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公爵家編

1.俺はラスボス!?

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 ガタガタと体が震え、手に擦り合わせて、はぁと息を吹きかける。そうすることでほんの少しだけ、暖かくなった気がした。
 外はしんしんと雪が降っていた。俺は防寒対策も何もない石の塔の中で暮らしている。

 俺の名前はウェイン。前世は、御宿みやど 雪信ゆきのぶ。いわゆる、転生者って奴だ。


 雪信は冴えない男子高校生だった。友達も幼馴染しかいなかった。死因は多分、事故死。多分というのは正確に覚えていないからだ。
 俺が死んだ日は、久しぶりに会う幼馴染と遊ぶ予定だった。
 彼とは高校は別だったから、会うことも少なくなってたんだ。その数少ない日に俺は死んじまった。
 待ち合わせに向かう途中、俺は線路に落ちた。誰かにぶつかったんだと思う。覚えてないけど、自殺ではないことは確かだ。
 それで轢かれて死んだ。誰も助けようとはしなかった。まぁ、それはそうだよな。だって、電車は目の前だったんだから。逆に言えば、誰も俺を助けなくて良かったと思う。だって巻き込まれて死なれてしまうよりは、まだマシだ。

 それにしても、電車の賠償金ってヤバいって聞いたことがあるんだよね。もし、家族が支払うことになったのなら、最後まで迷惑かけて本当にゴメンって謝りたい。

 で、とりあえず死んでフワフワしていたら、多分この世界の神様と会った。顔は見えなかったけど、彼の言葉は覚えている。

『君は僕と同じだけど、同じじゃないんだね』

 クスクスと小さく笑って、また言葉を続けた。俺は何の疑問も持たずに、声を挟むこともなく聞いていた。その時は、彼が神様なんて思ってもいないし、そもそも考える思考さえ無かった気がする。

『次は君にしてみよう』

 そうして、俺はウェインとして産まれたってわけ。残念ながら、前世を覚えているからと言って、小説やアニメのように無双出来るわけでもなかったが。

 ウェインは、というか俺は雪の魔法を持っていて、その事が判明すると、俺は差別される様になった。この国はいつも寒波のせいで頭を悩ませていたらしいから、しょうが無いところもある。
 忌避されていたが、それでも王族として産まれたからには、と教育を叩き込まれた。そこのところは王族で良かったのかもと思った。だって、普通に産まれてたら速攻殺されてたかも知れないし、もしかしたら、言葉も何も覚えられなかったかも知れない。

 そして、学んでいくに連れて、この世界があるゲームの設定と同じことに気づいた。

 そのゲームは、”氷華ひょうか御元みもとで~恋の花が咲く~”という恋愛ゲームだ。幼馴染にオススメされてプレイしたことがあり、その中でウェインは、最後のラスボスとして出てくる冬の魔神だった。

 冬の魔神であるウェインは、自分の国を滅ぼし、果てには世界さえも滅ぼそうとしていた。それを阻止するために主人公たちがやってきて、倒される役のラスボス。
 恋愛ゲームなので、ラスボスも超イケメンだ。雪のような白に、すっとした瞳。でも、ハイライトは無しの闇落ちイケメン。
 しかし現実の俺は、イケメンではない。ぼんやりとした顔のどこにでもいるような黒髪だった。だから、最初は本当にウェインかどうかも疑ったもんだ。

 まぁ俺のことは置いといて、ゲームの説明に戻ると、”氷華の御元で”では、学園パートの次にRPGパートがあり、学園では悪役令嬢が出てきたりと、当時の流行を取り入れており、かなり人気のゲームだと、幼馴染から聞いていた。
 悪役令嬢は、主人公をいじめて、RPGルート後、主人公が国に帰ってきた時に断罪され、処刑される。そのストーリーに、俺はイジメくらいで処刑すんなよと、不満があった。ついでに言うと、幼馴染の推しが悪役令嬢なので、幼馴染的にも誠に遺憾らしい。

 だからこの世界がゲームだと気づいた時、俺は幼馴染へのちょっとした恩返しと謝罪を込めて、冬の魔神にならずに悪役令嬢を助けようと、決心した。
 だってさ、俺を待ってたら、俺は事故で死んでたなんてトラウマの何もでもないだろ?ってことの謝罪で、あとは俺と友達になってくれた、遊んでくれた、っていう恩返しだ。

 まぁ悪役令嬢を救うためにまずは、この極寒の冬から抜け出さなきゃいけないんだけどね!
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