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公爵家編
13.消えない火
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美味しいものに、綺麗な景色、温かい人達。ここに望んでいたものがある。けれど、幸せな時間というものは、あっという間に過ぎた。
デザートも紅茶も無くなってしまい、俺には眠気がやってくる。目を開けようとしても瞼が重くなる。
「眠いのか?」
ルダンさんはさらに俺を眠らそうとしてくる。
ダメだ。まだ起きていたい。だって、空がキレイなのに。美味しそうなものだってたくさんテーブルの上にあるのに。外に出てから、きっと、1時間だって経っていない。なのにどうして、今、眠くなってしまうんだ。
ディゾル家に来て、初めて、俺は眠りたくないと思った。
「ひっく」
ロウソクのような小さな火が眠ったら消えてしまうような感覚に陥り、息が詰まるような気がして、視界が濁っていく。
消さないようにと、眠気に抗った。じゃないと、寒くなってしまう。
今の俺は、眠気とかが混じった情けない顔をしているだろう。だから両手で隠そうとしたが、その手は、ルダンさんに阻止されてしまった。両手を軽く抑え込んで、俺の目尻をチュッと吸う。思わぬ出来事に俺は身体が固まってしまった。
「!?」
「ハハッ涙もこんなに冷たいのだな」
にこやかに笑うルダンさん。
「あっ!お父様ズルいですわ~!」
それに声を上げるメルさん。
「当主の特権だ」
「ズルい~!」
メルさんは何か怒っているようだが、気にする余裕がない。だって、ルダンさんがチュッって、え?どういうこと?
ルダンさんがまた顔を近づけてきたので、俺は思わず、ペチンと、顔を叩いてしまった。
一瞬、静まり返り、俺が自分の行動を理解した。
やっちゃった!どうしよう!
さっきまでの悲しい気持ちが吹っ飛び、混乱する。さらにそれを加速させたのが、ルダンさんとメルさんの笑い声だった。
「ふっハハッ」
「フフッお父様ったら、嫌がられてますわぁ。いい気味だわ」
怒っていないことに安心すれば良いのか、それとも笑われたことにショックを受ければ良いのか、怒られるかもという心配をすれば良いのか分からない。
顔に叩いた手をぎゅっと繋がれて、ルダンさんの笑った顔がよく見えるようになった。
「そうだ。嫌なことは拒絶しても構わないんだ」
「そうよ。お父様には、パンチしたって良いのよ」
「メル」
「どうせ、痛くなかったでしょ?」
2人が会話して、更に困惑する。それに気づいたメルさんが俺に話かけてくれた。
「ウェイン、い、や、よ。い、や」
これはまた真似すれば良いのかだろうか?
「い、や」
「イ、ヤ」
「いや」
「ィヤ」
真似できると、ルダンさんは頭を撫でてくれる。その後にまたルダンさんの顔がより近くなった。また吸われるのかと思ったが、今度は頬をカプリと噛まれた。
「ふむ、ウェインは氷菓子のようだ」
「あっ!また、お父様はそうやってズルい事をするんだわ!ウェイン!嫌よ!い、や!」
メルさんはぷっくりと頬を膨らませて、真似するように促す。
「ィヤ?」
うまく発音出来るか分からず、首を傾げながら、真似すると、ルダンさんがぎゅっと抱きしめてきた。
ルダンさんの体はポカポカと暖かくて、ロウソクなんてメじゃない火が側にあるんだと安心させてくれる。
「あー、愛らしい」
「あー、かわい」
また声が被さってよく聞こえない。でも、2人は似たもの親子だってことはよく分かる。
さっきまで嫌だった眠気が、2人の暖かな雰囲気のお陰で受け入れられた。
デザートも紅茶も無くなってしまい、俺には眠気がやってくる。目を開けようとしても瞼が重くなる。
「眠いのか?」
ルダンさんはさらに俺を眠らそうとしてくる。
ダメだ。まだ起きていたい。だって、空がキレイなのに。美味しそうなものだってたくさんテーブルの上にあるのに。外に出てから、きっと、1時間だって経っていない。なのにどうして、今、眠くなってしまうんだ。
ディゾル家に来て、初めて、俺は眠りたくないと思った。
「ひっく」
ロウソクのような小さな火が眠ったら消えてしまうような感覚に陥り、息が詰まるような気がして、視界が濁っていく。
消さないようにと、眠気に抗った。じゃないと、寒くなってしまう。
今の俺は、眠気とかが混じった情けない顔をしているだろう。だから両手で隠そうとしたが、その手は、ルダンさんに阻止されてしまった。両手を軽く抑え込んで、俺の目尻をチュッと吸う。思わぬ出来事に俺は身体が固まってしまった。
「!?」
「ハハッ涙もこんなに冷たいのだな」
にこやかに笑うルダンさん。
「あっ!お父様ズルいですわ~!」
それに声を上げるメルさん。
「当主の特権だ」
「ズルい~!」
メルさんは何か怒っているようだが、気にする余裕がない。だって、ルダンさんがチュッって、え?どういうこと?
ルダンさんがまた顔を近づけてきたので、俺は思わず、ペチンと、顔を叩いてしまった。
一瞬、静まり返り、俺が自分の行動を理解した。
やっちゃった!どうしよう!
さっきまでの悲しい気持ちが吹っ飛び、混乱する。さらにそれを加速させたのが、ルダンさんとメルさんの笑い声だった。
「ふっハハッ」
「フフッお父様ったら、嫌がられてますわぁ。いい気味だわ」
怒っていないことに安心すれば良いのか、それとも笑われたことにショックを受ければ良いのか、怒られるかもという心配をすれば良いのか分からない。
顔に叩いた手をぎゅっと繋がれて、ルダンさんの笑った顔がよく見えるようになった。
「そうだ。嫌なことは拒絶しても構わないんだ」
「そうよ。お父様には、パンチしたって良いのよ」
「メル」
「どうせ、痛くなかったでしょ?」
2人が会話して、更に困惑する。それに気づいたメルさんが俺に話かけてくれた。
「ウェイン、い、や、よ。い、や」
これはまた真似すれば良いのかだろうか?
「い、や」
「イ、ヤ」
「いや」
「ィヤ」
真似できると、ルダンさんは頭を撫でてくれる。その後にまたルダンさんの顔がより近くなった。また吸われるのかと思ったが、今度は頬をカプリと噛まれた。
「ふむ、ウェインは氷菓子のようだ」
「あっ!また、お父様はそうやってズルい事をするんだわ!ウェイン!嫌よ!い、や!」
メルさんはぷっくりと頬を膨らませて、真似するように促す。
「ィヤ?」
うまく発音出来るか分からず、首を傾げながら、真似すると、ルダンさんがぎゅっと抱きしめてきた。
ルダンさんの体はポカポカと暖かくて、ロウソクなんてメじゃない火が側にあるんだと安心させてくれる。
「あー、愛らしい」
「あー、かわい」
また声が被さってよく聞こえない。でも、2人は似たもの親子だってことはよく分かる。
さっきまで嫌だった眠気が、2人の暖かな雰囲気のお陰で受け入れられた。
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