雪も積もれば冬となる~悪役公爵家に愛されちゃった!?~

コータ

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公爵家編

18.オニク

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 テーブルに並べられたご飯の中に、お肉らしきものがあってちょっと興奮する。
 もしやこれはハンバーグでは?初めて、ここに来て初めてのお肉!今までスープや柔らかいものばかりでちょっと飽きてたんだ。

「ゴハン!オーシー!ゴハン!オーシー!」
「あぁ、初めてみる料理だったな」

 ルダン様がナイフとフォークを使って、ハンバーグもどきを細く切る。
 滴る肉汁がジュワッと鉄板の上で蒸発して、焼けた肉の香りが漂う。美味しそうな匂いに、俺の口の中は唾液でいっぱいになった。

「ウェイン、お肉だ。お、に、く」
「オ、ニ、ク」
「お肉」
「オニク!」

 フォークでハンバーグもどきを口に寄せてくれたのでパクリと食いつく。ほとんど噛まなくても柔らかい肉だったが、じわりと滴ってくる肉汁を堪能する。

「美味しいか?」
「オーシー!」

 もっと食べるかと聞かれて、俺は思いっきり頷く。

「気に入ったか。それは良かった」
「オニク、オーシー!」
「ゆっくり食べなさい」

 俺がハンバーグばかりにならないよう、時折紅茶を飲ませながら、食べさせてくれる。

「ォニク、オ、シ」
「眠いか」

 ハンバーグが半分まで減ると、お腹もだいぶ膨れ、満腹感が眠気を連れてきた。でも、まだ食べたくてルダン様に催促する。
 けれど、ルダン様はフォークでまだ切られてないハンバーグの塊を刺して自分の口に、丸々入れてしまった。それを流し込むように一気にワイングラスに入っている赤い液体を飲み干し、白いハンカチで乱暴に口を拭いた。

 信じられなくて、鉄板とルダン様を交互に見る。何も無くなってしまった鉄板の上。俺の拳ぐらいある塊を一口で食べてしまった驚きと、俺が食べたかったというショックで唖然とする。

「グレイ」
「かしこまりました」

 グレイは他にも料理はあったのにテーブルの上を綺麗にして、部屋から出ていく。
 俺がポカンとしていると、ルダン様に優しく口を拭われ、ベッドの上に寝かされる。

 あぁ、俺の愛しのハンバーグ。お前を全部食べてやりたかったよ。

 ルダン様は未練タラタラの俺を囲むように抱きしめた。俺の背から熱が伝わってきて、さっきまでの未練が掠れていくようだ。

「明日は、晴れると良いな」
「……」
「きっと良い日になる」
「……」
「何も怖くはないからな」
「……」

 ルダン様は俺に語りかける。意味の分からない俺には子守唄に聞こえた。
 窓から月が見えて、もう夜なんだと気づく。

『明日も晴れだと良いなぁ』
「……君は今、何と言ったんだ?」

 あの塔にいた時は、雪しか見えなかったから。
 ルダン様にぎゅうと抱きしめられて、俺は眠りについた。
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