シュウセツの所まで向かってくれた。
 そっとベッドに座らせてくれて、バスケットの中にいたシュウセツを掴んで渡した。
 シュウセツは精一杯、抵抗してルダン様の手を引っ掻いたり噛もうとしていた。けれど、ルダン様には、一切傷つかない。

「シュウセツ」

 俺が怒る意味を込めて、名前を呼ぶ。乗せられた膝の上でシュウセツは、ばつが悪そうに「み~」と鳴いた。

『ダメだよ。人を傷つけちゃダメ!』

 俺の知っている言葉で注意する。分かってくれたかな?
 思いは伝わらず、シュウセツは俺の手で遊び始めた。ガジガジと指を甘噛したり、ゴロゴロと身体を器用に回る。
 俺がシュウセツに夢中になっていると、ルダン様に呼ばれた。

「ウェイン」

 ルダン様の方を見ると、やっぱり不機嫌な顔して、フォークに刺さったオニクを差し出していた。オニクにはソースがたっぷりとかかっていて、今にも零れそうだ。俺は慌てて、口に迎え入れる。
 少しだけ噛みごたえのある肉の肉汁がじゅわと口に広がる。多分、玉ねぎのような野菜を使ったソースは、甘さが少しあってさっぱりしている。

「オイシ!」

 モグモグとオニクに夢中になっていると、シュウセツが力を入れて噛んできた。

『いたっ!』

 慌てて手を引き離して見てみると、ぷくりと赤い血が膨れた。
 シュウセツは「み~」と、反省したように鳴くが、それで許すわけにはいかない。
 もし違う人にやってしまったら?そう考えると、ちゃんと、ちゃんと躾けなきゃ……。
 自分でも息が、荒くなるのが分かる。

『悪い子には罰を』

 傷つけられた手を振り上げた。「みー」と、シュウセツが鳴いている。近くにいるはずなのに、何故か遠くに感じた。
 上げた手を、振り下ろす。自分を取り戻せた時には、もう止められる状況だった。

 誰か!助けて!

 パシッと手首を掴まれて、シュウセツに当たる直前で止まる。
 ホッとしたのと同時に罪悪感が襲ってきた。

 俺は、何を?こんなに小さな子に何をしようとした?

 手首を握られたまま、考える。シュウセツより悪い子は俺じゃないか。なら、罰を当たるべきは俺では?

「お前は調子に乗り過ぎだ。メル、コイツを」
「はい、分かりましたわ」

 シュウセツがバスケットの中に移動させられた事にも、そのバスケットを持ってメル様が部屋を出ていった事にも気づかなかった。

『ウェイン、きこえるか』

 身動きできないほど抱きしめられて、俺が落ち着くまで、ルダン様は話しかけ続けた。

『きみのことばが、わかりたくて、バドおうこくのことばを、ならっているんだ。どうだろうか。ちゃんときみに、つたわっているだろうか。グレイはじょうたつしている、とはいうが、あまりじしんは、ないんだ。そもそも、かいわもとくいでは、ないしな』
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