雪も積もれば冬となる~悪役公爵家に愛されちゃった!?~

コータ

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公爵家編

33.ちゅう?

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 恐怖に震える俺の顎を掴んで上を向かせ、強制的にルダン様の目が合う。そこには怒りも軽蔑の色もなかった。
 反対の手で俺の頭をガッシリと掴み、固定する。顎を掴んでいた手は、口を開かせた。

 俺は意味が分からなくて、ただルダン様の服を握りしめるだけ。
 そして、ルダン様は思いがけないことをした。

「んっ」

 ゆっくりと顔が近づき、唇が合わさる。開いた口から舌が差し込まれ、そこからゆっくりと暖かい液体が流れてくる。俺は、それをコクリコクリと飲み込む。
 ルダン様の舌が、俺の舌の上に重なっているので、味は分からない。でも、喉を通過する液体の暖かさが、身体を駆け巡り、ギュッと目を瞑りうっとりする。

「んっ、んっ、はぁ」

 俺が苦しくないように、時々、口を少しだけ離して、呼吸する時間を作ってくれる。
 俺が口を閉じないようになると、顎を掴んでいた手は、俺の背中に回り、ギュッと抱きしめてくれる。

「んっ」

 ルダン様の熱が全身で感じられて、恐怖で震えていた身体が多幸感で痺れる。それは思考さえも奪う。掴んでいた服を手放し、おかしくなった自分の身体を抱きしめた。

「んぁ」

 流れてくる液体が無くなると、ルダン様の舌は、俺の舌と絡まる。
 甘くて、苦み。それはあの薬の味だった。ルダン様の舌に残っていたのだろう。けれど、今の俺には刺激にしかならない。
 ルダン様の舌が動く度に、身体がビクッと動いてしまう。くちゅりと湿っぽくて粘着質な音が耳の中に響く。さっきより熱い液体が落ちてくる。

 ギジリと軋む音が鳴り、いつの間にか、俺はベッドの上に仰向けになっていた。
 そんな事よりも、もっともっとと、熱を自分から求めるようにルダン様の口まで追い求める。
 口の中に舌を入れると、ルダン様に吸われて噛まれた。背中に走る強烈な刺激に身体が跳ねる。
 思わず目を開けてしまうと、バチリと火花が散るように目が合った。ルダン様の瞳はギラギラとしていて怖いのに、俺しか視界にいないことに幸せを感じてしまう。

 しかし一度、瞬きするとさっきまでの瞳が嘘だったかのように、和らいでいた。

「ぁ……」

 ルダン様の口が離されて、混ざりあった唾液が伸びて切れる。俺は名残惜しいそうに声を出してしまった。身体には、さっきの刺激が後を引くように残っている。

『いいこ、だ』

 ルダン様から聞こえた言葉に耳を疑う。

『のんで、くれて、ありがとう。きみは、いいこ、だ』

 拙い言葉だけど、確かにルダン様はバド王国の言葉を喋っていた。何度も『きみはいいこだ』と褒めてくれる。

「ウェインは泣き虫だな」

 驚いて固まっていると、ルダン様は笑って、顔中に何度もキスをしてくれる。
 でも、もうこれ以上の幸せは頭が受け付けなくて意識を飛ばした。
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