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公爵家編
10.メル視点
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お家にウェインと言う子がやってきた。
ウェインはとっても可愛くて、綺麗で、何よりも冷たい!私の一番のお気に入りの子!
彼がこの家に来た時、の鉄の箱の中に閉じ込められていた。その日のことは一生忘れないわ。
その箱には魔法が施されており、部屋の冷却装置としてオークションに売り出され、それを買い取ったのが、私のお父様であるルダンだった。
私が箱の中身を知りたくて、鉄の箱をこじ開ける。
箱を開けた瞬間、部屋中を駆け巡る冷たくて、白くて綺麗な結晶。一瞬にして屋敷中の明かりを奪って、床に白く染める。それが雪だと言うことを、後になって知った。
回りの使用人たちは、ガタガタ青くなって震えている。
私は初めての冷たさに興奮しきりで、箱の中を覗いた。箱の中には、酷く痩せた男の子が膝を抱えて入っていた。ボロボロのお洋服を着て、せっかくの黒髪も傷んでおり、瞳は瞼が閉じていて見えなかった。似合わない黒ずんだ首輪が重たそうだった。
私は彼を起こしたくて、指先で突いたが反応は返ってこない。しかし、私はそんなことよりもその肌の冷たさの方が興味を持った。こんなにも冷たいものを触った事が無かったから。
騒ぎを聞きつけた体のお父様も、流石に箱の中にまさか人が入っているとは思わなかったらしく、目を丸くして驚いていた。
私が興味本位で箱を開けると予想して、近くに待機していたお父様。多分、何かしらの契約を結んでいて、自分から動けなかった為に、私に箱を開けさせたのでしょうね。全く、お父様はズルいんだから。
「お父様、私、この子を飼いたいわ。良いでしょ?」
私がおねだりすると、お父様は少し考えて首を横に振った。
「ちゃんと面倒だって見ますわ!」
「駄目だ」
「躾だってちゃんとしますわ!」
「駄目だ」
「大切にしますわ!」
「駄目だ」
何度食い下がっても、お父様は首を縦にすることは無かった。
箱に近寄ったお父様は彼の首輪を触って魔力を流して壊すと、彼を外に取り出し、うっとりとして
「この子は私のものにする」
そう宣言した。
私はハッとした。私とお父様は親子であるが故に性質も似ている。この冷たさを持つ彼を気に入らないはずがない。
「ズルいですわ~!」
私が地団駄を踏むと、お父様はニヤリと笑う。
「当主の特権だ」
「ズルい~!」
横取りされたような気分になり、今でも思い出すと若干怒りがこみ上げてくるが、これで良かったのかも知れない。
私は王家に嫁ぐ身であり、彼を手放す可能性があるなら、きっと相応しくない。その点、お父様なら安心だわ。手放す事も逃がす事もしないだろうから。
そうなれば嫁いでも、私が家に帰れば、確実に彼と会えるようになると、そう納得するようにした。
でも、それはそれとして、お父様がズルいのは変わりないので、私は私なりにこの子を可愛がるわ!
ウェインはとっても可愛くて、綺麗で、何よりも冷たい!私の一番のお気に入りの子!
彼がこの家に来た時、の鉄の箱の中に閉じ込められていた。その日のことは一生忘れないわ。
その箱には魔法が施されており、部屋の冷却装置としてオークションに売り出され、それを買い取ったのが、私のお父様であるルダンだった。
私が箱の中身を知りたくて、鉄の箱をこじ開ける。
箱を開けた瞬間、部屋中を駆け巡る冷たくて、白くて綺麗な結晶。一瞬にして屋敷中の明かりを奪って、床に白く染める。それが雪だと言うことを、後になって知った。
回りの使用人たちは、ガタガタ青くなって震えている。
私は初めての冷たさに興奮しきりで、箱の中を覗いた。箱の中には、酷く痩せた男の子が膝を抱えて入っていた。ボロボロのお洋服を着て、せっかくの黒髪も傷んでおり、瞳は瞼が閉じていて見えなかった。似合わない黒ずんだ首輪が重たそうだった。
私は彼を起こしたくて、指先で突いたが反応は返ってこない。しかし、私はそんなことよりもその肌の冷たさの方が興味を持った。こんなにも冷たいものを触った事が無かったから。
騒ぎを聞きつけた体のお父様も、流石に箱の中にまさか人が入っているとは思わなかったらしく、目を丸くして驚いていた。
私が興味本位で箱を開けると予想して、近くに待機していたお父様。多分、何かしらの契約を結んでいて、自分から動けなかった為に、私に箱を開けさせたのでしょうね。全く、お父様はズルいんだから。
「お父様、私、この子を飼いたいわ。良いでしょ?」
私がおねだりすると、お父様は少し考えて首を横に振った。
「ちゃんと面倒だって見ますわ!」
「駄目だ」
「躾だってちゃんとしますわ!」
「駄目だ」
「大切にしますわ!」
「駄目だ」
何度食い下がっても、お父様は首を縦にすることは無かった。
箱に近寄ったお父様は彼の首輪を触って魔力を流して壊すと、彼を外に取り出し、うっとりとして
「この子は私のものにする」
そう宣言した。
私はハッとした。私とお父様は親子であるが故に性質も似ている。この冷たさを持つ彼を気に入らないはずがない。
「ズルいですわ~!」
私が地団駄を踏むと、お父様はニヤリと笑う。
「当主の特権だ」
「ズルい~!」
横取りされたような気分になり、今でも思い出すと若干怒りがこみ上げてくるが、これで良かったのかも知れない。
私は王家に嫁ぐ身であり、彼を手放す可能性があるなら、きっと相応しくない。その点、お父様なら安心だわ。手放す事も逃がす事もしないだろうから。
そうなれば嫁いでも、私が家に帰れば、確実に彼と会えるようになると、そう納得するようにした。
でも、それはそれとして、お父様がズルいのは変わりないので、私は私なりにこの子を可愛がるわ!
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