雪も積もれば冬となる~悪役公爵家に愛されちゃった!?~

コータ

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公爵家編

19.コミュニケーション

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 ガタンゴトンと揺られて、俺は目を覚ました。

「お父様!ウェインが起きましたわ!」
「分かっている」
「おはよ、ウェイン」
「おはよう、ウェイン」
「オハヨ」

 メル様やルダン様に朝の挨拶を返す。
 キョロキョロと回りを見ると、いつもの部屋じゃなかった。小さな個室で、メル様とルダン様は向き合って座っている。個室の窓から風景が動いているから多分、乗り物に乗っているんだと思う。
 ふんすふんすと鼻息を荒く興奮していると、メル様がクスクスと笑った。

「ウェインは初めて乗ったのかしら?これは馬車よ。バ、シャ」
「バ、シャ?」

 あ、きっと乗り物の事を教えてくれてるんだな。

「今から、馬車で街に行くのよ」
「バシャ?」
「ま、ち」
「マ、チ?」

 ん?何だ、今度は別の単語が出てきたぞ。

「馬車で、街に、行く」
「バシャ、マチ、イク」

 こうして、メル様がゆっくり話してくれるお陰で、俺は考察することが出来る。
 イクっていうのが、向かうってことで、バシャが乗り物。……つまり、マチは目的地だな!?マチかぁ。どんなところ何だろう?もしかして、ファンタジー御用達のダンジョンか!?俺もついに魔物が見れるのかぁ。どんなやつかなぁ。やっぱり定番のスライムかな?
 俺は自分の成長を感じて、嬉しくなる。

「最近は、よく話せるようになったな」
「えぇ、私のおかげですわ!」 
「この調子なら、文字もそろそろ学ばせても良いかもしれん」
「確かにそうですわね。私には家庭教師もいますし、私の部屋で学ぶのがよろしいのでは?」
「いや、私の執務室で学ばせる」
「お仕事の邪魔では?」
「彼が邪魔になることはない」

 2人共、にこやかなのに火花が散っている気がするのは、なんでなんだろう。でも、心配しなくても大丈夫。これは、ルダン様とメル様の親子のコミュニケーションだから。
 初めて見た時は、すっごく戸惑ったなぁ。その時は、グレイさんが間に入って、げんこつされて怒られていた。その日のうちに、グレイさんに特別にバド王国の言葉で、それがディゾル家特有のコミュニケーションだということを説明してくれた。

 コンコンとノックされ、バチバチしてコミュニケーションをとっていた2人の気がそれ、冷静になったようだ。

「広場に到着しました」
「分かった」

 俺はメル様に一度渡され、ウェイン様が外に出ると、また彼の腕の中に戻る。メル様は、グレイさんの手を借りて優雅にバシャを降りた。

「私達はここでお待ち致しますので、ごゆっくりお楽しみください」

 バシャを操っていた人が頭下げて見送る。俺はその人に小さく手を振ると、その人も気づいて振り返してくれた。
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