雪も積もれば冬となる～悪役公爵家に愛されちゃった！？～

公爵家編

22.露店の子達

　何でか、ルダン様の悪戯心を刺激してしまったのか、何回もフードを外す仕草をする。しかし、本気ではない事は顔を見れば分かった。俺に怒られると嬉しそうにクスクスと笑うから。やっぱりルダン様は、意地悪好きのワンちゃんなのかも。そう思うと、ルダン様の頭に犬の耳が生えているかのように見えてきた。

　メル様とおっさんが喋り終わると、ルダン様に抱えられたまま店を出た。
　店の軒先で店員さんに、俺が最初に見ていたガラスのボールを渡される。

　ボールは、模様の部分が引っかかると思いきや、ツルツルしていて模様は内側で描かれていた事が分かる。しっかりとした厚みもあって、落としても壊れそうにないくらい丈夫さがある。太陽に透かしてみると、中にキラキラが閉じ込められているかのようだった。

「気に入ったか？」
「これ、好き？」
「スキ！」

　メル様と、ルダン様の両方に問われたがメル様の方にだけ答える。でも、多分、似たような意味だと思う。スキは良いという意味だ。

「そうか、それは良かった」

　ルダン様が満足気に笑い、その笑顔にドキッとした俺はギュッとボールを抱きしめる。

「あ、お父様、フラガが売っていますわ。ついでに買っていきましょう？」
「あぁ、そうだな」
「フラガ？」
「あぁ。今、メルが買ってくるから少し待っていなさい」

　俺がフラガの言葉に反応すると、ルダン様は頭を撫でてくれる。

　メル様は露店に近づき話しかける。露店には、小さな籠で小分けされているフラガか並んでいた。
　露店の店員さんは、メル様より小さな子供達。5人くらいで小さな敷物の上でぎゅうぎゅうになって座っている。ボロボロの服を着て、髪もボサボサだった。

「貴方達、フラガを下さいな」
「あ、え、あの」

　メル様に話しかけられて、戸惑っているのが見て取れる。
　そうだよね。メル様は綺麗で可愛いから急に話しかけられたら、戸惑うよね。俺は心のなかで彼女達に同意する。

　全部の籠を買うらしく、一籠だけメル様が受け取り、残りは他の使用人が受け取っていた。支払いはグレイさんがした。嬉しそうに１番ちいさな子が受け取り、皆で分け合っている。

「お嬢様方、いつからこの街にいらっしゃったのですか？」
「あの、一昨日です」
「何故、この街に？」
「こ、ここなら、お仕事が貰えると聞いて」
「そうですか。なら、近くの騎士団に向かいなさい。ここにいてはいけませんよ」

　グレイさんが子供達の中でも１番大きな女の子と会話している。話が終わると子供達は片付けを始め、その姿をメル様は買ったフラガを一つ口に入れて、満足そうにしていた。