雪も積もれば冬となる~悪役公爵家に愛されちゃった!?~

コータ

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公爵家編

31.冬の花

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 雪は降り止んだが、部屋には数十センチの雪が積もったまま。魔力暴走が治まれば、この雪も消えるらしいけど、未だその兆候は無い。

 メル様は雪が好きらしく、隙さえあれば雪をいじっている。雪玉を作ったり、山を作っていたりと楽しそうだ。

「ウェイン、見て!花が咲いているわ!」
「ハナ?」

 メル様が、見せてきたのは、雪の雫だ。ここはバド王国じゃないのになんで?というか、どこから?
 よくよく見ると、他にも無数の花が雪の下に埋まっている。
 これも魔力暴走のせい?

 ぽかんとしていると、メル様は花瓶の中に掘り出した花達を生けていく。ふわりと花の香りが漂ってきた。

 咲いた花は、雪の雫、春の妖精、老人頭、睡混花。あの塔の周りで咲いていた花ばかりだ。これも俺の魔力暴走が治まれば消えるのだろうか?

「メルサマ」

 俺はジェスチャーで、メル様に雪の雫を持ってきてもらう。俺の手に渡った瞬間にポタッと水が一滴流れ、手についた水滴をペロリと舐めた。味は、あの塔にいた時と変わっておらず、無味だ。

「何それ、美味しいの?」
「オイシ」

 メル様は花瓶から雪の雫を引き抜いて、パクリと一口で食べてしまった。俺はその様子を見て、ギョッとして目を見開く。花びらごと食べるなんて思いもしなかった。

「おいし、くはないわね。それに……」

 数回、咀嚼してから顔を顰める。ハンカチを口元に当てて、雪の雫を吐き出した。
 グレイさんはメル様にコップを渡して、桶を用意した。メル様は口の中を濯いで、桶の中に吐き出す。
 俺も花を食べたことをあるけど、不味かったけど、口を濯ぐほど不味かったかな?あの時は食べるより、水分のほうが重要だったから食べなかったけど、そこまで不味かった記憶はない。
 まぁ雪の雫は、普通、錬金術に使うものだしなぁ。

「グレイ、これをアビゲイルに渡してきて頂戴」

 メル様は、グレイさんに花瓶を渡した。グレイさんは花瓶を持ったまま部屋を出ていく。
 彼女は自分のドレスの裾でゴシゴシと俺の手を拭いた。

「ウェイン、食べるならこちらを食べなさい」

 押し付けられて食べたのは、フラガじゃなく桃のようなフルーツ、ミトセ。ミトセは一口大に切られていて食べやすく、綿菓子のように口の中でしゅわりと溶け、甘くてジューシー。
 雪の雫とは比べられないくらいに美味しい。俺はもっとと、メル様に要求する。

「ウェイン、美味し?」
「オイシ!」
「そうね、こっちのほうが美味しいわよね」

 自分と俺で交互に食べて、皿に入ったミトセを完食する。
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