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公爵家編

2.生きていく為に

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 この塔に来て、もうどのくらい経ったか分からない。最初はドラマの脱獄犯のように線を引いて、数えていたけど、雪が止まないせいで朝か夜かも分からなくなって、数えるのを止めた。

 俺がここに来たのは、止まぬ雪の生贄としてだ。

 ある年の冬、この国にそれは酷い寒波が襲った。降る雪に誰もが、雪の魔法を持つ俺のせいだと批難した。怒れる国民達を沈めるため、俺は最初牢獄にいられて、魔力を封じ込める腕輪をつけられ、厳しく躾けられた。
 それでも雪は止まず、今度は誰も住んでいない極寒の塔へ閉じ込めた。生贄として氷の魔神に捧げれば、ワンチャン止まるじゃねえ?的な感じで。

 まぁ、閉じ込めたとはいっても、一応外には出るには出れる。外には出れるが、長時間はいられないから、実質的にって感じ。

 白い石で出来た塔は5階くらいの高さで、防寒対策なんてされず、窓は鉄格子がついているだけで遮るガラスやカーテンすらもありはしない。
 唯一あるのは、ベッドとバケツのみ。何も無いよりはマシかも知れないけどさ。
 それを見たときはもう絶望した。これで生き残れるのかって、寒さを含めて身体が震えた。
 ゲームの中のウェインは、過去を語られなかったけど、同じことをされていたのかもしれない。それを思うと、自分の国を滅ぼしたっていうことは、無罪とまではいかないけど、情状酌量の余地ありだね。

 塔に来て俺が最初にしたことは、寝る場所を確保することだった。
 だってさ、かけるものなんてシーツ一枚、窓からは延々と吹雪が入ってくる。そんな状態じゃ絶対に寝たら死んでしまう。
 雪の魔法が使えるからと言って寒さに強いわけでもなく、逆に言えば俺はかなりの寒がりだった。この国の夏が来ても寒くて、厚着をするほどに。冬なんて来た日には、いつも体調不良で寝込むという貧弱さ。
 それなのに、この塔に来てからは防寒着なんて取り上げられ、薄着にさせられてしまった。その時、俺はこいつら鬼かと疑ったもんだ。

 というわけで俺は、凍死しないような寝床の確保に動いたわけだ。でも、これって前世の俺だから冷静に判断出来ることであって、ゲームのウェインはきっと判断状況もまともではなく、きっと俺の百倍くらいは辛かったに違いない。

 まずベッドからマットレスを取っぱらい、枠組みだけになったベッドの下にマットレスを敷き直す。
 枠組みのベッドの上からシーツをかけて、石でシーツを固定したら簡易テントの完成!これで直接風が体に当たら無くなった。
 早速横になってみると、マットレスがカビ臭いし、薄っぺらだけど、まだマシだった。
 その日はたったそれだけの作業でくったくたになって、眠ってしまった。

 次にしたことは、窓を塞ぐことだった。これはかなり時間がかかった。鉄格子の穴は、塔全体の風通しを良くしてる。
 最初は外に出て、雪に埋まっている木の枝を探しては、鉄格子に差し込んで見たが吹っ飛ばされてしまった。
 今度は、木の皮を剥がして、鉄格子の合間を縫うように塞いでいく。時々強度が足りなくて破けたり、逆に分厚いと上手く出来なかったりしたが、塞ぐことに成功した。
 時間をかけて、窓を1つ1つ塞ぐ。自分の住処にしている2階だけではなく他の部屋まで。流石に一番上の階までは疲れて無理だった。
 これで寒さが、めっちゃ寒いからかなり寒いになった。違いが分かりにくいかもしれないが、死ぬ!から死ぬかも?ぐらいの差だ。

 一番辛かったのは、窓は俺の背よりも高い場所にあり、登らなきゃ行けないことだった。時々落ちちゃって、背中を打ち付けてしまうから。痛いし、その日は動けなくなるしで、本当に辛い。

 そして、寒さを凌げたからと言って、まだ死の危険性はある。それは餓死だ。
 食べ物が無ければ死んでしまう。それはもう生き物だからしょうがない。でも、これは意外にも早くから解決した。窓を塞ぐよりも早く。

 窓を塞ぐ為に木の皮を剥ぐと、中から樹液が垂れてくるものがあった。
 俺はその樹液を見て、しゃぶりついた。久々の甘味は、甘くて美味しくて、泣きたいくらいだった。

 他にも、前世でゲームをやっていたお陰で、ある程度の知識があり、意外にも食料は困らなかった。
 例えば、冬の雫というの花からは水分が流れたり、老人頭ろうじんとうという花は、花粉が甘くて美味しい。

 ゲームの知識は、食料以外にも役に立った。春の妖精っていう花を潰して、冬火とうかっていう木の枝に触れさせると小さな火が出たりとか、香水木こうすいぼくの花では油を取れたりとか。まぁ、ゲームでは調合や錬金術に使われるもので、原料では使えなかったものばかりなんだけど。

 そして一番のゲームと違いは、アイテムはそうそう簡単に見つからないって事だ。
 外に出ても、花は咲いてない時の方が多いし、木も一度使っても何処にあるのか分からなくなってしまう。難易度は、インフェルノ状態。それでも、生きていれば見つかるんだけどね。
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