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公爵家編
16.花のお風呂
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バタバタさせた足を止めて、身体を起こしたメル様。彼女の眉間には未だにシワがよっている。それでも、彼女の美しさは損なわれないのだから、美形って凄い。
「それでお父様は急に部屋に訪れてどうしたんですの?私とウェインの逢瀬を邪魔しに来ただけでは無いのでしょ?」
「あぁ、そうだ。最近、ウェインの体調が良さそうだからな。明日、一緒に街に出掛けようと思ってな」
「本当ですの?それは喜ばしいことですわ」
パッと目を輝かせるメル様。機嫌が直って良かった。
「あぁ。だから明日に備えてウェインを休ませる」
「分かりましたわ。それでは、私は失礼しますね」
「あぁ」
メル様が立ち上がって、綺麗なカーテシーをして部屋を去る。まだお昼なのに、自分のお部屋に帰っちゃうんだろうか。
「グレイ、入浴の準備をしてくれ」
「かしこまりました」
その後、お風呂場に連れて行かれ、グレイや使用人達に身体を洗われた。
いつもなら、これで終わりだが今日はそうじゃなかった。濡れたバスタオルを巻かれて、お風呂場の更に奥へと向かう。
それにしても、グレイさんが濡れている俺を抱っこしても全く濡れていないのは、ちょっと不思議だよな。魔法でそうなってるのかな?
お風呂場の奥側には、銭湯にありそうな大きなお風呂があった。今までお風呂場に何回も来ているが、全くそのお風呂の存在に気付かなかった。今近くにいる使用人達が全員入っても余裕そうな大きさがある。
お湯の中には、色とりどりの花で埋め尽くされて、お風呂の床が見えないほどだ。こんなに量が多いのに、匂いはしない。
大きなお風呂には先に入っている人、ルダン様がいた。
いつもオールバックにしている彼の髪がぺったりとしていて、前髪がおでこを隠している。前髪があるだけで若々しい。とても13歳の娘がいるとは思えない程に。
ルダン様に抱きかかえられながら、ゆっくりと湯船につかる。いつものお湯よりもちょっと温かい。
段差になっている場所に腰掛け、俺を膝の上に乗せた。左手でしっかりと背中を支えてくれているので、俺がお湯の中に落ちることは無いだろう。
俺はお湯で緩んだバスタオルの隙間から腕を伸ばして、浮かんでいる花をそっと掬う。
その花は、俺も良く知っている花だった。ゲームでS級回復ポーションに使われる衣草という花だ。小さな白い花が特徴的で数が限定された販売、しかも高額で終盤でしか手に入らない花。でも、その苦労に見合うだけのポーションが作れて、ウェイン戦では大活躍するんだ。
俺はギュッと目を瞑ってから、ゆっくりと目を開く。見間違いかと思ったら、見間違いじゃなかった。なんなら、至る所に衣草が浮かんでいて、このお湯にかかる値段も気になってきた。
「気になったか」
ルダン様は空いている右手で、花をかき集めて、俺の周りの花の密度を上げる。
その中にも見知っている花がいくつかあり、どれも高額の花で、俺は白目を向きそうになる。これ、俺なんかが入っても良いお風呂なんですか?
「それでお父様は急に部屋に訪れてどうしたんですの?私とウェインの逢瀬を邪魔しに来ただけでは無いのでしょ?」
「あぁ、そうだ。最近、ウェインの体調が良さそうだからな。明日、一緒に街に出掛けようと思ってな」
「本当ですの?それは喜ばしいことですわ」
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「あぁ。だから明日に備えてウェインを休ませる」
「分かりましたわ。それでは、私は失礼しますね」
「あぁ」
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それにしても、グレイさんが濡れている俺を抱っこしても全く濡れていないのは、ちょっと不思議だよな。魔法でそうなってるのかな?
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俺はお湯で緩んだバスタオルの隙間から腕を伸ばして、浮かんでいる花をそっと掬う。
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ルダン様は空いている右手で、花をかき集めて、俺の周りの花の密度を上げる。
その中にも見知っている花がいくつかあり、どれも高額の花で、俺は白目を向きそうになる。これ、俺なんかが入っても良いお風呂なんですか?
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