雪も積もれば冬となる~悪役公爵家に愛されちゃった!?~

コータ

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公爵家編

5.診察?

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 扉から男の人2人と白衣を来た人、多分、お医者さんが入ってきた。
 お医者さんは俺の身体を起こし、初老の男性がベッドの縁に座らせるように俺の身体を移動させる。身体に力が入らなくて、背骨が無くなったみたいにフラフラすると、男性が背中と肩を支えて、倒れないようにしてくれた。

 お医者さんは膝を床につけて、俺の着ているシャツのボタンを外し、身体を触っていく。
 お医者さんの手は熱を持っているかのように熱い。その手が心臓の当たりで止まり、目を瞑って、異常がないか確かめているようだ。これがこの世界の診察なのかな?

 お医者さんは茶色の髪を後ろに束ねている。支えてくれている男性の髪には、灰色の髪に白髪混ざっていた。

『君、名前は?』

 お医者さんは多分、何かを尋ねた気がした。けど、理解出来ない。声を聞いて、お医者さんが女性だった事に気づいた。こういう人を麗人と言うのかな?

 なんてどうでも良いことを考えていると、お医者さんは、人差し指で自分を指して、『アビー』と同じ言葉を繰り返すから、それが名前だと分かる。

「アビー?」
『そう、君は?』

 また首を傾げると、アビーさんは、自分を指して『アビー』と告げて、俺を指差した。それを幾度か繰り返すと、俺も自分の名前を聞きたいのだと理解する。

「ウェイン」
『ウェイン、良い名だね』

 俺の声は、掠れていた。久しぶりに誰かと喋った気がする。アビーさんにウェインと、呼ばれたけどその続きの言葉が分からなくて首を傾げる。

「……君はバド王国出身ですか?」

 背中を支えてくれていた男性が、俺の分かる言葉で話しかけてくれたので、俺はコクリと頷く。

「そうですか。私はグレイとお呼びください」

 またコクリと頷く。グレイさんの声は優しくて、棘がない。

「目の前の方は、ルダン様。その隣の女性はルダン樣のお子であるメル様です」

 近くにいたはずのメル、さん、が俺の眼の前のルダンさんの隣にいる。
 手をひらひらとさせるメルさん、ルダンさんはニコリと笑ってくれた。
 確かにルダンさんとメルさんは親子だと分かるほど似ていた。メルさんはお父さん似なのだろう。ルダンさんも赤い瞳と赤い髪を持っていた。ただメルさんより暗い赤な気がした。

『おはよ?寝坊助さん』

 メルさんが俺に喋りかけてくれたのに、やっぱり意味は分からない。

「お腹は空いてませんか?」

 グレイに尋ねられて俺は頭を縦に振る。

『アビゲイル様、ウェイン様のお食事は何を用意すればよろしいですか?』
『固形は食べられず、嘔吐してしまうと思います。なので、流動食が良いでしょう』
『了解しました』

 今度はアビーさんとグレイさんが会話する。よく分からない言葉が、右の耳から左の耳に抜けていく。

 アビーさんが俺のシャツのボタンを止め、グレイさんがベッドに横たわらせてくれる。それから、優しくシーツを掛けてくれた。

「今からお食事をご用意させていただきますね」

 グレイさんはそう言うと、部屋を出ていく。俺はふわりと身体を包まれ、ウトウトと眠くなる。
 その横で3人の会話している声を子守唄にしながら、俺は眠りについた。
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